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第635話◇

 玲央の部屋に戻ると、皆はリビングではなくて、別の部屋に入った。 「ここ、防音だから、こっちでやってたんだよ」  そうなんだ。楽器とかはこっちの部屋でやるんだ。  なんだか、色んな楽器が並んでて、カッコいいなぁ、と思っていると。 「あ、そういや、お前ら今日、帰ンの?」  玲央がそう聞いたら、皆、そういえば、と顔を見合わせてる。 「どうする? 帰る?」 「ちょっとめんどくさいかも。玲央、服借りれる? ズボンはこのままでいいから」  勇紀がそう言うと、「別にいーけど」と玲央が言う。 「なあ、派手じゃないのある?」 「オレ、そんな派手なのばっか着てないだろ」  颯也の言葉に玲央が苦笑すると、ああ、と颯也が笑う。 「玲央が着ると派手になるだけか」 「何だそれ」  玲央が笑って答えて、それに勇紀も甲斐も笑ってるけど。  ……うん、なんか分かる。  玲央が着ると、派手というか、目立つんだよね。  ただの白いシャツでも、なんか目立つし。  ……カッコよすぎるもんね、うんうん。目立ちすぎる。うんうん。 「ん? どした?」  はっ。なんか普通にうんうん頷いていたみたいで、玲央に面白そうに笑われて、見つめられる。  「あ、いや。……目立つよね、玲央、て思って」 「なんだそれ」  クスクス笑う玲央に、頭をくしゃくしゃ撫でられる。 「じゃあ、皆泊まってくのか?」  そう聞いた玲央に、皆、そーだな、と頷いてる。  わぁ、お泊りだ。なんか、楽しいなぁ。 「そしたら少し遅くまでやってられるか」 「だね」  玲央の言葉に勇紀が答えて、皆も頷いてる。 「お前ら、教科書とかは?」  玲央が聞くと、少しの間考えてから、無くても明日一日くらい何とかなる、と皆が言って笑ってる。 「オレと優月は明日一旦家帰ってから学校行くつもりだけど。な?」  玲央がオレを見てそう言うので、うん、と頷く。  とりあえず、じゃあ皆泊まってくなら……。 「お布団とか出すなら出しとくよ、オレ」  そう言ったら、玲央は、ん?とオレを見つめて、それから、ふわ、と笑った。 「良いよ。こいつらあるとこ知ってるし」 「あ、そうなんだ。良く泊まるの?」 「んー、たまにな?」 「そっか。オレ、なんも、しとくこと、無い?」  そう言うと、皆はクスクス笑う。玲央も笑いながら。 「優月は、先に風呂入ってきていいよ。何かあったら頼むけど」 「あ、うん。分かった」  今やることないなら、とりあえずシャワー浴びてきちゃおう。  皆もあとから浴びるんだろうし。 「いってきまーす」  言うと、皆に、「いってらー」「いってらっしゃーい」と見送られて部屋を出た。ふふ。なんか楽しいな。お泊り会だ。  あ。ここに来た時って、前はバスローブだったけど……皆居るのに変だよね……と思った時。後ろでドアが開いた。 「優月、着替え渡す。おいで」 「あ、うん」  ……玲央が、おいでって言ってくれるの、優しくて、大好き。  …………とか言っても、来いよ、て言うのも、好きなんだけど。……ていうか、なんでも好きなんだけど。  とか、そんなことを思いながらついて行って、別の部屋のクローゼットへ。 「あいつらの服も一緒に出すか……」  ぽいぽいと、部屋着と下着を次々出して、置いてあった棚の上に積んでいく。 「部屋着、いっぱいあるんだね。すごいねー」  感心しながら言うと、玲央が振り返って笑う。 「ここ泊まるのってほぼあいつらだから、人数分ある」 「あ、そっか、なるほど……」  皆のところに持っていこうと服を抱えようとしたら、待って、と言われて、ん?と玲央の方を向いた瞬間。  腕を取られて、引き寄せられて。  唇が、触れてきた。 「――――……」  ……玲央だー……。玲央の、キス。  ……なんか今日離れてたから。……嬉しいな。 「……優月」  少しだけ唇を離してオレの名を呼んで。  目を開けたオレを見つめて、ふ、と笑って。 「――――……」  優しいキスがまた触れてきた。  胸が、とくとく、速くなる。  

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