634 / 856
第635話◇
玲央の部屋に戻ると、皆はリビングではなくて、別の部屋に入った。
「ここ、防音だから、こっちでやってたんだよ」
そうなんだ。楽器とかはこっちの部屋でやるんだ。
なんだか、色んな楽器が並んでて、カッコいいなぁ、と思っていると。
「あ、そういや、お前ら今日、帰ンの?」
玲央がそう聞いたら、皆、そういえば、と顔を見合わせてる。
「どうする? 帰る?」
「ちょっとめんどくさいかも。玲央、服借りれる? ズボンはこのままでいいから」
勇紀がそう言うと、「別にいーけど」と玲央が言う。
「なあ、派手じゃないのある?」
「オレ、そんな派手なのばっか着てないだろ」
颯也の言葉に玲央が苦笑すると、ああ、と颯也が笑う。
「玲央が着ると派手になるだけか」
「何だそれ」
玲央が笑って答えて、それに勇紀も甲斐も笑ってるけど。
……うん、なんか分かる。
玲央が着ると、派手というか、目立つんだよね。
ただの白いシャツでも、なんか目立つし。
……カッコよすぎるもんね、うんうん。目立ちすぎる。うんうん。
「ん? どした?」
はっ。なんか普通にうんうん頷いていたみたいで、玲央に面白そうに笑われて、見つめられる。
「あ、いや。……目立つよね、玲央、て思って」
「なんだそれ」
クスクス笑う玲央に、頭をくしゃくしゃ撫でられる。
「じゃあ、皆泊まってくのか?」
そう聞いた玲央に、皆、そーだな、と頷いてる。
わぁ、お泊りだ。なんか、楽しいなぁ。
「そしたら少し遅くまでやってられるか」
「だね」
玲央の言葉に勇紀が答えて、皆も頷いてる。
「お前ら、教科書とかは?」
玲央が聞くと、少しの間考えてから、無くても明日一日くらい何とかなる、と皆が言って笑ってる。
「オレと優月は明日一旦家帰ってから学校行くつもりだけど。な?」
玲央がオレを見てそう言うので、うん、と頷く。
とりあえず、じゃあ皆泊まってくなら……。
「お布団とか出すなら出しとくよ、オレ」
そう言ったら、玲央は、ん?とオレを見つめて、それから、ふわ、と笑った。
「良いよ。こいつらあるとこ知ってるし」
「あ、そうなんだ。良く泊まるの?」
「んー、たまにな?」
「そっか。オレ、なんも、しとくこと、無い?」
そう言うと、皆はクスクス笑う。玲央も笑いながら。
「優月は、先に風呂入ってきていいよ。何かあったら頼むけど」
「あ、うん。分かった」
今やることないなら、とりあえずシャワー浴びてきちゃおう。
皆もあとから浴びるんだろうし。
「いってきまーす」
言うと、皆に、「いってらー」「いってらっしゃーい」と見送られて部屋を出た。ふふ。なんか楽しいな。お泊り会だ。
あ。ここに来た時って、前はバスローブだったけど……皆居るのに変だよね……と思った時。後ろでドアが開いた。
「優月、着替え渡す。おいで」
「あ、うん」
……玲央が、おいでって言ってくれるの、優しくて、大好き。
…………とか言っても、来いよ、て言うのも、好きなんだけど。……ていうか、なんでも好きなんだけど。
とか、そんなことを思いながらついて行って、別の部屋のクローゼットへ。
「あいつらの服も一緒に出すか……」
ぽいぽいと、部屋着と下着を次々出して、置いてあった棚の上に積んでいく。
「部屋着、いっぱいあるんだね。すごいねー」
感心しながら言うと、玲央が振り返って笑う。
「ここ泊まるのってほぼあいつらだから、人数分ある」
「あ、そっか、なるほど……」
皆のところに持っていこうと服を抱えようとしたら、待って、と言われて、ん?と玲央の方を向いた瞬間。
腕を取られて、引き寄せられて。
唇が、触れてきた。
「――――……」
……玲央だー……。玲央の、キス。
……なんか今日離れてたから。……嬉しいな。
「……優月」
少しだけ唇を離してオレの名を呼んで。
目を開けたオレを見つめて、ふ、と笑って。
「――――……」
優しいキスがまた触れてきた。
胸が、とくとく、速くなる。
ともだちにシェアしよう!