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第637話◇

   皆に部屋着を届けた後、シャワーを浴びにバスルームへ。  ここでお風呂に入るの、ちょっと久しぶりだなあ、と思う。  玲央に会って、最初の頃は、ここに来たっけ。  ……学校でキスされて、誘われて、そのままいきなりマンションについてきて。今思い返しても、なんか不思議すぎる。よくオレ、ついてきたなあ。と、可笑しくなってしまう。  惹かれるからって、ふらふらついてきて、セフレでもいい、とか。  オレみたいな、何もかも初めての人が、ほんと何言ってたんだろ。  しかも玲央だって……もともとそういうので付き合ってた人達が居たのに、オレなんか誘って、いったい何だったんだろう、とか。  オレのことも、玲央のことも、最初の頃のことは、すごく、不思議。  ここで、初めて玲央とお風呂、入った時。  ほんと、ドキドキして死にそうだったっけ……。  …………あ、ドキドキは、今もか……。  なんだか色々思い出しながら洗い終えて、シャワーを止める。    付き合うとか、一緒に住もうとか。そんな話になってからのことは、まだ、納得がいく感じ。  大好きで大好きで一緒に居たいと思ってからのことは、オレ的には意味は、分かる。でも。玲央の方は、やっぱり不思議かなあ。オレでいいのかなあって、やっぱり少しは思うし。  不思議なことに、オレを好きって言ってくれてるのは、今の玲央を見てる限りは、本当なんだろうな、と思えてるけど。  オレの実家に行くとか、玲央のおじいちゃんのところに泊りに行くとか。周りの皆に話すとか。オレ達の間だけじゃなくて、周りにもどんどん回ってて、ほんとに不思議だけど。 「――――……」  オレが玲央が好き。ていうのは、ほんと。  玲央がオレを好きっていうのも、たぶん、ほんと。……多分って言ったら怒られるかな。  なんとなく、ふふ、と笑ってしまう。  髪を乾かしてから、玲央達が居る部屋のドアを少しだけ開いて中を覗くと。 「あ、お帰り、優月ー」  たまたまこっちを向いてた勇紀が、いち早くオレに気づいて、そう言ってくれた。他の皆もこっちを見て笑う。 「皆、コーヒー飲む? 入れるけど」  そう言うと、皆、一瞬止まって顔を見合わせてから、ありがと、よろしくーと口々に言った。 「優月、手伝う?」  玲央が言ってくれるので、「大丈夫だよ」と笑うと。  皆が呆れたように玲央を見た。 「何、手伝うって」 「優月に甘々すぎない?」 「今まで誰が淹れてもそんなこと言わなかったろ」  颯也と甲斐と勇紀のセリフに、玲央が嫌そうな顔をする。 「別に優月がコーヒー淹れるのが大変だって思って言ってるんじゃねえよ」  そう言う玲央に、勇紀が。 「じゃあ何で、手伝うとか、聞いてんの?」 「……あー、それは――――……」 「うん、それは??」  勇紀が先を促すと。少し考えた後、玲央は。 「いや、特別ねえけど……まあ、一緒に行きたかっただけ……て感じ?」  とか言ったので。 「もう良い、分かった。行ってきな。優月とコーヒー淹れてきて」  と勇紀に言われて。颯也と甲斐にも、呆れたように追い出され。  ドアが閉まって、二人になってから。 「……ま、いっか。いこ、優月」  そんな風に言いながら、玲央はオレを見て、クスッと笑った。  オレもまた嬉しくなって、ふふ、と笑って。うん、と頷いて、二人でキッチンに向かった。

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