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第639話◇
「優月が淹れたい?」
「あ、うん。オレ、淹れる……」
なんか、玲央のキスのせいで、ぼーとするけど。
コーヒードリッパーにフィルターをセットする。コーヒーにお湯を落としていく時間が、好きだなと思いつつ。
「ね、玲央?」
「ん?」
「……玲央は、さ?」
「ん」
少しずつお湯を落として、なじませながら。
玲央を見上げる。
「今までさ、すごく綺麗な人達と居たでしよ?」
「……んー……?」
「奏人とかさ。前見かけた人も綺麗だったし……」
玲央がじー、とオレを見てる。
「……なんとなくそれ、分かる気がするの。玲央、カッコよすぎるから、自分が綺麗じゃないとちょっと気後れしちゃうだろうなぁって……自信が無いと、玲央には近づけないんじゃないかなって、なんか思うから、玲央の周りに、綺麗な人が集まるのは分かるような……」
「……優月も気後れしたりする?」
そう聞かれると、えーと、と考えながら、お湯を淹れていく。
「なんかオレは……ふらふらついて来ちゃって、そのままって感じだから……ちょっと違うけど」
「まあ、オレが無理無理キスして、誘ったんだもんな」
はは、と笑って、玲央がオレの頬にまた触れる。
「いきなりキスして寝てみようとか迫って、日時決めたもんな……。別に優月が迫ってきた訳じゃないし、考えないか」
「……でもやっぱり、何で玲央がオレとなんだろうって、少しは考える時あるかも」
「ん?」
「オレで釣り合うのかなあ? って」
「……今も? 思ってる?」
すりすりと頬を撫でる手。
「うーん……玲央と居る時は、あんまり思わない」
「何で?」
「……玲央、優しいから」
「――――……」
「すっごく優しいから、オレのこと、好きかなって、思うから」
ちょっと恥ずかしくなりながらもそう言うと、玲央は、当たり、と笑う。
「すげー好き」
ちゅ、と頬に、キスされる。
ふふ、と笑んでしまいながら、またお湯を注ぐ。
「んー……でもね、離れてると……ちょっとだけ思う時がある。釣り合うのかなーって」
「……そうなの?」
「それくらい、玲央のことをカッコいいなあって思ってるんだよね、オレ……っていう話かな。ごめん、なんかよく分かんない結論だった」
自分で言いながら笑ってしまうと、玲央は、オレをじっと見つめて、クスクス笑う。
「じゃあ、覚えといて?」
「ん?」
「綺麗な奴とか、顔良い奴、確かに周りにいっぱい居たかも。バンドやってると、そういう奴らにも会うし、男も女も派手だし」
「うん」
「たくさん見てきたけど、そいつらとは付き合おうってならなくて、優月とは、会ってすぐで、付き合いたいってなったってことと……」
「――――……」
「それと……まあ、優月の顔、派手だとは思わねぇけど……」
すりすり、頬を撫でてた手が、そっと、唇や瞼に、触れる。
「ちゃんと、覚えといて」
「……うん?」
「誰より可愛いって、オレ、ずっと思ってるから」
「…………」
まっすぐ見つめられて言われると、もうなんか、息が止まりそうになる。
別にオレ、玲央にこう言ってほしいとか、そういうのは無かった。
なんとなく、思ってたことを、言ってしまっただけで。
「……なんか……」
「うん?」
「……ありがとうね……玲央」
「ん」
言ってほしいとかは無かったけど。
言われたらすごく嬉しい言葉を。……なんか、玲央は、いつもくれる気がする。
(2023/2/23)
◇ ◇ ◇ ◇
あとがき♡
ブログにかいたのですが…… https://fujossy.jp/notes/33213
ひとつの作品を完結にしました♡
もしよかったら、お読みいただけたら(^^)
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