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第642話◇

【side*玲央】  火曜日は、優月が絵を習いに行く日。先週はあそこでじいちゃんに会ったっけ。  今日はもう会えないまま、夜かな……蒼さんが送ってくれるから、心配はしなくて済むけど。そんなことを思いながら、昼を食べ終えて勇紀と歩いていたら、優月と会った。  奏人のこと好きみたい、なんて言って立ち去って行った優月に、勇紀がマジで楽しそう。 「もう絶対あれ、その内、とっても仲良しとか言っちゃうんだよ、きっと……」  クスクス笑いながらそんなことを言ってる。  ……本当にそんな気がするから、不思議だ。  奏人とオレは授業でも会うし、近くに座る時もある。でももう今はそんな雰囲気は一切振ってこない。視線も前とは全然違う。誘うとかする気が一切ないのがもう分かるから、普通に話す時もある。  ライブの後は、キスして諦めないと意思表示していたけれど、多分その後、優月と話した辺りからだろうか。駅まで一緒に帰ったとか、あそこらへんが、変化のきっかけかも。  優月が気にしてる風ではないから。というか、まあ、優月は他のセフレのこととかも気にしないけど。  とにかく優月が気にしてないから、オレが奏人と普通になってる、とかそういうのも特にオレからは話してない。敢えて話題にする必要もない気がして。  それでも。優月は、奏人と自然と話して、自然と、好きかも、なんて、オレに言ってきたりする。 「――――……」  授業を受けながら、さっきの笑顔を思い出すと、なんだか可愛く感じてと顔が綻んでしまう。  例えば、オレと出会う前に、優月が誰かと関係を持っていて、オレの前でそいつが優月にキスして、諦めないとか宣言されたら。  オレがそいつと話して、そいつのことを好きかもなんて言う日が来るかって話で……。  絶対ぇ来ないぞ。……つーか普通は無いだろ、と思ってしまう。  なのに、何でか優月だと、そういうことも、あるかもなと思ってしまって、変に納得してしまう。でもってそんなとこも可愛いなんて思う、よく分からない自分の気持ち。  多分、優月は、過去のこととかにはあまり拘らず、今目の前にあるものをまっすぐ見て、好きかどうか判断してるんだろうと思う。過去はもちろん繋がってはいるんだろうけど、それを経た上で、今目の前でどうなのかってことを重視してる。  ……じゃなきゃ、オレがしてたことだって、ほんとならもっと嫌だろうし。オレと付き合おうなんてなるはずがない。  まっすぐ、今のオレを、見つめてくる。  あの綺麗な瞳が、すげえ、好き。……なんだよな、オレ。  ぽわぽわしてて、あんまり何も考えて無さそうな時もあるのに。  思いもよらないような、どまんなかつついてくるみたいなことをたまに言う。  優月に嘘はつけない気がするし、つきたくないなとも思う。  まっすぐだから、こっちもまっすぐで居たいとか……。ほんとらしくないこと、真剣に思ってるよなぁ、オレ……。  にしても。と、ふと気付いた。  奏人とご飯行ってくるねー、とか言われたら、どうすっかな。  快く送り出す……? 一緒に行く……変だよな。  普通無いだろうと思うけど、なんかそれもありそうな気がして、しばし、どうするか考えてしまった。 2023/3/2 ◇ ◇ ◇ ◇ 3/3 優月のお誕生日です(*´艸`*)♡ 次ページから、優月誕生日の番外編です♡

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