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第643話◆番外編【優月・お誕生日】1
※※今回は、本編よりもちょっと未来の二人ということで。
本編が春から夏位なので、そこから一年弱の間、仲良く一緒に居る二人&周りも認めて大分経った。という関係性で書きますね(*´艸`*)♡
ただ、本編が進んだら、また別にお誕生日書くかもしれないので、もうこれは、パラレルワールドな未来ということで。オッケイよーという方、お読みください~(*´艸`*)♡
◇ ◇ ◇ ◇
【side*玲央】
優月の二十歳の誕生日。
オレの二十歳の誕生日は、ライブをした。関わりのある人達もかなり呼んで、そのまま二次会で大騒ぎだった。その後は、優月と二人で祝ってもらった。
優月の誕生日はどうしようかなと考えた末。
二人で暮らしてるマンションに、特に優月と仲のいい人達を集めることにした。
優月の家族四人、バンドのメンバーと稔、優月の幼馴染の智也と美咲、蒼さんや先生を呼ぶからついでにじいちゃんも。それで十五人。オレが直接連絡取れない人は、連絡を回してもらい、優月には内緒で準備してきた。
明日が優月の誕生日――。
◇ ◇ ◇ ◇
「あと少しだな……」
二十四時になるまでは、二人で起きていようと決めた。
抱いたまま寝落ちしそうだった優月を、軽く呼びかけて今日だけは起こした。すぐ目を覚ました優月を腕枕で抱き締めて、至近距離で見つめ合ったまま色々話す。優月が目覚めた時から手に持ってた小さな置き時計をまた確認。数分で、優月の二十歳の誕生日、というところで。
「二十歳になったら、やりたいこと。ある?」
そう聞いたら。
「んー……玲央と、お酒飲みたい」
ふふ、と笑って、そんなことを言う。オレが先に二十歳を迎えて、少し飲むようになってから、一緒に飲みたいようと、ずっと言ってた優月を思い出すと、可愛くて、ついつい撫でてしまう。
「じゃあ明日、一緒に飲もうな?」
「うん」
嬉しそうに笑う。
「あとは? 何かある?」
「んー……なんだろ?」
じー、と見つめられる。
「……なったら、浮かぶかなあ?」
そう言って笑った優月に、ふ、と笑んで頷いた。
「一緒にできることなら、全部一緒にするから」
「うん。全部?」
「優月が一緒にしてほしいことなら全部」
「ん……ふふ」
目を細めてにっこり笑うと、優月は少し体勢をかえてオレに近づくと、ちゅ、とキスしてきた。
「……大好き、玲央」
きゅー、と可愛く抱き付かれて、ぎゅ、と抱き締め返す。
「……あ。あと一分だ」
その声に、少し優月を離して、二人で時計を見つめる。
「……三十秒……わー、玲央、何しよう? ぴったりになったら」
何だか急に慌てだした優月に、クスクス笑ってしまう。
「何したい?」
「何となく、何かしたい。何しよう?」
「あーじゃあ……聞いてて」
もうあと十秒というところで、時計を枕元に戻して、優月を抱きしめた。
「玲央?」
不思議そうな優月に口元が綻ぶ。二十四時ぴったり、見た瞬間。
優月の耳元で、ある歌を、歌い始めた。
わ、と一声出した後は、ずっと黙ったまま。そのうち、そろそろと手が背中に回ってきて、きゅ、としがみついてくる。
誕生日おめでとう、とは言わないけど、生まれてきてくれて、ここに居てくれてありがとうという歌。歌詞が優月に伝わる位の、小さな声で。
歌い終わると、なんだかますますひしっとしがみついてる優月を、ぎゅと抱き締めて、「誕生日おめでと」と言いながら、頭をなでる。うん、と頷いたまま動かない優月。
「……優月?」
呼ぶけど動かない。
「……やっぱ、歌うとか、恥ずいな」
「――――……」
「……歌って、とかたまに言う奴居たけど、死んでもやだって言ってたんだけどなーオレ……なんか今は歌いたくなったというか……やっぱり、優月も照れる?」
何だか優月が何も言わないので、余計恥ずかしく思えてきて、苦笑とともにそう言ったら。急にがばっと顔を上げて、オレを見上げた優月は。
「……え」
「~~~泣いちゃうよ……」
涙を堪えるみたいな感じで言う。涙ウルウルの瞳に驚いてとっさに動けなかったのだけれど。
すぐに、もう本当に愛おしく思えてきて、涙いっぱいの目元にキスをした。そのまま、指で、涙をぬぐうと。
優月は、じっとオレを見つめてくる。
「……っ……ありがと」
喜んで笑うかと思ったら、めちゃくちゃ涙でうるうるされてしまって。今も、涙をこらえてるみたいな顔だけれど。
「……かわいい」
すっぽり抱き締めて、よしよしと撫でながら。
「おめでと、優月。二十歳だな……」
「うん……ありがと」
しばらく、そのまま、黙ったまま、抱き合ってると。
その内、落ち着いたらしい優月が、クスクス笑いだした。
「……玲央に、二十歳の誕生日ぴったりに、歌ってもらえるとかさ……」
「ん」
「嬉しすぎるし……あと、贅沢過ぎて、びっくりしちゃった」
「贅沢?」
笑いながら聞き返すと。
「玲央のファンの子たちとかだったら、嬉しくて気絶しちゃうよ」
「……気絶……はどうだろな」
ぷ、と笑いながら言うと、「絶対しちゃうと思うけどなー」と優月がオレを見つめてから、「んー……」と、何やら唸りながらオレに近づいてくる。そして、優月から、ゆっくりキスされた。
「……すっごく、好き……」
まだ鼻声の感じで、囁くように言われたりすると。
……もう可愛くて、無理で。
ぽふ、と枕に背を沈めさせて、唇を重ねて、深く絡める。
「……ん…………れ お…………」
思うまま、ながいこと、キスしていたら。
なんだかくったりしてきて。そのままウトウト、眠り始めた。
そのまま抱き寄せて、眠くなるまで、スヤスヤ寝てる顔を見つめていた。
顔が、勝手に綻ぶ。
◇ ◇ ◇ ◇
続きます♡
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