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第648話◆番外編【優月・お誕生日】6
抱き付きたいのを我慢していると、玲央が笑いながら、オレを見つめる。
「なんかすごく思ったんだけどな」
「……?」
「ここに皆に来てもらった時、知り合い同士じゃないと思って、紹介したんだよ。そしたらなんか……思ったよりもすげえ、繋がってんのな?」
「……繋がって?」
聞き返すと、玲央は、ん、と頷いた。
「優月の家族は、絵の教室の展覧会とかで久先生や蒼さんと繋がってたし、智也と美咲は、優月の幼馴染だから、お母さんとかは知ってるんだろうとは思ったけど……樹里と一樹も、智也たちに懐いてたしさ」
「あ、うん、そだね。美咲たちは、蒼くんや先生のことも知ってるよ」
「らしいな。展覧会や学校で会ったとか言ってた」
「うん」
「じいちゃんは、オレのバンドや稔のことも知ってるし。蒼さんは、バンドメンバーのことも知ってるし……なんとなく、オレと優月の近い人たちは、色々繋がってるんだなと思ってさ」
「ん……」
「準備とかも、楽しそうにやってたよ」
「そう、なんだ」
何だかすごくすごく、嬉しいことを言ってくれている気がして。
また感動しちゃいそうで、短くしか返事が出来ない。
でもダメだ、さっきも泣いちゃったし、ほんとに一樹と樹里の前でそんな泣くわけにはいかないし。しっかり、オレ! と思い直したところで、甲斐に「ほら」とグラスを渡された。ピンク色の何かが入ったオシャレなグラス。
「あ、ありがと」
「飲まないで待ってろよ?」
「ん? あ、うん」
甲斐に言われて頷くと、目の前で玲央も同じグラスを受け取った。ふと気付くと、皆が同じグラスで、一樹と樹里だけ少し違う色の飲み物が入ってる。
「玲央、全員行き渡ったよ」
バンドの皆と稔が配ってくれてたみたいで、玲央にそう言うと自分たちもグラスを持った。
「じゃあ……」
玲央が、そう言って、皆を見回す。
「優月がピーチティーが好きなので、初めてのお酒はピーチフィズにして、皆に作ってもらいました。果実酒のが甘くていいかなと思ったので」
オレもだし、全員が、玲央のこと見てる中でそんな風に言って、玲央はふ、と笑って、一樹と樹里に視線を向けた。
「一樹と樹里のは、オレンジジュース。二人が成人した時、好きそうなお酒、ごちそうするから」
「「うんっ!」」
二人が嬉しそうに頷くと、玲央がオレを見つめた。
「ずっと一緒に飲みたいって言ってたけど。ようやくだな?」
「うん」
嬉しくなって頷くと、ふ、と微笑まれる。
「じゃあ、もっかい改めて」
玲央が、グラスを少し高く掲げる。
「カンパイ」
玲央が言った言葉にかぶせて、皆が一斉にカンパイ、と言って、次々グラスを合わせに来てくれる。
皆が少し離れてから、玲央がオレのグラスを合わせて、「飲んでみな?」と言われて。初めてのお酒を口にした。
「…………」
初めてのお酒は、甘くて、ふわ、と桃の良い香り。
「……おいしい」
そう言うと、玲央と、周りの皆が笑顔。
「ビール苦い、とかは、今度やろうな?」
クスクス笑って、玲央がそう言うと、蒼くんが寄って来て笑う。
「優月、ジュースみたいだからって飲みすぎると酔っ払うからな?」
「そうなの? 全然お酒の味しないんだけど……」
「まあ、酔っ払っても、玲央が居るから平気か」
クス、と笑って、オレに囁く。
「迷惑かけたくないけどね」
ふふ、と笑うと、蒼くんは笑いながら首を振る。
「つかあいつ、酔った優月、死ぬほど可愛いって言いそうだけどな?」
少しだけ離れた所で稔とかといつもみたいに騒ぎながら楽しそうにしてる玲央を見ながら、蒼くんがまた笑う。
「分かってたけど……ほんと、べた惚れな感じな?」
「……」
……べた惚れ……。なんかそんなことまっすぐ言われると、顔が熱くなるし、なんて答えたらいいか分からなくなってしまう。
そこに勇紀たちが近づいてきた。
「優月、そんな顔赤くしてると、玲央が誤解するよ?」
「……う」
顔を手の甲で冷やしてると。
「まあたまには嫉妬させるのもいいか」
クスクス笑う勇紀たちの手にはもう、全然違うお酒。
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