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第649話◆番外編【優月・お誕生日】7

「あれ、皆、もうこのお酒は飲んだの?」 「そんなの一口だよー」 「あ、でも優月はゆっくり飲めよ?」  勇紀と稔がそんな風に言って笑うので、うん、と頷くと、颯也が少しオレに近寄ってきて、こそっと囁いてくる。 「優月が酔うかもだから、皆と話せてから飲ませるとか玲央が言ってさ。だからお酒の乾杯が今なんだよ」 「そうなの?」 「そ。過保護すぎ、だろ?」  颯也が面白そうに、そんなことを言ってから、隣に居た蒼くんに「ですよね?」と笑って見せると。 「確かに過保護だけど。……まあ、賛成はしたけど」  蒼くんは苦笑して、オレを覗き込む。 「話せないうちに酔っ払って、話せなかったーってなりそうな気もしたし。クラクラしたりしてないか?」 「うん。まだ平気。ちょっと顔が熱いけど……」  言ったところで、智也にじっと見られて、クスクス笑われた。 「お前のそれ作ったのオレだけど……めちゃくちゃ酒は少しにしといたんだけどな」 「ん、でもほんわかした感じだから大丈夫なんだけど……え、赤い??」  皆、んー? どうだろ、と面白そうに笑う。そしたら、そこに。 「優月、顔、ちょっと赤い。もう酔ってる?」  美咲がクスクス笑いながら、樹里と一樹と一緒に近づいてきた。  美咲のセリフに、皆が余計におかしそうに笑う。 「え。酔って……ないと思うんだけど」  酔ってるっていうのが、よく分かんないけど、そんなにいつもと違うような感じはしないんだけどな。  少し頬に触れていると、樹里が、とことこ寄ってきて、手招きする。 「ん?」  耳を寄せると。 「玲央くんがカッコよすぎなんだけど~。ゆづ兄、幸せだね~」  囁かれた言葉にびっくりして、樹里の顔を見つめてしまうと、樹里は嬉しそうに、ふわふわと笑った。 「ゆづ兄が幸せそうで、嬉しい~」  むぎゅ、と抱きつかれて、ふ、と笑ってしまう。よしよし撫でていると。 「あっずるい、樹里」  飛んできたのは一樹。 「ずるいって何よー」 「撫でてもらっててずるいー」  ぎゃあぎゃあ言い合いだした二人にクスクス笑いながら膝をついて、むぎゅ、とふたり一緒に抱き締める。途端に、笑顔でむぎゅー、と抱き返されて……可愛いなぁ、とよしよし撫でながら。   「二人が二十歳になるのも待ってるね」  そう言うと、二人、また嬉しそうに笑う。 「十年後だから、ゆづ兄は三十才だねー」 「……そうだね」 「ちょっとおじさんになってるのかなあ?」 「うん。まあ……そうかもね?」  二十歳になったばかりなのに、三十歳の話をされて、何とも言えずにクスクス笑っていると、父さんと母さんが、何してんの、と笑いながら近づいてきた。 「「甘えてんの」」  樹里と一樹がハモって言うと、周りの皆が可笑しそうに笑う。  皆が笑顔で。  部屋がキラキラしてて。  ……この世で、一番、幸せな場所なんじゃないかなとか。  思ってしまった。  少なくともオレにとっては。  ……玲央が居てくれて、皆が、居てくれて。  生きてきて良かったなーなんて、ちょっと大げさなことを、思ってた気がする。 ◇ ◇ ◇ ◇  皆と話しながら、少しずつお酒を飲んで。  夜も更けてきたら、皆、そろそろ帰ろうっていう話になった。  一斉に片付けが始まったけど、優月は座ってなと玲央に言われた。いいよ、片付けるよと言っていたら、良いから、とオレをソファに座らせると、玲央は皆に「撮ってくれてた写真、優月に送ってあげて」と言った。  あ、そうだった、とか皆が言いながら、スマホを弄り出す。カウンターに置いてたオレのスマホを、玲央がオレに持って来てくれた時にはもう、皆からの写真が山盛り届いていた。  結局、樹里と一樹と一緒に、皆が撮っててくれた写真を見る時間になった。  準備のところから、ずっと、皆がそれぞれ撮っててくれたらしくて。 「玲央くんが、適当に皆が撮ってゆづ兄にあげようって最初に言ってたんだよ」  写真を見ながら、一樹がそう言って、なんかすごいよねー玲央くん、と笑う。うん、と頷きながら。  なんかもう。  ……大好きすぎて、ほんと困ってしまう。  

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