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第651話◆番外編【優月・お誕生日】9
「優月、少し水飲むか?」
すぐ近くに立ったオレを振り返ってそう言った玲央に、オレは正面から、きゅ、と抱きついた。玲央のシャツが少し冷たくて、自分の頬が少し火照ってるのを実感。
は、とついた息も、なんだか、熱い。
「優月?」
クスッと笑う玲央の手が、オレの頬に触れて、まっすぐ見つめられる。
「顔、ちょっと熱いな?」
愛おしそうに細めてくれる瞳に、胸が痛い。
「……玲央」
背中に回した手で、ぎゅー、と抱きつく。
「今日、ほんとに、ありがと」
「……ん」
クスッと笑う気配がして、ヨシヨシと撫でられる。
「玲央がいっぱい色んなこと、準備したりしてくれたの、皆から聞いた」
「……そうなのか?」
「うん。そう……」
オレが頷くと、玲央は、言わなくていいのに、とぼそっと呟いた。
なんだかそんなとこにも、ときめいてしまう。
「……オレは、聞かせてもらって、嬉しかったよ?」
そう言ったら、玲央は、ふ、と目を細める。
なんだかもうとっても、愛おしすぎて。
オレは、玲央の首に腕を回して軽く引いて、唇を合わせた。
触れるだけで、数秒。
玲央の手が背中に優しく触れたので、ゆっくり目を開けたら、玲央とばっちり目があった。
じっと見つめ合ってまた数秒。どちらからともなくクスクス笑い始めて、少しだけ唇が離れた。
「優月……」
名を呼ばれて、頬に手が触れる。
「口、熱いな?」
「……そう?」
「そうだよ」
クスッと色っぽく笑った玲央の唇が、ゆっくり重なってくる。
舌が唇に触れてくるのでオレが少し口を開けると、ゆっくり中に入ってくる。舌先が触れ合うと、自分の舌が熱いのが、すぐ分かった。
「……ふ…… ン……」
絡んで軽く噛まれて声が漏れると、玲央はゆっくりと唇を外した。
「熱い……」
クスクス笑われて、唇が頬にも触れる。もう片方の頬にも手が滑って、すり、と撫でられる。
「……ふ。くすぐった……」
クスクス笑いながら玲央を見つめると、玲央はまた笑った。
「少し水飲むか?」
「んー……うん」
頷くと、肩に手をまわされて、すごくくっついたままリビングに戻った。
テーブルに座らされて、少し待っててと言われる。
なんとなくだるい感じがして、テーブルに肘をついた。
さっきまで、皆が居た空間。今はもう全部片づけられて、静かで。さっきまでと全然違うなぁ、なんて思いながら、部屋を見ていた。
大好きな人達が、たくさん集まってくれて。
……それを集めてくれたのが、玲央、ていうのも、ほんと嬉しい。
「……はー」
最後にお酒飲んでから、結構時間は経ってるし、マシになってるとは思うんだけど……なんか、少しほてってるのと、だるい。これが酔ってるってことなのかなあ。でも、気分悪くはなくて、むしろ、ぽわぽわでいい感じだけど……。
でも、首のとこに締めてる蝶ネクタイが、なんだか少しだけ苦しい気がして、片方のボタンを外してみる。少し楽な気がしてほっと息をついた時、玲央が水を持って来てくれた。
「優月、ほら。水」
「あ、うん。ありがとう」
受け取って、玲央を見上げる。
水を一口飲んで、美味しい、と息をつくと、玲央が隣の椅子に腰かけた。
「気分悪くはないか? ……まあ、悪くはなさそうだけど」
「うん、大丈夫」
「……なんか、可愛い酔い方だよな?」
頬に触れられて、その優しい触れ方と言い方に、ふ、と笑みがこぼれる。
「……玲央、あのね……?」
「ん?」
「オレね、一生、忘れないと思う。二十歳の誕生日……ほんとにありがとね」
そう言ったら、玲央は笑んだまま、何秒か何も言わずにオレを見つめる。
なんとなく玲央を見つめ返したまま、玲央の反応を待っていると。
玲央は微笑んで、ん、と頷くと、それからすぐに頬に触れていた手がうなじにまわって、ぐいと引かれた。
「ん」
さっきしてた、ゆっくりな、触れるだけのキスとは違う。
深く重なって、思い切り深く絡んで、舌を奪われた。
「……ん、ン……っ?……」
キスが激しくなるのが急すぎて全然ついていけなくて、空気を求めて喉が、ひく、と震えた。
「優月……」
「……ん……ふ……っ?」
しばらくキスされて、呼ばれた名前に目を開けて、ぼんやり玲央を見上げる。
まだ触れてしまいそうなくらい近くから、玲央に囁かれたのは。
「……このまま、ベッド連れてっていい?」
というセリフで。
シャワー……と、一瞬思ったのだけれど。
すり、と撫でられて、またキスされて。
唇の間で、「なんか、可愛くて無理……」なんて言われたら、そんなの、断れるわけもなくて。
うん、と頷いた。
◇ ◇ ◇ ◇
(2023/4/2)
次で完結します♡
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