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第655話◇
食事が運ばれて来て、食べ始めながら、ふと思う。
「……なんかでもさっきの話、優月は遠慮しそうだよな」
何だか想像すると、そんな気がして口に出すと、三人は少し黙って、それぞれ考えてから、ははっと笑い出した。
「確かに。えっ無理だよう、とか言いそう」
勇紀はクスクス笑って、優月の真似をして、ぷるぷる首を振っている。
「OK出たらうまく話す」
笑ってしまいながらそう言うと、皆もクスクス笑いながら頷く。
「まあ、普通はアルバムに絵が載るとか言ったら驚くよな。プロならあるだろうけど」
「あーそういえば、蒼さんに写真撮ってもらいたいとか、社長言ってたよね」
「言ってたな」
颯也と勇紀と甲斐が言うので、「なんか色々楽しみだよな」と呟くと。
「玲央が早寝早起き以外でおっきく変わったのは、そういうとこもだよねー」
と勇紀がオレを見て笑った。
「そういうとこって何だよ?」
「先のことを楽しみーとか言ったり、楽しそうな顔したりするようになった」
「……それ変わったとこなのか?」
「そうだよー。もちろん前だって一緒に色々してたけどさ。楽しみーとかじゃなくて、なんか淡々とクールに……って感じだったよね?」
「……そんなだったか?」
オレが首を傾げていると、颯也と甲斐も苦笑しつつ、頷いてる。
「……まあでもそれ、オレらにも言えるかもな」
颯也が顎に手を掛けながら、んー、と首を傾げた。
「……優月が居ると、玲央が面白すぎて、オレらも前より反応してる気がすんだけど」
考えながらそんなことを言ってる颯也に、甲斐も勇紀も、そうかもね、と笑う。
「んだよ、面白すぎてって」
「んなこと言ったって……面白いだろ」
オレのセリフに颯也は、ふ、と笑みを零す。続けてなんだかんだ言ってくる勇紀たちと話しながら。
……確かに。颯也が笑うのが増えた気はするよな。勇紀は相変わらずだけど、甲斐も、優月のこと、なんだかんだ気にしてる気がするし。
まあ。……色んな影響はある気がするよな。優月がオレ達の中に入ってきてから。そんな風に思っていた時。テーブルの隅に置いていたスマホが震えた。
「……ちょっと悪い」と言いながらスマホを手に取ると、勇紀が笑った。
「優月から?」
「ああ。……写真、来た」
「見せて?」
送られてきた絵の写真を三人に見せると、「可愛い」と勇紀が笑う。甲斐と颯也も、上手いな、と微笑んでる。
「優月っぽい絵だよな」
そう言って、見ていると、なんだか笑ってしまう。
皆と一緒に夕飯の写真を撮って、絵を送ってくれた礼のメッセージを送ると、「ありがと、玲央」と返ってきて。それから、ハムスターが投げキスしてるスタンプ。
……優月に似てるやつ。……可愛い。
どういう意味でこのスタンプにしてんのかは知らないけど『あとでしような?』と入れて、少し待っても返事はない。
……まあ。多分照れてるか、蒼さんがいるからか、どっちかかな。
スマホをテーブルに置いて、アイスコーヒーを口にすると。
「玲央、楽しそ」
そんな風に言って、勇紀が笑う。
「そう見えるか?」
「そうだよ。な?」
オレに答えてから、甲斐と颯也に聞いてる。頷いてから、「そういえばさ」と甲斐が言い出す。
「今日行くマンション、優月が居たらもう使わないんだろ?」
「そーいう意味では使う気ねぇけど。バンドでは使えるだろ。つか、もともとそういう名目で買ってもらってるしな」
オレの言葉を聞いてた颯也が、ふ、と笑う。
「そういう意味で使う気ねえのな?」
「……ねえよ」
「ほんと、少し前の玲央とは別人」
「……つか、んなことしたら、優月と居られないだろ」
ニヤニヤ笑いにちょっとムッとしつつ言い返すと、三人が食べるのを中断してまで、オレをまっすぐに、じっと見つめてくる。
……あー。なんか、オレ今、絶対余計なこと言ったな……。
案の定。
数秒後、嬉々として突っ込んでくる三人をスルーすることになった。
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