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第656話◇
食事の後はマンションで、実際弾きながらの曲作り。
優月からの連絡が来てから、駐車場まで迎えに行こうとしたら、勇紀が一緒に立ち上がった。
「オレも蒼さん、会いたいかも」
勇紀がそう言うと、じゃあオレらも行こうぜ、と颯也と甲斐も乗り気。皆で迎えに降りることになった。
優月と別れてからそんなに時間的には経ってない。昼から数えて数時間程度。なのに、蒼さんの車が入ってきて、窓越しに優月の顔を見た途端、ふわ、と気持ちが暖かくなった。話す前から、おかえり、という言葉が心の中で勝手に溢れたような感じで不思議な気分だった。
相変わらず少し悔しい位、大人でカッコいい感じの蒼さん。優月が何を話したのか詳しくは分からないが、三人にオレと優月のフォローを頼んだりしつつ、蒼さんは帰っていった。じいちゃんとこに蒼さんも来ると聞いて、どんな感じの集まりになるのか、楽しみになりつつ、オレの隣に立ってる優月に、改めて、おかえりと言ったら嬉しそうに笑って頷く。
……ほんと可愛い。
そう思って見つめていたら、皆が呆れたように笑って、先に歩き出したので、優月とその後を追って歩き出した。
部屋に戻って話した結果、皆が泊まっていくことに決まると、「お布団とか出すなら出しとくよ、オレ」とか優月が言う。先にシャワー浴びといで、と伝えていったん送り出したのだが、ふと、着替えを渡さないとと気づいた。
「着替え渡してくる」
立ち上がったオレに、皆がニヤニヤした視線を送ってくる。
「優月んとこ行きたいだけでしょ」
「……なことねぇし」
「まあごゆっくりー」
「いってらー」
そんな風に言って笑う三人を、なんとなくジロ、と見回してから、部屋を出て優月に呼びかける。
「優月、着替え渡す。おいで」
「あ、うん」
オレを振り返った優月が、嬉しそうに笑う。
……何で、こんなに可愛いかな。
まだまだ終わってないし泊まってくのも仕方ないとは思いつつ、今日は優月には触れられないだろうなと、やっぱり残念。
軽いキスはしながらも、仕方なく優月を離して、シャワーに送りだしてから部屋に戻ると、「あれ、意外に早い」と勇紀に言われた。
「襲ってンのかと思った」
甲斐の言葉に苦笑して、しても良かったけどな、と舌を出して睨むと、可笑しそうに笑われた。
「絶対拒否られるだろ、オレ達が居るとこで、なんて」
「……だろうな」
想像して、ぷ、と笑ってしまう。
さっき、ちょっかいだしただけでも、すげえ真っ赤になって、ぷるぷるしてたしな……。可愛かったな。と、思ってると。
「……玲央って、ほんとに優月のことが可愛いのな?」
颯也がしみじみ言ってくる。
今オレは、気持ちを口には出してないし、「何でだよ?」と聞き返すと。
「なんかよく、そう思ってんだろうなーって顔、するよな。で、なんか少し笑ってるし」
クスクス笑われて、確かに今そんなこと考えてたから、とっさに否定もできず。オレ笑ってたか?と、自分のことながら少し引く。ため息をつきつつ、ぽん、とキーボードの音を鳴らした。
「進めようぜ」
オレが言うと、皆、はいはい、と笑いながら、譜面と楽器に向かった。
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