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第655話「ねぼけ」*玲央
その後、シャワーから出てきた優月をひたすら可愛がりながら一緒にコーヒーを淹れて、皆のもとに運んだ。
優月はソファでオレ達を見ていたのだけれど、オレがしばらく曲作りの方に夢中になっていて、ふと気付いたら、すやすや眠り始めていた。
それを見た瞬間、また一気に和んだ。
ソファで眠っている優月に微笑んでしまったオレの顔を見てから、視線の先の優月を追って、寝てるのに気づいた勇紀も、クスクス笑いだした。
「あららー。寝ちゃったね」
その声に、甲斐と颯也も優月に視線を向けた。
「なんかちょっと笑ったまま寝てるし。かーわいい」
オレも思ったことを、勇紀が笑いながら言う。
「どうすんの? このまま寝かしとくの?」
「……寝づらいだろうし。歯磨かせて、ベッドで寝かせてくる。続けてて」
ベッドで寝た方が楽だろうと思ってそう言うと、優月に近づいた。
「優月……?」
肩に触れて、ゆっくり呼びかける。一回ではびくともしなくて、同じように、もう一度声をかける。
「……ん……」
すごく眠そうに、でも何とか反応して、むく、と起き上がる。
「優月、歯磨いて、ベッドで寝た方がいいだろ?」
「ん……れお……? うん……はみがき……」
まだ目が開いてない。オレの声に辛うじて反応して、オレの名をむにゃむにゃ呼びながら、目をこすってる。可愛い、と思った瞬間。
「れおー……」
腕がする、と回って、きゅ、と抱きつかれた。
「――――……」
「……ごめんね……寝ちゃった……」
まだ、むにゃむにゃと、そんなことを言ってる。目、開いてないな。
「……優月、いいのか?」
まあオレは抱き付かれてるの可愛いし、嬉しいからいいけど。
「……ん……? ……いいのか……って……?」
不思議そうに、んー、と動いた優月は、そこでようやく、目を開けたみたいで、やっと目の前の皆が見えたんだろう。オレが支えてた背中が、ピシ!とまっすぐになった。
「あ」
ぱっと優月がオレから離れる。すごい勢いで、覚醒したらしい。軽く握った手で口元を隠しながら、みるみる内にカアッと赤くなっていく。
「……っご、め……オレ、歯、磨いてくる……っっ」
うひゃあああー、みたいな勢いで、立ち上がって、部屋を出て行って、あっという間に遠ざかっていった。
「――――……」
優月を見送ったまま、しばし、シーン、と言葉なく。
その後、皆、可笑しくてたまんない、と言った様子で笑い出した。
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