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第657話◇

「優月」  そっと顎に触れると、気付いた優月が顔を上げる。  目が合うと、嬉しそうに笑うのが可愛くて、そっと、キスした。  オレを見て、ふわふわ嬉しそうに笑うとこ。  ずっとこのまま変わらないといい。  そう思いながらそっと合わせた唇から、舌を挿し入れて、優月の舌に触れる。 「……ん」  漏れる声が可愛くて、離せずに、深く絡めた。  んん、と喉の奥でくぐもる声。すぐ煽られて、もっと出させたくなる。が。 「ん、ま、って……」  優月が少し顔を引きながらそう言った。 「皆……居るし……途中、でしょ?」 「…………だな……」  はー、とため息をつきつつ、優月をぎゅ、と抱き締めてから、頬に触れて、顔を上げさせた。 「先にベッドで寝てていいから」  すり、と親指で頬を擦りながら言うと、優月は、ん、と頷いた。 「起こしていいよ」 「ん?」 「全部終わって、玲央がベッドに来たら、オレのこと起こしてくれていいから」 「――――……」  じっと見つめると、にっこり笑う優月。 「……何? 色々可愛がっていいってこと?」 「え」 「そういうお誘い?」 「ちっ……ちが」  え、の時点で違うことなんて、分かってる。  ……いや、にっこり無邪気に笑ってる時点で、そんな意味がないのは、分かった。  でもわざと言ったその言葉に、優月はまた、顔を赤くした。 「皆が居るから、声出せないけど、いい?」 「…………っ」 「そういうのも、逆に興奮するか……」  分かってるのにわざと。ちゅっと頬にキスしながら、次々言い続けていると、へにゃ、と八の字眉になった優月が。 「――――……」  ちゅ、と唇にキスしてきた。  触れるだけ。数秒触れて、離れると。  真っ赤なまま、オレを見つめた。 「おやすみ、て……キスしたい」 「――――……」 「……って、思ったんだよ」  そう言いながら、また新たに、かぁぁ、と赤くなりながらそう言って、少し俯く。  つーか。オレ達、結構エロいキスしてるし、何度も何度も、抱いてるし。  ……今更、おやすみのキス、とか。触れるだけのキスとか。  そんなのに照れて赤くなる優月が不思議なのだけれど。 「……可愛いなぁ、優月」  しみじみ口から洩れて、そのまま、ぎゅー、と抱き締めてしまった。そんな風に思う自分のことも不思議で、抱き締めたまま、クスクス笑ってしまう。 「じゃあ、少しだけ起こしてみる。起きたら、キスして?」 「うん」  ふふっと嬉しそうな笑い声が聞こえて。  背中に手が回って、きゅ、と抱きつかれる。  最後にもう一度キスして、優月を皆の居る部屋に連れていく。  少しだけ部屋を覗いた状態で、「さっきごめんね」と赤くなりながら謝って、三人を笑わせてる。 「だいじょぶ、おやすみ、優月ー」 「ごめんな、玲央取っちゃって」 「おやすみー」  勇紀と甲斐と颯也に送られて、優月が恥ずかしそうに頷いて、おやすみなさいと言い終えたところを、優月の肩に触れた。 「寝室まで送る」 「え。あ、大丈夫! ごめん、オレのせいで抜けさせちゃって。ここでいいよ」  珍しく少し早口で続けて一気に言うと、おやすみ、とぴゅーと足早に進んで、寝室のドアを開けると、バイバイ、と手を振った。  ん、と手を振り返すと、にこ、と嬉しそうに笑って、優月は部屋に消えていった。見送ってから、皆の部屋に入ると。 「寝室まで送るだってー 超過保護―」 「しかも断られてるし」 「ぷ、面白ぇなー?」  勇紀と颯也と甲斐がニヤニヤしながら言ってきた。  

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