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第661話◇
翌朝。
「……」
腕の中の優月が、少し動いたので目が覚めた。
「ゆづき……?」
もぞもぞと動いてる優月を抱き締めなおすと、「ん……?」と優月の声。
今日は一緒に目覚めた感じ。
「おはよー、れお……」
あくび交じりにそう言ってから、腕の中からオレを見上げてきた。
「……玲央が寝に来たのって……何時だったの?」
「……三時過ぎてたかな。時計見なかった」
「……眠いよね? 寝てていいよ、オレ、先に学校行くから」
そう言って、起き上がろうとするのを引きとめて、抱き締める。
「いい。一緒に行くって言ったろ。オレんちに戻って、ガッコの用意も取りに行くし」
「そこまで遠くないし……今から行けば全然歩きでも行けるよ」
「いいから。一緒に行く。もう目ぇ覚めた」
「……でも」
「あと五分、こうしてて。そしたら起きる」
「……うん。ありがと……」
もう諦めたのか、優月はすっぽりオレの腕の中に落ち着いて、背中に手を回してくっついてきた。
「……今日は智也たちと夕飯だよな?」
「うん……あのね、美咲とご飯行くの、玲央とこうなってから、初めてでね……」
「ああ……そっか」
「……一番最初に比べたら分かろうとしてくれてるんだけど、色々聞かれるかなあ~」
優月がクスクス笑ってる。
「最初は、すごい反対されたからさ」
「……それは何で?」
「えーと……」
「いいよ、言ってみな?」
言いにくそうな優月の、えーとに、笑ってしまいながら、オレがそう言うと。
「玲央が、色んな人とそうなってる、て知ってたから……だったかな……」
「男と、っていうんじゃなくて?」
「……まあ、オレが、男とっていうのもびっくりしたとは思うんだけど……違ったかなあ。心配してた」
「そっか。……まあでも、まだ心配だろうな」
「――――……」
まだそんなに時が経ったわけじゃないし、安心はしてないだろうなと思ってそう言ったら、優月は、ふと、腕の中から顔を上げて、オレを見上げてきた。
「大丈夫。ちゃんと、話してくるし」
「……ん」
「ていうかさ。オレのこと心配してくれるのが、まだ抜けないみたいで……昔からお世話かけてたからさ。ほんと、お姉ちゃんみたいだったんだよね」
クスクス笑ってる優月。
「……小さい頃の優月、可愛かっただろうしな。……生まれたて、死ぬほど可愛かったし……」
ふ、と笑ってしまいながらそう言うと、「またそれ……」と、優月はぷ、と笑い出す。
「幼稚園とか、よく泣いてた」
「……それは今もかな」
クスクス笑いながらそう言ったオレに、え、と目を大きくして、それからふわっと微笑んだ。
「今のはちょっと違うよ……? 今、オレずーっと、おかしいんだよね……」
「おかしい?」
「うん。そう……」
頷いて、なんだかしばらく、んー、と考えた後。
「玲央のことが、すっごく好きだから……かなあ。なんか、泣いちゃうんだよね……」
「――――……」
「オレ、ほんとにね、中学位からはずっと泣いてなんかなかったよ? なんか最近、涙腺が……」
苦笑いの優月が、可愛くてたまらなくなって、ぎゅーと抱き寄せた。
「……すっごく好きだから、とかさ」
「……?」
「さらっと言うけど」
「ん……? 軽く言ってる訳じゃ、ないよ?」
「……じゃなくて」
むぎゅ、と抱き締めたまま、頬に触れて、顔を上げさせる。
「さらっと、すっごく好きとか言われると……たまんないなーと、思って」
「……」
じっと見つめてくる優月の顔が、数秒後、かあっと赤くなる。
「……なんでそこで照れんの?」
可愛いなーと思ってしまいながら聞くと、優月は少し首を傾げてから、わかんない、と言った。
「……そんな風に言われると……さらっと言うの、恥ずかしいのかなって」
「つか、さらっと言っていいよ。ていうか、言ってくれた方が嬉しいから」
照れてるけど、頷いた優月の頬に、ちゅ、とキスしてから、起き上がった。
「先に食事、注文してくる。優月の着替えそこにあるから着替えといで」
「うん。ありがと」
無意識なのか、オレがキスした頬に、すり、と自分で触れながら、立ち上がったオレを見上げてくるのが可愛くて、頭を撫でると、ふふ、と微笑む。
まあ。朝から。とても、可愛いなと思いながら、部屋を出た。
(2023/4/21)
あとがきです。
ちょっとお知らせ♡
一月に一週間ほど更新を休んで、紙の公募に出してみましたとお知らせしたのですが。
今日、キャラ文庫の中間発表がありまして。一次を通過していました( ノД`)
最終選考の結果は二か月後なので、静かに待ちます(´∀`*)ウフ。
56作品通過なのでここから厳しいとは思うのですが、
一次通過……嬉しかったので、ご報告させていだたきました。
ではでは♡
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