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第663話◇
……あ。そういえば、皆居るのに、さらっと、ほっぺにキスされてしまった。
と気づいたのは、甲斐が起き上がって、大きなあくびをしてるところでだった。
良く分からないけど、違うんだーと思ったのを、玲央が笑って許してくれてよかった、と思ったのが先で。
キスされて可愛いとか言われたようなそっちは、スルーしてしまった。しかも、勇紀がその後、ちょっと恥ずかしいツッコミしてたようなー。わーん。
「……甲斐ってさ、優月を抱き枕にしてたの覚えてる?」
「は? ……あー、またやった?」
「やってた」
勇紀が頷くと、甲斐がオレに視線を向けてきた。
「悪い。……てか、なんでそんな赤いの?」
「――――……っっ」
「オレが抱き枕しちゃったから?」
「?!」
ち、ちが……!!
今度こそ、ほんとに違うからと焦ってると、玲央がオレを見下ろしてから、ふ、と笑った。
「オレが皆の前で、キスしたからだろ?」
こくこくこく、一生懸命頷くと、玲央が、ぷ、と笑って、オレの肩に腕を回して、抱き寄せた。
「お前に抱き枕されたからって赤くなるわけないだろーが。寝ぼけたこといってねーで、顔洗ってこいよ」
ちょっと玲央の口調が荒くなって、声が低くなる。
「……うわ、こわー」
「甲斐が余計なこと言うから。実はさっきからマジ怒りじゃない、あれ……」
「早く行けよ」
呆れたように言う玲央に、甲斐と勇紀が笑いながら追い立てられるように出ていき、その後をあくびしながら颯也が歩いて行った。
「優月」
ふ、と笑んで、見つめられて。
「かわいーな」
ちゅ、とキスされる。
「――――……」
嬉しいな、という気持ちしかなくて。
玲央を見つめて笑い返すと、むぎゅ、と抱き締められた。
……でも。ちょっと言いたいことがある。
「……あのね、玲央……」
「ん?」
「キス、は……」
「分かってるよ。皆の前ですんなってことだろ?」
ふ、と笑われてしまうけど、小さく頷くと。
「まあ。分かってンだけどさ」
苦笑しながら、玲央の指が、オレの頬にかかる。
「分かってるんだけど、可愛くて」
ちゅ、と頬にキスされる。
……ぷしゅー、と。湯気でも出そう。
何でこの人は、朝から、こんなにキラキラしてて、どこもかしこも、カッコいいんだろ。
ただただ、ぽけーと見つめてしまう。
瞳かなあ……。
顔の形……? 鼻……口。眉も。髪の毛も。
…………手も、腕も、体も……ていうか、全部カッコいいというか。
ていうか、どんどんカッコよくなってる気がするのは、気のせい……?
「なに。どした?」
クスクス笑いながら、玲央がオレを見つめる。
「あのー……」
「ん」
「……玲央って鏡、見るでしょ?」
「……まあ、見るけど……」
「玲央の顔見た後、オレの顔見ると、どう思う……?」
「どう思うって……??」
「玲央って、すごく整ってる、でしょ?」
「……その聞き方だと、優月は整ってないみたいな」
ぷ、と笑いながら、何言ってんだ?と言うと。
「優月見ると、可愛いしか、浮かばないけど」
「…………」
……それはどうしてなんだろうか。
普通に不思議だけど。
「そんなマジで意味わかんないみたいな顔すんなよ」
ぷに、と頬をつままれて、左右に軽く引っ張られてしまう。
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