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第664話◇

 ぷにぷにぷにぷに。  ほっぺ、揉まれるみたいな。  玲央はクスクス笑いながら、オレを見下ろしてる。 「変な顔になっちゃうから……」  そう言って、ちょっと離れようとしているのだけれど、痛くはないけど、むにゅむにゅ掴まれてて、離せない。 「玲央ってば……」  ささやかな抵抗かもしれないけど、つままれないように、ちょっと膨らんでみると。玲央が、ぴた、と止まって、オレをじっと見つめた。 「……」  ん? なに? と、玲央を見上げていると、ぱ、と頬から手を離されて、そうかと思ったら、引き寄せられて、ぎゅー、と腕の中に抱き締められた。というか、閉じ込められた、という感じの抱き方で。 「……かーわい……」  クスクス笑って、玲央はオレの頭にすりすりしてる。触れてるのは多分、玲央のほっぺかなと思うんだけど、見えないので分からない。 「……良く分かんねーけど、オレの顔、鏡で見るより、優月を見た方が嬉しいけど。……って、自分の顔、別にそんな好きでもないし」 「……そうなの?」 「オレが自分の顔、すげー好きって言ったらどーする?」  クスクス笑いながら聞かれて、んー、と考える。 「でもそれだけカッコよかったら、大好きでもいいんじゃないかと思う。誰にも文句言えないと思うけどなぁ……」  そう言ったら、玲央は、はは、と可笑しそうに笑って。 「なんかいっつも優月、ぽけーと見惚れるから……」 「え、オレ、そんな?」 「……そんな、だな」  笑いながら玲央がオレを少しだけ離して、顔を見下ろしてくる。 「優月がそんなにカッコいいと思ってくれるなら、この顔で良かったとは思うど」 「――――……」 「でもだからって、自分の顔が好きとかではないけど……オレは、優月の顔が可愛くて、好きだけどなー?」 「……オレ、ほんとに至って普通だと思うんだけど」  でも好きって言ってくれるのは嬉しいなあと思うと自然と顔が綻んだ。すると。玲央の瞳が、更に優しく細められて、なんかもうオレの目には、キラキラしてる感じで映る。 「オレには、一番可愛く見えるんだよなー……」 「……っ」  ぐ、と言葉に詰まってしまう。  もう、視線とか、全部強烈なんだよね。  声も、すごくすごくカッコよくて、ちょっと低くて。囁かれると。死にそうになっちゃうんだけど。  破壊力を考えて、全部、抑え目にしてくれないと……。 「……真っ赤なんだけど……」  くく、と喉の奥で笑う玲央が、オレの頬にまた触れて、今度はつままずに、優しくすりすりと、撫でてくる。 「……顔もだけど、すぐ赤くなったり、涙ぐんだり、慌てたり……笑ったりすんのも、全部可愛いからなぁ……」  もう溶けそうな気分で玲央を見上げていると。  ゆっくりゆっくり、近づいてきて、優しく、唇が触れてきた。 「…………っっ」  ドキドキが。痛い。  死にそうで。  ぎゅ、と玲央の服を握り締めた時。  ピンポーンと鳴ったチャイムの音が、やけにものすごく大きな音に聞こえて、びくう!!と大きく震えて。  少し驚いた顔をした玲央に見つめられて。  それから、ははっと、面白そうに笑うと、オレを離して立ち上がった。 「受け取ってくるから、顔戻しといて」  クスクス笑いながら。  朝からもう、溶けそうなほどに強烈な人は。部屋を出て行った。  ……あ。そうだ。みんなも居たんだった。…………忘れてた。        

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