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第669話◇

 もうすぐ正門。  玲央と離れなきゃ。て思うといつもちょっと寂しい。……いつもずーっと、居るのにと、自分でも思うけど。 「玲央は、今日、練習だよね?」 「ああ」 「何時まで?」 「二十一時位かな……夕飯食べてから帰るから」 「うん」 「合わせられたら一緒帰ろ。優月の方が早かったら……こっち来てもいいけど」 「じゃあ、とにかく、途中で連絡入れとくね。見れる時に見て?」 「あぁ。オレもする」 「うん。連絡取れなかったら、帰ってるから」 「分かった」  頷くと、なんとなく見つめ合う。  ……見つめ合うと、お互い、くすっと笑ってしまう。    別になにかがおかしいわけじゃなくて。  ……多分、優しい気持ちになるから。  オレはそうなんだけど。……多分玲央も、そうなんじゃないかなと思う。 「じゃあ、玲央、またね?」 「ん」  頷いた玲央の手が、背に触れる。  ぽんぽん、と優しく叩かれて、ふ、と見上げる。  こんなところで、人にキスしたいなー、なんて。  自分が思うようになるなんて、ものすごく不思議だけど。  バイバイ、と手を振って、玲央から離れた。  曲がり角の所でちょっと振り返ると、まだ立っててくれて、最後にもう一度小さく手を振る。  ……ずーっと居て、今離れたばっかりなのに、寂しいとか。  自分でもほんと不思議だけど。  玲央とおんなじ学部で、おんなじ授業取って、ずっと一緒居れたらいいのに。なんて思うけど、でもそれはそれで、あんまり全部占領しちゃうのもなぁ、なんても思うし。  飽きられちゃうかも? どうかなあ。まあ少なくともオレは飽きないけど。  ……飽きないけど、多分、少し離れて、それぞれのことをして、でもって、また一緒に戻る……の方が、なんとなくきっと、良い気がする。  ……んー、でもちょっと寂しいけど。  なんて堂々巡りで色々考えながら、一限の教室に向かう。  玲央はもう部室についたかなあ。  そう思いながら、教室に入って、仲良い友達の居る席に近づく。 「おはよー」  皆と適当に挨拶を交わして、席に座って、教科書やノートを並べる。  ぶ、とスマホが震えた。  「教室ついた?」と玲央からだった。  「着いたよ」と返すと、「オレも部室入った」と玲央。  「毎日一限あるみたいな優月の時間割がすごすぎ」と入って、笑ってるスタンプが入ってくる。「教職あるからね」と笑顔マークを返すと。「応援してるから頑張れ」って。  うわー……。  嬉しい。 「オレも全部応援してるよ、玲央」  そう入れると、いいね、みたいな、グーサイン。  ……がんばろ、今日、一日。  決意新たに、スマホをポケットにしまうと。 「……相手は、彼氏?」  隣の友達が、こそ、と話しかけてきた。 「……うん。そう」  ふ、と笑って答えると、そか、と微笑まれる。「どして?」と聞くと。 「めちゃくちゃ嬉しそうな顔してスマホ触ってるからさ」 「え。……そう?」 「うん」  クスクス笑われて。ちょっと恥ずかしくて、頬を引き締める。  オレ今、超普通の顔してたはずなのに、おかしいなと、思いながら。   (2023/5/8) お誕生日番外編でお知らせしていた、優月のイラストをのせたブログを更新しました。 イラスト、素敵で可愛いのでぜひ💗 https://fujossy.jp/notes/33671

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