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第673話◇
「まあ、それにしてもさ」
「うん?」
やっと笑いを収めた恭介を見て頷くと、恭介はニヤッと笑って、オレの肩をぽんぽんと叩いた。
「少しは心配もしてたんだけど、全然問題なかったな」
「心配しててくれたの?」
「まあ少しな。どんな広まり方、すんのかなーとは思ってた。あん時は、クラス会でよく集まってる奴らだったから大丈夫だったけど、それ以外の奴らはどう受け取るのかなーってさ」
「そっか……そうだよね」
そういえばそっかー、とうんうんと頷いて、「ありがと心配してくれて」と言うと、恭介はオレを見て、苦笑い。
「ていうか、お前は、全然心配してなかっただろ」
「…………」
あ、バレた。
もう言えたことと、皆の反応でなんだか安心して、玲央の名前は結局言いはしなかったし……あと、玲央が迎えに来てくれて、一緒に帰ったし……。
心配っていうのはしてなかったなあ……。
苦笑いを浮かべると、恭介は「こっちは心配してたのに」と笑う。
「まあでも、必要なかったな」
そう言われて、オレは、首を横に振った。
「心配してくれてたの、嬉しい。ありがとね」
「ま、良かった」
「うん」
頷いてから、水を飲んで時計を見ると、あと十五分。もう少し話してられるなぁ、と思ってると、恭介に「なあ優月」と小声で呼ばれる。
「ん?」
「……あのさぁ」
「うん?」
「……すっげー気になること聞いていい?」
「え、何??」
恭介の顔を見つめて、すぐ、うん、と頷くと。耳もとで、こそ、と囁かれる。
「……プラトニック、じゃないよな?」
「――――……」
数秒たって理解した瞬間、ぱっと恭介を真正面から見つめた。
「……相手、あいつだしそんな訳ないとは思うんだけどさ」
「…………っ」
あ、だめだ、無理。
思った瞬間、かああっと赤くなって、とっさに手の甲で唇のあたりを隠した。
「――――……」
恭介が、うわ真っ赤、と呟いて、顔を引いた。
「ごめんごめん、なんか全然想像できなくてって、想像すんなって話だけど」
「…………っ」
質問らへんを聞き取れてない皆は、まだずっとこそこそ喋ってる恭介と近いオレの方を見てはいるけど、特に何も言ってはこない。
「ごめん、無かったことに……」
恭介が言った瞬間。
「ゆーづき!」
明るい声がして、ムギュ!と首に誰かが抱き付いてきた。
オレ今、真っ赤なんですけど……。
思いながら抱き付いてきた人に目を向けると、声で分かってはいたけど、勇紀だった。
「居た居た、探してたんだよー」
言いながらオレを見下ろして、ぴた、と固まる。
「なに、どしたの? 真っ赤」
「なん、でも……」
言いながらつい恭介の方を見てしまうと、恭介が、悪いと声にせずに唇だけで言いながら、片手をたてて、謝って見せる。
ぷるぷると首を横に振ったところで、勇紀が不思議そうな顔をしながら。
「かわいー、なんでそんな真っ赤なの?」
クスクス笑って言う勇紀。周りの皆は、突然勢いよく現れて、楽しそうに笑ってる勇紀とオレをなんとなく目に映してる感じ。
「なになに、オレが抱き付いたから、赤くなっちゃった?」
絶対そんなこと本気で思ってないんだろうに、そんなことを楽しそうに言う勇紀。その時。
「んな訳ないだろ」
聞き慣れた涼しい声が。呆れたような響きを伴って聞こえてきて。
見上げると、オレを見て、ふ、と笑う玲央が居た。
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