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第674話◇
今オレが一緒にごはんを食べてる友達は、クラスメートも多くて。
玲央だってことを薄々というかもうほぼ確信してる友達も何人か。
あと、真横には今とんでもないこと聞かれた恭介。
そんなことも頭には浮かんでいるのだけれど。
……玲央の顔を見ると、嬉しい気持ちが最優先になってしまう。
「玲央」
「ん」
いまだ顔は熱いのだけど、笑顔で見上げてしまうと、くす、と笑う玲央に見つめ返される。
「どうしたの? あ、勇紀、探してたって言った?」
さっきの勇紀のセリフを思い出して、勇紀を見上げると。
「ん、そう、これこれ」
「ん?」
勇紀が差し出してきたのは、一枚のチラシ。
目を通すと、バンドの練習場所のチラシっぽかった。それを見てる間に、やっと顔の熱が引いてきて、普通になってきたはず。はー良かったと思いながら、「あ、今日の練習場所?」と聞くと。
「そう。ここで今日練習してるからって言いに来たんだよ」
「そうなんだ……あれ? オレがここにいるって分かったの?」
「オレ、こないだオムライスここで食べたから。優月は今四号館とこの食堂に居るんだねーってオレが言ったの」
「そうなんだ」
勇紀の言葉に笑いながら頷くと、すぐ勇紀が近づいてきて、耳元で。
「そしたら、玲央がこれ置きにいこうかなって言いだしてさ」
クスクス笑ってそう言って、少し離れてオレの顔を見て余計に笑う。
「別に写メすればいいのにねー?」
そこは聞こえるように、ぷぷ、と笑いながら言った勇紀にチラッと視線を流した後、玲央がオレを見つめる。
「そこで二十ニ時までだから」
「うん。分かった。オレ、多分もう少し早いと思うから……そっち行く?」
「来れる?」
「うん」
頷きながら、チラシの場所を確認していると。
「ここから電車で三駅だけど、駅から十分位かかるから、駅に着く時間分かったら電話して」
「ん?」
「迎え行く」
「え、大丈夫だよ? 迷わないと思う」
簡単な地図を見ながらそう言って、玲央を見上げると、ふ、と玲央は笑う。
「いいから電話な?」
「? ん、分かった」
頷くと、玲央はオレの背中にぽんぽん、と軽く触れて、「気を付けて、夕飯行ってこいよ」と微笑む。
なんかもう、感心するくらい、キラキラして見える。
「うん。練習頑張ってね」
嬉しくなって頷きながらそう言うと、玲央は、瞳を緩めて「ああ」と笑う。
「じゃあね、優月。またあとでね~」
「うん。バイバイ」
玲央と勇紀に手を振って別れる。目立つ二人が居なくなって、なんとなく静かにしてた皆がなんだかホッとしてる感。……何か言った方がいいのかな……どうしよ。ちょっと困っていると、玲央達が見えなくなってから、恭介が苦笑いを浮かべながらオレを見る。
「……優月」
「ん?」
「イケメンにめっちゃ見られた」
「え?」
「……優月が真っ赤だったからじゃないかなー。しくじったかな」
しくじったとか言いながらも、くっと笑い出して、恭介がオレにだけ聞こえるように続ける。
「ごめんなー、勘違いされてたら」
「え。勘違い……」
「オレと話して真っ赤だったとかさ。……もしかして、あいつって、結構嫉妬する奴??」
「…………嫉妬……?」
……嫉妬……。
ううーん。なんかそんなこと、話した気もするけど……。
考えていると、恭介が可笑しそうに笑った。
「まあなんか、優月を可愛がってんのは、分かった」
「……」
「でもあれだな。もう一人の方も、相当優月のこと好きじゃねえ? 三角関係とか」
んん? 勇紀と玲央とオレが??
「そんな訳ないよ」
ふふ、と笑ってしまうと。
「オレもちょっとそう思った」
どうやら聞き耳を立ててたらしい、反対隣の友達も、前に居た友達も、オレも―と言いだして。
……あれ、もう完全に、玲央は確定で話してるなぁ、皆……と、もうほんとに、苦笑いしか浮かばない。
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