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第678話◇

 なんか言いすぎちゃったかなと困ってるオレを見て、智也がクスクス笑う。 「色んな玲央が、全部。……何?」  目が合うと、なんだかすごく楽しそうに微笑まれて、なんか顔が熱くなってきた。 「そうだよ、優月、色んな玲央が、なぁに?」  ふふ、と美咲も笑う。  もう、ふたりとも面白がってるし……。 「……バレバレって言ったじゃん、美咲。分かってるんでしょ」  オレかそう言うと、美咲はクスクス笑いながら、「でも違うかもしれないしね? 言ってくれないと分かんないかも」とか言って、じーと見つめてくる。黙ってても話が進んでくれそうもないので、仕方なく。 「……全部……大好き、て……」  うう。恥ずかしいな。何言ってんだ、オレってば。  そう思いながら言うと。頑張って言ったのに、二人はまた顔を見合わせて、クスクス笑い出す。 「ていうか、好き、じゃなくて、大好き、だもんね」 「恥ずかしがってるくせに、大好きって言っちゃうんだな、優月」  可笑しそうに笑われながら言われて、確かに、と気づいて、なんか余計に恥ずかしい。 「なんかごめん……」  なんかオレ、すんごく惚気てるような気がしてきたような……。  なんだかすごく顔が熱いので、手の甲で冷やしていると。 「……まあでもなんか、今んとこ全然大丈夫っていうか……なんかどこのカップルより、甘々で過ごしてそうな気がしてきた」  美咲が呆れたように。でも、楽しそうに言って、笑う。 「いつか私も、神月と優月が一緒にいるとこに行きたいな」 「え。あ、ほんとに?」 「見てみたいよ。あほみたいに、ラブラブなとこ」 「え。あほみたい……じゃないよね??」  智也に救いを求めるけど、ぷ、と笑った智也が、さぁ……と明後日の方向を見てしまう。 「冗談よ」  楽しそうに笑う美咲が、オレをまっすぐに見つめる。 「はい、優月」  美咲は、ジュースの入ったグラスを持って、オレの方に差し出した。  自然とオレも自分のグラスを持って、美咲の方に。  でも、なんのつもりなのか分からなくて、少し首を傾げたら。 「改めておめでと。良かったね、初、恋人」 「――――……」  美咲がちょっと照れ臭そうに、でもすごく、綺麗な笑顔で言うものだから。  ありがと、と言いかけて。……なんだか視界がにじんだ。 「あ、りがと」  でもなんとかそう言うと、美咲は苦笑いを浮かべながら、手を少し伸ばして、カチンとグラスを合わせてくれた。 「ほんと。おめでと、だよな?」  智也も隣から、グラスを合わせてくれたのだけど、すぐに笑いながら、オレの髪をぐしゃぐしゃに撫でた。 「また泣いてるし。いつまでそんな素直に泣くのかな、優月」 「……泣いてないよ」  ちょっと、滲んだだけだもんね。  浮かんだ涙を、瞬きをしてごまかすと、二人は顔を見合わせてる。 「玲央の前でも、泣いちゃう?」  智也にそんな風に聞かれて。 「う。……た、たまに……ちょっとだけ……」 「嘘だろ。この感じで、ちょくちょく泣いてるのかなって気がする」  智也に突っ込まれて、否定しきれないでいると。あー、分かる、と美咲が笑う。 「そういうの、あーいうタイプには、すごーく珍しくて可愛く見えるのかもね」 「そうかも。だってあいつの周りに居た女子って、綺麗な感じだったけど……こんな風に泣く優月みたいなのは、居なかっただろうし」 「まあね、優月を可愛いって思ってくれてるなら、いいけど」 「あ、かなり、デロデロに甘いよ、玲央。周りの仲良したちがちょっと引きながらからかってた」  クスクス笑いながら、智也が言うと。 「そうなの? なんかほんとに、想像ができないなぁ、ますます一緒のとこ、見たいかも」  言いながら、美咲がオレを見つめる。

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