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第680話◇

 運命、かぁ。  運命。  ふむふむ。運命か。  ……人の意志関係ないとか……抗えないとか。そういうのかな。  玲央とオレが、運命……。  少し考えてから、オレは、二人を見つめた。 「……出会ったのは運命かなあ。接点も無さそうな人だから。……でも今、毎日一緒にいるのは、なんか……普通な感じ、かな」 「普通?」 「今はただ一緒に居たいから居るっていうか。運命的な感じじゃないよ。もうなんか、普通にご飯食べて、生活して……学校きて、みたいな。すごく普通の毎日なの」 「普通、かー」  ふふ、と美咲が笑う。 「……もしこれで、死ぬまで、ずーっと一緒に居られたら……その時、運命だったかも、て言えるかも」  思うままそう言うと、なんだか笑みが零れた。 「オレ、その内、誰か女の子と、運命みたいに会うのかなーって思ってたんだけどね」 「あ、言ってたような気がする」  オレのセリフに、二人はクスクス笑う。 「だから、全然、彼女出来なくても焦ってなかったというか……」 「優月がそんなので焦ってる姿が全然想像できない」 「同じく……」  美咲と智也がまた笑いながら、オレを見る。まあなんか、言われてることは分かる気がする……。 「あ、はい、野菜とお肉もできた。はいはい、食べて」 「ありがと」  美咲にお皿にのせてもらって、ゴマダレをつけて食べる。 「美味しー」 「ねえ、そういえばさっき、神月が朝ごはん作ってるとか、さらっと言ってたけど」  美咲が何だか不思議そうに眉を顰めつつ。 「なんか、らしくなさ過ぎて、謎なんだけど」 「……んーそれがねぇ……」 「ん?」 「……なんでも作れちゃう感じ。習ってたんだって。いっぱいやってた習い事の内のいっこだったみたい」 「はー……さすが、お坊ちゃま、て感じ?」  美咲の言い方に苦笑いしつつ。 「もともと器用な人なんだと思うんだ。なんか、色んなことができる気がする。作り方、教えてもらったりしてるよ。すごく美味しいの」 「へーそうなんだ」  玲央の作ってくれるものを思い出して、なんだかほくほくとした気分でそう言ったら、智也が感心したように返事をして、それから、オレを見て、なんだかすごくほっとしたように笑った。 「……なんかほんと。優月のそののどかな顔見ると、ほっとする」 「――――……」  あ、いや違くて……と、智也はとっさに言って、それから、苦笑を浮かべた。 「オレ、優月のことは優月が決めればいいって思ってるし、玲央のこともさ、玲央を直接見て、優月を大好きそうなのも分かったしさ。だから、心配するつもりはないんだけどね」 「うん」 「……なんか、優月が……運命じゃなくて、ちゃんと毎日ご飯一緒に作ったりしながら、ただ一緒に居るって聞いてさ。でもって、それが、ちゃんと楽しそうだなーと思ったら、なんか……ほっとしたんだよね」  腕を上げて、後頭部を掻きながら、智也が苦笑いで美咲に視線を向ける。 「心配しないでいいとか美咲に言いながら、やっぱり少しは心配してたのかも」 「心配だよね、私たちはさ」 「……かもね」  二人は、顔を見合わせて、クスクス笑い合ってる。 「……ありがと。心配してくれる気持ちも、すごい分かってる。……オレも、玲央の噂だけ聞いてて、二人がそういう人と付き合うって言ったら多分心配はするから、分かる……」  そう言うと、そっか、という顔で、二人は苦笑い。 「前、美咲がさ、可愛い女の子と付き合うとか言うなら祝うのに、みたいなこと言ったでしょ」 「……うん。言ったと思う」 「それもね。意味は、分かる」  言って、智也と美咲を見つめると、オレは肩を竦めた。 「なんか心配かけてごめんね。……ありがとね。でも、大丈夫だと思う、オレ。もしこのまま進んで。もしいつか、別れるとかなってもね」  二人は、じっとオレを見て、何も言わない。 「……もし、別れるとしても。後悔はしないと思う。付き合えてよかったって、思うと思う。だから」  まだ、何も言わない二人。 「だからね、オレ、大丈夫だよ。毎日、すごく楽しいから」  言い切って、二人を順番に見つめたら。  二人はにっこり笑いながら「分かった」とハモって、また顔を見合わせて笑った。    

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