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第682話◇

 美咲が、それにしてもさ、と呟いて、くすくす笑い出す。 「なんか、久しぶりに昔のこと思い出しちゃったね。優月が泣いてたのは二年生位までだっけ?」 「いや? もっと大きくなってもたまに泣いてたよな? 何でだっけ?」 「え、オレ大きくなっても泣いてたっけ……?」 「んー……感動しても泣くしな。あ、誰か引っ越すとかでも泣いてたよな」 「忙しいよね、優月の感情って」 「多分、中学からは泣くの見なくなったかな」  あ、良かった。さすがに泣かなくなったのか。良かった。  なんか最近、オレ、玲央の前でよく泣いちゃうけど。……なんか好きすぎて感情激しすぎちゃってるのかなぁ? 「なんだかんだ可愛がってきた我が子を、お嫁にだす気分、かも」 「ん? ……オレのこと? お嫁?」  ちょっとトリップしてたオレは、美咲のセリフを理解すると同時に苦笑。 「うん、そんな感じ。智也は、そんな気分じゃない?」 「あー……なんか分かるかも」 「え、智也、分かるの?」 「ん。分かる」 「あと、あたしは、うまくいかなかったらいつでも帰っておいで、とも思ってるかも」  あははー、と笑う美咲に、智也がめちゃくちゃ苦笑いを浮かべている。 「もー、そんなすぐ帰らないから。……いや、帰らないようにするから」  オレがそう言うと、二人は、クスクス笑って頷いた。 「あ、そうだ」  美咲がそう言ってメニューを開く。 「ね、デザートもこの中なら何でも頼めるよ」  美咲がメニューを指さしながら、オレ達にメニューを向ける。 「まだお肉とか食べたいなら頼んでね」 「オレ、もうお腹いっぱいだからお肉はいいや。智也は?」 「オレも。結構満腹」 「でも、シャーベット食べたいな」  デザート選びでわいわい話していると、スマホが震えた。玲央からだった。 『夕飯終わって、少し演奏したとこ。優月は?』 「今からデザートだよ」  にこにこのスタンプと一緒送ると、「何食べるの?」と入ってくる。 「レモンのシャーベット」 『うまそーだな。ゆっくりしといで』 「うん。食べたら見に行く。頑張ってね」  そう入れると、笑顔のOKスタンプが入ってきた。 『店出る時教えて。あと電車の到着時間分かったら』 「うん。分かってるよー」  やり取りを終えて、スマホを置くと、二人が何だかクスクス笑ってる。 「優月、相手、玲央?」 「え。うん。そう。何で?」 「なんかもう、ほんと嬉しそうにスマホ触ってんのな?」   「え……そう、だった?」 「うん。そーだった」  美咲にも言われて。 「なんかそれ、最近、学校の皆にもよく言われる」 「あ、そうなの? よく言われてるんだ。……ていうかそんな顔してたら言われるわよね」 「オレ、笑ってる? ちょっと怖い?」  ドキドキしながらそう聞いてみると。 「んー? 怖いとかじゃないのよね。別にすごく笑ってる訳でもないし。なんか、嬉しそうだなーって思う感じ」 「つられて笑っちゃうって話かもな」 「あ、そんな感じ」    あはは、と二人が笑いながら言ってるのを聞いて、オレ、そんなに顔に出ちゃってるんだなぁ、と、自分に少し呆れる。  でも嬉しいから、しょうがないのかなぁ。  ……いやでも、ちょっとは顔、引締めないとかな。

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