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第684話◇

 ◇ ◇ ◇ ◇  その後、智也と美咲の近況の話も色々聞いてから店を出て、二人と別れて駅のホームに立つ。スマホを見ると、玲央に「店を出るよ」と送ったメッセージに「了解」と返ってきていたので、十分後に電車に乗るよ、と追加で送った。  智也と美咲。今日話して、改めて、色々感じたような気がする。  いろんな友達、居るけど……やっぱり、小さい頃を知ってて、家族や蒼くんのことや、中学も一緒で、高校の友達も知ってるってなると。  オレの人生、ほぼ全部知ってるんじゃないかな。  お互い色んなこと知ってて、改めて話さなくても、昔のことと話が繋がったりするのって……当たり前みたいにやってるけど、すごく貴重、なんだと思う。  その特別な、二人が。  玲央とのこと、嫌がらなくて、ほんと良かったな。  あの二人に反対されたら、多分、誰に嫌がられるより、ちょっと辛かったかもなぁ。反対されても玲央とのことやめたどうかは分からないけど。今みたいに、幸せな感覚ではいられなかったと思うし。  意外と最初から否定はしない感じだった智也も、やっぱり心配してくれちゃってたんだなーって分かって、なんかほんと……ありがたいなというか。心配させてごめんね、とも思うというか……。んー……。  電車を待ちながら、ぼんやり考えていると、スマホが震えた。 『改札出たとこで待ってる』  玲央からのメッセージ。「ありがと」そう入れると、なんだか、気持ちがほんわか暖かい。  ……色んな人をびっくりさせて、それぞれ色々な感じで心配してもらっちゃってるのかも、しれないけど。  少なくとも、オレは。  玲央と会ってから今まで。自分にとって、今までにないくらい、大事な時を過ごしてる気がする。  だから。色んな人に、心配、かけちゃってるけど。  ……このまま、玲央といられたらいいなって思う。  このまま、オレも、玲央も、二人で楽しそうに居られたら、きっと、色んな意味で心配かけちゃってる人達も、心配しないで居られるようになってくれるかもしれないし。  そうなったら。いいなぁ。  なんとなくぼんやりとそんなふうなことを考えていると。またスマホが震えた。 『今一人? 電車待ってるとこ?』 「うん、そうだよ。あと二分位。玲央は?」 『もうすぐ駅つく』 「待たせちゃうね、ごめんね」 『いいよ。オレが来たくて来てんだし』  …………。  あ。  絶対今オレ、顔、緩んじゃってる気がする。  今、ホームで列の一番前だし。向こう側、ちょっと遠いし、平気かな……。 「玲央」 『ん?』 「大好き。早く会いたいな」  なんかもう飛んでいきたいな。  そう思いながら入れた言葉は、すぐに既読がついたのだけれど。  あれ。すぐ返ってこない。  玲央の返信を待ってる間に、電車がホームに入ってきた。  音を立ててドアが開いて降りる人を待ってから中に入る。ドアの脇で窓の方を向いた時、スマホが震えた。 『急にそんなの入ってくると、すっげー照れるんだけど。……会ったら、キスしてい?』  ――――……。  会うのは駅の改札だから、キスは、だめかなぁ……。なんてことを思うのだけれど。なんか嬉しい。  ふと、目の前の電車のガラスに映る自分が。  ほんと、なんか。  ……幸せそうに、見えてしまって。  うわー。……なんか。  これか。皆が言ってるの。  と納得してしまって。急に恥ずかしくなる。  ふーーー、と小さく息を吐いて、ちょっと俯きながら。 「人、居ないとこでしてください」  というメッセージと、お願いしてる姿のスタンプを送ると。   『どうだろ? 我慢できたらな?』  なんて入ってきて。  今度は、顔は上げず鏡は見ず。もいっかい、深呼吸。  ダメだ。  好きすぎて。  どーしたって、嬉しいんだもん。

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