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第686話◇

「早くいこ」  そう言ってオレを振り返りながら差し出された玲央の手。  そっと触れると、ぎゅと、繋がれる。  安心する。手をつなぐと。  玲央の手、あったかい。 「何、話してきた?」 「んー。玲央のこと」 「どんな?」 「いっぱい。ほんとに色々、玲央のこと」 「例えば?」 「んー……とにかくいっぱい玲央のこと」  ほんとに玲央のことばかり話してたような気がするなーと思いながら笑うと、なんだそれ、と玲央も笑う。  幸せ気分で歩き出しながら、智也と美咲と話していたことを、のんびり話していく。 「ふーん……じゃあ、智也も少しは心配してたんだな」 「そうみたい」 「今日話してきて、安心したって言われたなら、良かったな」 「うん」 「……にしてもさ。なんかあれだなー?」  玲央はクスクス笑いながら、オレを見下ろす。 「優月のまわりにはさ」 「うん?」 「……オレが優月を大事にしないと、めちゃくちゃ怒りそうな人達が、たくさんいるよな?」 「……んー。そう?」 「そんな気がする」 「でも、それ言ったら、玲央も……」 「オレとは違うんだよなー」 「そう……?」  玲央の言葉の意味を考えながら、玲央を見上げると。  玲央は、分かんない?と聞いてくるので、うん、と頷く。 「とりあえず、蒼さんにはめちゃくちゃ怒られそうだし」 「蒼くん? そうかなぁ、別に怒んないと思うけど……」 「智也と美咲も。……特に、美咲。すげー怒りそう」 「あ。美咲は……そうかも?」  何だか今想像がついた。クスクス笑ってしまう。 「一樹と樹里も絶対怒りそう」 「えー怒るかなあ……」 「怒るよ、絶対。ゆづ兄いじめるなー、みたいに」 「……あはは。想像すると可愛い」 「多分お母さんは怒りはしない気がするけど」 「あー……そうかも」 「多分、久先生はオレに直接は言わないけど、心の中で怒ってそう。で、じーちゃんに伝わって、じーちゃんからオレにくるかな」 「何それ。どんな想像……」  玲央、へんなこと言ってるーと見上げると、玲央は苦笑。 「冗談じゃないんだけどなー?」 「え、冗談じゃないの?」 「例えば、オレが浮気して、優月泣かしてみ? ……まず勇紀に蹴られるだろうし」 「蹴るかな??」 「絶対だと思うけど。稔もセットで来そうだし」 「そう??」 「絶対そー」 「……でも、たとえば、じゃあオレが浮気したとしたらさ。きっと皆、怒るんじゃないのかな、何してんだって」  オレが言うと、玲央は、少しの間考えて、いや、と首を振る。 「その時はきっと、優月に浮気させるようなオレが悪いって、怒られる気がする」 「えええ? ……それで玲央を怒ったりしないと思うんだけど……」 「いーや、絶対オレが文句言われる」  何だか面白そうに笑いながら、玲央はオレを見つめる。 「まあ最後のは冗談半分だけど……でもなんかありそうってくらいにさ」 「ありそう、かなぁ?」 「そう思うくらい、優月のこと、大事にしてる奴が多いなーて思うんだよね」 「どうかな……うーん……?」  首を傾げながら玲央を見上げて、なんだか可笑しくてクスクス笑ってると。 「まあでも」 「ん?」 「オレが一番、大事にするから、今のは絶対ありえない想像なんだけど」 「――――……」  急にそんなことを言いながら、手をぎゅ、と握ったりしてくれちゃうので。  ちょっと呆けて、玲央を見つめてしまう。     (2023/6/13) ふと、 読者さまも玲央に怒るかな…とか思ったり(´∀`*)ウフフ。

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