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第687話◇
「なんかさ、玲央、ほんとにね」
「ん?」
「へんなこと言ってるなーと思ったら、急にそんなこと言ってくれて……なんか照れちゃうのだけど」
「へんなことって」
苦笑の玲央は、
「でも、ほんとに全部、そう思ってるんだよな」
ふ、と笑んで、オレを斜めに見つめる。それを見上げてると、自然と笑みが零れる。
「じゃあオレも。玲央のこと大事にしてる人の中で、一番になりたいな」
そう言って、うんうん頷いていると、玲央は、更ににっこりしてくれる。
話してるだけで、なんだかとっても幸せな気持ちになっていたら、繋いだ手を離されて、そのまま頭を抱き寄せるような感じでクシャクシャ撫でられた。
いつもいつも、優しい触れ方が。
……大好きすぎる。もう内心、ほこほこ、幸せに浸りまくっていると、あるビルの前で、玲央が足を止めた。
「ついた。ここだよ」
「あ、うん」
思ってたような、なんとなく予想してた派手なビルとかではなくて、普通のビル。地下へ続く階段を、玲央が「こっち」と進んでいく。
「階段狭いから、足元、気をつけろよ」
「うん」
細めの階段を玲央の後をついて下りていく。階段を下り終えたところに、受付みたいなところがあって、玲央が「戻りました」と声をかけてる。そこに居た少し年上っぽい男の人が「おかえりなさい」と言いながら、ちらっとこっちを見る。
この人もバンドとかする人かなーという、ちょっと派手な感じの人。
こういうとこって、受付の人とかも、こういう感じなのかな~と思いながら通り過ぎると、すれ違うグループの人達も、なんだか独特に、派手。
お疲れ様ー、みたいな声を掛け合ってる。オレはなんとなく、ぺこ、と頭を下げておいた。
「……玲央、知ってる人?」
少し離れてからそう言うと、「知らない」と玲央が笑う。
「なんとなく挨拶するだけ。バンドやってる仲間、みたいな感じ。割とどこでもそうだよ」
……わー。なんかカッコいい。「バンドやってる仲間」
思いながら頷いていると、玲央はオレを見て、クスクス笑った。
「何、キラキラした顔して」
「……ん。してる?」
「してる」
「んー……カッコいいなーて思ってた」
「……何が?」
ふ、と笑われて聞かれる。
「んー……何ていうか……玲央が、知らない人達のことも、バンドやってる仲間とか言ってると、なんとなく……カッコいい気がして」
「そう?」
「音楽やってる人たちって、なんか皆、独特にカッコイイし」
「そう? 色んな奴いるけど。変わった奴も多いかも」
「でも、やっぱりカッコイイ気がする。あ、でも、玲央がダントツでカッコいいんだけど」
ふふ、と笑うと。
玲央は、クスクス笑って、オレの手を引いた。
廊下の途中にある部屋に入って、誰も居ないことを確認すると、玲央は部屋に鍵をかけた。
「ここ、着替えたりする部屋。使う時、鍵かけてもオッケーでさ。ノックされたら開けるけど」
「うん。あ、着替えるの? オレ、出てる?」
玲央を見上げて聞くと、玲央は面白そうな顔でオレを見る。
「ていうか、今更、着替えの時出てくの?」
「んと……出てた方がよければ……」
「今更だよな? 裸、いっつも見てるじゃんか」
「――――……」
なんだかとてもからかうような視線で、まっすぐ見つめられて言われると、なんだかすごく恥ずかしいのだけど。
「ていうかさ……」
「……?」
まだ何か……? ドキドキしてると。
「ほんとにオレ、今から着替えると思ってんの?」
「……??」
「何に着替えると思ってる?」
「……バンドの衣装とか?」
「ああ、なるほど……まあ本番の時は着るけど、練習だから」
「あ、そっか。じゃ何でここ……?」
「……さっき、言ったろ?」
腕を引かれて、ロッカーに背中を押し付けられる。
玲央の笑みを見上げていたら、ふわ、と頬に手が触れた。その瞬間。
「あ」
さっき、キスしようって、言ってたの、ここのこと?
思って、急にもっとドキドキしながら玲央を見上げた瞬間。玲央が、ふ、と微笑んで。
「可愛いなぁ、もう……すごい、ドキドキしてる?」
ぷに、と頬をつままれて、ここでキス、してくれるって確信。
ドキドキが最高潮のまま、玲央を見つめるオレに。
玲央の顔が近づいてきて。
唇が、重なってきた。
(2023/6/14)
昨日眠いまま書いて更新したら何だか色々足りない気がして💦
書き直して再アップです。
読んでる方はもしかしたら気づかない自己満足かもしれないですが。
消えた?と思ってる方居たらすみません。
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(全部の投稿サイトでお知らせ書くの結構大変なのでTwitterで集約のつもりでいます💦)
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