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第688話◇
「……ん」
重なった唇が、触れては離れ、また重なる。
そのまま、頬にもキスされて、ぎゅ、と抱き締められる。
なんか、キス、可愛い。
ちゅっちゅされてる感じ。
思わず笑って、「……ふふ」と声が出てしまった。
「何笑ってンの」
そう言う玲央の声も、笑みを含んでて、すごく優しい。
大好き、玲央。
腕を玲央の背に回して、きゅ、と抱き付く。
「……優月」
頬に触れた玲央の手に上向かされて、ちゅ、とキスされる。
「……ほんとはもっとちゃんとしたキスしたいんだけど」
言いながら、また頬にキスされる。
「ちゃんとキスすると、優月が可愛くなっちゃうからさ。皆のとこ行くから、そんなの見せたくねーし……」
至近距離で見つめられて、優しい瞳でそんな風に言われると。
……言われてることは、可愛くなっちゃう?と不思議なことなのだけど、でも。優しい玲央が、好きすぎて。
「……玲央」
玲央の首に手をかけて、くい、と引き寄せて、唇を重ねた。
「――――……」
今もう、玲央からたくさんキスしていたのに、オレが一度キスしただけで、玲央は、なんだかとっても嬉しそうに笑う。
「ふ。かわいー」
ちゅ、とまた頬にキスされる。
「んー……離したくないけど……」
むぎゅ、と腕の中に取り込まれて、髪にすりすり頬を寄せられる。
「玲央……」
何だか笑ってしまう。
……なんか、もう、玲央の方が可愛いんだけどな。
「……仕方ない。行くか」
「ん」
最後、とばかりに頬にキスされて、すり、と手で頬を撫でられる。
鍵を外してドアを開けた玲央が振り返ってオレを見つめる。部屋を出て並んで歩き出すと、玲央がクスクス笑う。
「なんか……」
「ん?」
「――……ずっと一緒に居たがって、うるさい? オレ」
苦笑いでそんな事を言って、オレを見つめてくる。
「うるさい……訳ないよ?」
「そ? ならいいけど」
「何でそんなこと聞くの?」
「なんか……冷静に自分のしてること思うとさ」
「うん」
「一緒に住みたいってオレのとこ来てもらって、朝晩絶対一緒なのに、学校でも会いに行って……今もさ、ここに来ないで優月は家に帰ってくれれてもいいはずなのに、来てもらって……とかさ」
言いながら、玲央が、んー、と考え始める。
「なんか、自分でもすげー意味わかんないなと思ってさ。優月、やじゃない?」
「全然やじゃない」
「めちゃくちゃ即答だけど」
ぷぷ、と笑う玲央に。
「オレも一緒に居たいから。嬉しいし」
思うことをそのまま伝えると、玲央はふ、とオレを見つめて。
「甘やかしてると、もっとオレがすごくなったらどーする?」
そんな風に聞かれたけど。
「んー……別に。いい、かな……」
「いいの?」
「うん。いいと思う」
玲央はオレを見下ろして、そっか、と笑うと、よしよしと頭を撫でた。
「ここだよ」
ドアを開けながら玲央がオレを振り返るので、中に入ると皆が見えた。
「お邪魔します」
「あ、優月ーいらっしゃーい」
鳴っていた楽器の音が止まって、勇紀と甲斐と颯也がこっちを見て笑顔。
「優月、こっち座ってな」
部屋の端のソファに案内される。勇紀が近づいてきて、テーブルに置いてあったお茶を一口飲みながら、オレを見た。
「美味しいもの食べてきた?」
「しゃぶしゃぶの食べ放題だった」
「おーいいね、うまそー。大変だったね、こっちまで」
「電車ですぐだし」
そう答えると、いやいや、と勇紀が肩を竦める。
「玲央がどーしてもこっちに来てほしいみたいでさー。ほんと笑っちゃうよねー?」
ぷくく、と勇紀が笑いながら言うと、少し離れていた玲央が、紙コップを持って戻ってきた。
「カフェオレ。ゆっくり聴いてて」
「うん。ありがと」
「ん」
ふ、と笑んで、ギターを手にした玲央を見ながら、勇紀が固まってる。
「勇紀?」
オレが聞くと、勇紀は苦笑い。
「もう甘々なのは嫌というほど分かってるんだけど……ついついガン見してしまうんだよねーオレ……」
笑いながら言う勇紀をチラ見して、玲央が「早くやるぞ」と一言。
「早くやるぞって、オレ達が待ってたんですけど」
と勇紀は苦笑いしながらオレに「じゃね、優月」と言って、玲央の後をついてく。
「悪い、待たせた」
玲央がそう言いながら、甲斐と颯也の方に向かうと。
「つか迎えだけなのに遅くね?」
「またどっかでいちゃついてたんだろ」
「してねーし。……少ししか」
颯也と甲斐に答えた玲央の言葉に、皆が脱力しながら、ふざけんなーとか言ってるのを聞きながら。
……ほんと、仲良いなぁ……。
オレにとっての智也と美咲が、玲央にとっての皆だよね。
そう思うと、なんだかほっこりして、笑みが浮かぶ。
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