694 / 856
第693話◇
家に帰ってきて、一緒にシャワーを浴びた。
お互いドライヤーを掛け合って、全部完了。玲央がドライヤーをしまいながら、あ、とオレの顔を見た。
「明日優月んち行くだろ?」
「あ、ほんとに行くの?」
「行く。アルバム見たい」
そんな風に言って笑う玲央に、オレは微笑んでしまう。
「オレ普通だと思うけど」
「めちゃくちゃ可愛かったけど? つるつるしてのも、最高可愛い」
「つるつる……」
「顔もすげー可愛いよなー……天使に見えてたんじゃないのか、お母さんたち」
「んー……玲央の目ってどうなってるのかなー」
ふざけて言ってクスクス笑うと。玲央が少しだけ黙った後。
「優月だと思うと全部可愛いのかも」
「――――」
……言葉に詰まるしかないのだけど。そう思いながら、玲央を見上げると。
ん?とオレを見つめてくるお風呂あがりの玲央は、髪もふわふわで。玲央こそ、いつもよりちょっと可愛く見える。
「…………」
そーと玲央に近づいて、玲央の腰辺りの服をきゅと握りしめたまま、見上げる。そのまま、ゆっくり顔を近づけて、微笑んでる唇に、ちゅ、とキスをした。
「お風呂上り、ちょっと可愛い……」
「は?」
玲央は苦笑。可愛いっていやなのかな。
でも、アクセサリーとかもついてなくて、髪も乾かしたまま少し乱れてほわほわしてて……どうしても、可愛く見えちゃう。
「可愛いって、言われたこと、ない?」
「……無いな」
また苦笑。
「……嫌だったりする?」
じっと見上げると、玲央はまっすぐオレを見つめて、それから、ふ、と笑んだ。
「オレに可愛いって言ってる優月が可愛いから、許す」
「ん?」
どういうこと?
はて?と首をかしげていると、玲央は、ぷ、と笑った。
「優月限定で、いいよ」
「……うん。ありがと」
良く分からないけど、玲央が楽しそうなのでよしとしよう。
「何飲む、優月」
「ん、今は麦茶いれる」
「コーヒーとかは?」
「さっきも飲んだし、今いいや」
「了解」
二人でリビングに向かいながら、そんなやり取り。
カウンターのところでオレがコップを出して、玲央が麦茶を注ぐ。
隣で、麦茶を飲んだ玲央を何気なく見たら。
麦茶で濡れた唇が、綺麗に見えて。なんだか、どき、とする。
「玲央玲央」
「ん?」
「……ちゅってしたい」
「――――……」
なんかその濡れた唇に、触れたい。
そう思って言ったら、目の前の玲央がちょっと固まった。あれ?と思った次の瞬間。
腕を引かれて、抱き込まれて、深く深くキスされた。
「んん……っ」
ち、違うー、こんなんじゃなくて、ちゅ、て……。
しかもオレから……。
そう思うんだけど、急に深すぎる玲央のキスに、ただなすがまま。
ともだちにシェアしよう!