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第693話◇

 家に帰ってきて、一緒にシャワーを浴びた。  お互いドライヤーを掛け合って、全部完了。玲央がドライヤーをしまいながら、あ、とオレの顔を見た。 「明日優月んち行くだろ?」 「あ、ほんとに行くの?」 「行く。アルバム見たい」  そんな風に言って笑う玲央に、オレは微笑んでしまう。 「オレ普通だと思うけど」 「めちゃくちゃ可愛かったけど? つるつるしてのも、最高可愛い」 「つるつる……」 「顔もすげー可愛いよなー……天使に見えてたんじゃないのか、お母さんたち」 「んー……玲央の目ってどうなってるのかなー」  ふざけて言ってクスクス笑うと。玲央が少しだけ黙った後。 「優月だと思うと全部可愛いのかも」 「――――」  ……言葉に詰まるしかないのだけど。そう思いながら、玲央を見上げると。  ん?とオレを見つめてくるお風呂あがりの玲央は、髪もふわふわで。玲央こそ、いつもよりちょっと可愛く見える。 「…………」  そーと玲央に近づいて、玲央の腰辺りの服をきゅと握りしめたまま、見上げる。そのまま、ゆっくり顔を近づけて、微笑んでる唇に、ちゅ、とキスをした。 「お風呂上り、ちょっと可愛い……」 「は?」  玲央は苦笑。可愛いっていやなのかな。  でも、アクセサリーとかもついてなくて、髪も乾かしたまま少し乱れてほわほわしてて……どうしても、可愛く見えちゃう。 「可愛いって、言われたこと、ない?」 「……無いな」  また苦笑。 「……嫌だったりする?」  じっと見上げると、玲央はまっすぐオレを見つめて、それから、ふ、と笑んだ。 「オレに可愛いって言ってる優月が可愛いから、許す」 「ん?」  どういうこと?  はて?と首をかしげていると、玲央は、ぷ、と笑った。 「優月限定で、いいよ」 「……うん。ありがと」  良く分からないけど、玲央が楽しそうなのでよしとしよう。 「何飲む、優月」 「ん、今は麦茶いれる」 「コーヒーとかは?」 「さっきも飲んだし、今いいや」 「了解」  二人でリビングに向かいながら、そんなやり取り。  カウンターのところでオレがコップを出して、玲央が麦茶を注ぐ。  隣で、麦茶を飲んだ玲央を何気なく見たら。  麦茶で濡れた唇が、綺麗に見えて。なんだか、どき、とする。 「玲央玲央」 「ん?」 「……ちゅってしたい」 「――――……」  なんかその濡れた唇に、触れたい。  そう思って言ったら、目の前の玲央がちょっと固まった。あれ?と思った次の瞬間。  腕を引かれて、抱き込まれて、深く深くキスされた。 「んん……っ」  ち、違うー、こんなんじゃなくて、ちゅ、て……。  しかもオレから……。  そう思うんだけど、急に深すぎる玲央のキスに、ただなすがまま。  

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