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第700話◇
朝。
いつも迷う。優月を起こすか、寝かせとくか。
一緒に起きたいっていうしな。まあそれも分からなくはないけど。
「……」
……かわい。
スヤスヤ寝てる寝顔が可愛いコンテストとかあったら、優勝じゃねーかな。
ぼーっと優月を見てたら、ふとそんなことが頭に浮かんでいて、自分でもさすがに少しどうかなと思って、何度か瞬き。
……ああ、でもすげー可愛い。
ふ、と顔が綻んでしまう。
その瞬間。優月が静かに少しだけ瞳を開けた。まだぼー、としたまま。そのままゆっくりと瞳を開けながら、上を見てきて、オレとばっちり目があった。
「……あれ」
そう言ってすぐ。
めちゃくちゃ嬉しそうに、ふんわりと微笑んで、玲央、と呟く。
「起きてたの……?」
寝起きの、少し掠れた声で言って、すり、と抱きついてきた。
――――……これは、あれかも。
寝顔が可愛いコンテストだけじゃなくて、寝起きが可愛いコンテストも優勝に違いないな。
「……おはよ、優月」
さすがに言うのは憚られて、抱き締めながら挨拶だけ口にすると。
おはよ、と言いながら、すりすり、頬に髪の毛が触れてくる。
……なんで、こんな、可愛いか。
この優月を誰にも見せたくないから語り合うことは出来ないのだけれど、誰かと語り合いたくてしょうがない。
「なー、優月」
「……んー?」
のんびり声をかけると、のんびり返ってくる、声。
少し笑ってしまいながら、その髪の毛を撫でながら、額にキスした。
「……ずっとオレと居て」
「――――……」
きょと、とオレを見上げてから、優月はまた、ふわ、と笑った。
「どうして、急に、言うの?」
「……急にじゃないけど。昨夜も、今も、なんかそう思って」
「そうなんだ……」
じっとオレを見つめていた優月が、また、嬉しそうに微笑む。
「オレも昨夜ね」
「ん?」
「玲央とずっと居ようって思いながら、寝たの」
「……そっか」
「もし何かあったとしても……玲央と話しながら、居られる限り、居たいなって、思ってたんだよね」
ふふ、と笑って、オレをまたまっすぐ見つめる。
「……だから、なんか……嬉しい」
可愛くて、ちゅ、と頬にキスする。
……起きてても可愛いコンテストでも優勝かも。
そんな風に思う自分を、朝からどうかしてんな、オレ。と思うのだけど。
可愛いと思う気持ちは、どうにもしようがない気がする。
「今日は優月んち、行こうな」
「うん……」
「すげー楽しみ」
「……つるつるだから?」
笑いを含んでる優月の声に、ぷ、と笑ってしまう。
「そっちも楽しみだけど……中学とか、高校の優月、見たい」
「あ、それはオレも、玲央の見たい。……高校、ブレザーだった?」
「ん、ブレザー」
「どんな? 何色?」
「上が紺で、下がグレー。チェックのやつ。ネクタイはワインレッドのストライプ、かな」
「ワインレッドってかっこいいね」
「まあ言い方だけど。えんじって言えばえんじ」
「ちょっと違う感じになるね」
「だろ?」
クスクス笑い合う。
「玲央、カッコいいだろうなぁ、制服姿見たいー」
「高校の制服はあるかも。実家に」
「えっ」
「……もー、コスプレになりそうだけど」
「着れそう?」
「少し短くなってそうだけど。優月は? 何着てた?」
「中学も高校も、学ランだった。ブレザー着てみたかったなあ」
「へー。なるほど……」
学ランか。……いいかも。
「ん?」
優月が、きょとん、としてオレを見つめている。
「もう制服ない?」
「え。あー……高校のはあるかも?」
「今度学ラン着て?」
「え。オレもちょっともう変かもよ……??」
首をかしげてる優月に、ふ、と笑ってしまう。
「制服脱がすの、いいよな」
「……っっ」
ぼぼぼ。
また一瞬で赤くなる。
予想通りの反応。
あー可愛い。
◇ ◇ ◇ ◇
(2023/7/26)
フジョさんでは700話めでした💕
いつもありがとうございます♡
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