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第706話◇
【side*優月】
玲央と居ると、すぐ赤くなっちゃうオレは、ほんと、どうかしてるとしか思えない。あと、涙腺ももろくなっちゃうし。
すぐ熱くなるし、涙ぐむし。困っちゃうよね、ほんと。
やれやれ、と自分で思いながらも、何とか落ち着いて、ご飯を食べ始めたのだけれど。
今日は、玲央が真正面に座ってる。隣じゃなくて。
ああ、なんかこうして見ると、ほんと、華があるというか……。
Ankhの皆もそうなんだけど……とくに玲央は、キラキラしちゃってるというか……。
こんな人、ほんとに居るんだなあ……。
もぐもぐ食べながら、隣の勇紀の言葉に応えながら、なんとなく玲央を観察してしまう。
……うーん。カッコイイ。
「なあなあ、勇紀の隣のさー」
「……?」
勇紀の向こう側に座ってる人が、オレの方を覗き込みながら、そんな風に声をかけてきた。挟まれてる勇紀が少しだけ体を引いてくれると、ちゃんと顔が見えた。
「オレ??」
「そう。なんか最近よく顔みるなーと思って。学部どこ?」
「教育学部」
「そうなんだ。名前は?」
「花宮優月だよ」
そう答えると、向こうの方に居る何人かが、自分たちの名前を言ってくれる。
「そんな急に言ったって覚えらんないって」
横で勇紀が笑ってる。
「玲央とよく居るよね?」
んん。
あ、はい……。
と心の中で頷きながら、やっぱり玲央って目立つから、見慣れないオレと居ると、目に付いちゃうんだろうな。これはなんて答えるべきなんだろ。
言われた瞬間にそこまで考えて、つい玲央の顔を見てしまったら、目があった玲央は、何だか楽しそうに笑った。
「そんなに見る?」
玲央は、逆に聞き返してる。
「見る。気がするよなあ?」
一人が周りを振り返って聞くと、そこに居た四人位が、頷く。
それを面白そうに見てる、Ankhの皆と稔……。
特に稔なんて、何か言いたくて、うずうずしてる感がすごいのですが……。
「……まあ、仲良いもんなぁ?」
何だかすごーく含み笑いを浮かべながら、甲斐が玲央に向かって言う。
玲央は、そんな甲斐をチラ見してから、「まーな」とだけ答える。
「優月、だっけ?」
「あ、うん」
「ここらへん皆と知り合いなの?」
「あ、うん。そう」
「高校違うよな?」
「うん」
頷くと、勇紀が隣でクスクス笑った。
「高校一緒だったらさすがに知ってるだろ」
「でも、知らない奴も居るしさ。ここのメンバー皆と仲良いなら、もしかしてって思ったんだけど」
「確かに全員は知らないかもな」
颯也がそう言って頷いてる。
「まあそうは言っても、玲央を知らない奴は居ないよな」
稔が面白そうに笑って、そんな風に言って玲央を見ると、玲央は肩を竦めてる。そこは全員一致で同意みたいで、わっと皆笑った。
「ていうか、大学でも、玲央を知らない奴っているのかなあ?」
「まあよっぽど噂とか知らない奴なら、学年も学部も違えば……いやでも、イケメン投票、すげえ大々的に発表されるしな」
「つか、歩いてるだけで目立つし。名前知らなくても、見たことあんじゃねえの」
「だよなー」
皆好き放題、楽しそうに話してて、玲央はオレを見て、なんか苦笑いしつつ、食事を続けてるけど。
オレも食べながら、あーでも、と思う。
オレ、噂とか、ほとんど耳に入ってこないというか。興味ない噂なんて全然残らずすべて忘れちゃうんだけど、それでも、玲央のことは知ってたから。オレが知ってるってことは、やっぱり全員知ってるんじゃないかな……。
もぐもぐもぐもぐ。食べながら考えていると。
「でさあ、その超目立つ玲央と、最近よく一緒に居るからさ。皆気になってんだよね、誰?って」
「そうそう。勇紀に聞いたよな、オレ」
「ああ、聞かれた。仲良しなんだよって言ったじゃん」
クスクス笑いながら、勇紀がさらりと流してる、感じがする。
そっかー。
やっぱり、玲央が有名人過ぎて、そこにオレみたいなのが、ひょっこり現れ出したら、目立つのかぁ。
…………そう言えば、玲央がオレのとこに来ると、周りの皆がざわついて、すごかったもんね。
あれの逆が起こってるんだなあ。
……改めて、目の前の玲央を見るけど。
まあ、こんなに目立つ人、そうそう、いないもんなあ。
カッコいいもんね。死ぬほど。
整いすぎてて、男とか別に見たくない人も、なんとなく見ちゃうよね、きっと。どんな作りなんだろうみたいな。ふむふむ。分かる分かる。
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