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第710話◇

 階段を上って教室に入る。 「おはよー」  今日初めて会った皆に挨拶しながら席に着いた。 「今日もご機嫌だなー?」  クスクス笑われて、ん、と微笑む。 「ちょっとお昼いいことあって」 「そっかそっか」  クスクス笑って、頷かれる。 「あ。そーだ、優月さぁ」 「ん」 「合宿免許の話聞きたいって言ってたよな?」 「あ、うん」 「オレの行ってる教習所のパンフレット貰ってきた」 「あ、ありがと~」  鞄から取り出されて渡されたパンフレットをパラパラとめくる。 「やっぱり二週間くらいだね……」 「そーだね。それが微妙だったら通う感じかな」 「うん。オレ、通うことになりそうなんだ」 「そっか。なんか色々プランあるんだよね」 「そうなの??」 「あ、そこらへん」  机で開いてたところで、友達が指さしてくれる。 「……なるほど。大学生割引とかあるんだね」 「VIPプランだとちょっと高いけど、キャンセルとかも色々無料で出来たりするけど」 「ふうん……学科って家で見れるの?」 「そう。オンラインで受けれるみたい」 「そうなんだ。じゃあ、実技だけ行くの?」 「一応、教室でもやるよ。どっちで受けてもいいって感じかな」 「そうなんだ」  へー。オンライン授業。すごいなあと思いながらパラパラとめくっていく。 「これ貰ってもいいの?」 「いいよ。あげるために持ってきたし」 「ありがと~。楽しそうだなあ……」  楽しみ。教習所。  と思ってると、また別の友達にも話しかけられる。 「優月、免許とるの?」 「うん。取りたいな」 「優月が運転かー……」 「優月が……」  はて。  何か皆、んー、と考えてる。 「何?」 「なんか優月、すごくゆっくり走りそう」 「え、そう?」 「制限速度よりゆっくり走りそう……」 「そんな感じ。しない?」  一瞬時があいて、すぐに、「するー」と皆が笑う。 「そんなこと……んー。あるかな?」  ふふ、と笑うと、一人がちょっと笑いながらオレを見る。 「制限速度よりゆっくりだと、渋滞うまれるからね。一車線でいつも空いてる道がすごい込んでるから何かと思ったら、一番先頭に超遅い車がいるとかさー。……優月が後ろに大行列連れて走ってたら、面白いな?」 「ちょっとそれは、さすがに面白くないかも……」  クスクス笑って、答えた所に教授が入ってきた。  すぐ授業が始まるので、パンフレットを鞄にしまった。  そっかー。ゆっくり走ると渋滞になっちゃうのか。  まあなんとなく分かるような。  ……ふむふむふむふむ。  よく考えたら、オレ、運転できるかな。  とっさの判断とか、いけるかな。ちょっとドキドキしてきたかも。  あ、そうだ。  玲央、運転、すごく上手だから、玲央の運転見て勉強させてもらおう~。  ていうかまだ普通に乗れるようになるまで結構かかりそうだけど。  楽しみ。いつか玲央を乗せたり、友達や家族をのせて、どこかいけるようになりたいし。  ……うん、迷惑だし、渋滞は生まないように、気を付けよ。  電車ごっこの、先頭、みたいな。  ……さすがにちょっと嫌だな~。  でもちょっと面白いかも。ふふ。笑っちゃうな。  玲央に、オレがゆっくり走りそうか聞いたら、何ていうかな。  意外とスピード出しそう、とか。言ったりするかな。後で聞いてみよっと。  

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