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第714話◇
キスが離れたら、と思っていたのだけど。
全然離れなくて。……でも離れたくも無くて。
「……ん、っ……」
背中は壁で、玲央の右手がオレの頬を押さえてて。親指が頬をすり、と撫でる。ぞく、と背中を駆け上る感覚。
「……ん、ン」
玲央の胸の辺りに右手で触れたまま、玲央の服をきゅ、と握った。
そうしてないと、なんか崩れそうで、捕まってみたんだけど。
それに気づいた玲央が、キスしたまま、壁についてた左手でオレの右手をそっと服から解かせて。そのまま、指を絡められたまま、壁に押し付けられた。
「――――……っん、」
キスって。
……キスって。他の人としても、こんななんだろうか。
「……っは…………」
玲央は、キスしてる時、声は出さない。……と思う。
……してる人は出さないのかな。よく分かんないけど。
オレばっかり、声が漏れてる気がして、意識しちゃうとものすごく恥ずかしいので、なんとか、抑えようとするのだけれど。
「……っん……ぁっ……」
玲央の右手の指先が頬から少し上がって、耳に触れる。少し中をくすぐられただけで、びく、と震えて、抑えた声がすぐ漏れる。
「……ん、ふ……ゃ」
くすぐったくて引こうと思うのだけど、全然離れられなくて、ずっと滲んでた涙が、ぽろ、と零れ落ちた。
「――――……」
ふと、玲央が、薄く瞳を開いて、オレを見つめる。
オレと目が合うと、優しく瞳が緩んだ。
優しい笑い方に、どき、と胸がまた揺れる。視線を外せずに、玲央を見つめていたら。
最後に一度、押し付けるみたいにキスをして、玲央がゆっくり唇を離した。
そのまま頬にキスして、耳に触れてた指で、オレの涙をぬぐった。
それから、ゆっくり、オレの頭を抱き寄せて頭を撫でた。
「優月、……体、収まる?」
「……ん」
絡めてた指も解かれて、すぽ、と玲央の胸の中に埋められる。
「このまま抱きたい気分だけど……夕飯と……優月んち行かないとな」
言ってから、玲央がクスクス笑いながら、オレの頭をクシャクシャと撫でた。
「オレ、我慢できずに玄関でこんな風にキスするの……」
「……」
「優月だけだからな?」
クスクス笑って、玲央は、オレの頭に、ちゅ、とキスしながら続ける。
「だからってことはないんだけど……そんだけ好きだなーって感じ。……まあ。許して?」
そんな風に囁かれて、玲央に埋まったまま、背中に手を回して、緩く抱き付く。
「許す、もなにも……怒ってないよ……?」
「……盛ってばっか、て思ってない?」
ぷるぷるぷる。
首を振ると。玲央がまたクスッと笑う。
「ちょっとキスしようと思っただけなのにな。泣くほどするつもりなかったんだけど」
苦笑いで言ってる玲央の声が優しくて。
むぎゅ、としがみついた。
「……嫌で泣いたんじゃないから」
「それは、知ってる」
クスクス笑って、玲央がオレをもう一度、ぎゅ、と抱き寄せた。
(2023/8/21)
後書きです。
◇ ◇ ◇ ◇
昨日のあますぎかなという私の独り言?に、
そのままでという声、たくさん頂けて嬉しかったので
激甘いキスシーンにしてみました(笑
どぞ(っ´∀`)っ甘♡
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