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第727話◇
あったかいタオルで体を拭いてくれて、拭き終わると、ちゅ、と頬にキスされた。
「はい、終わり。明日シャワーな」
「ありがと」
……なんでこう、強烈にカッコイイのだろう。
優しいし。……こういうことした後、あったかいタオルで体を綺麗にしてくれるとか、そんな人、他にもいるのかな? よく分かんないけど。
今日はオレ、起きていられたけど、ぐーぐー寝てるオレのことも、綺麗にしてくれてるもんね。なんか、玲央って、こんな風にお世話してくれるタイプには見えないというか。
……優しいのは、死ぬほど分かっているのだけれど、でも、どっちかっていうと、玲央は、お世話される人というか、こちらがお世話しますっていう人が多そうな? ……超カッコいい、王様とか王子様、みたいだもんね。生まれたところが現代日本じゃ無かったら、絶対、こう、王族とか貴族とか、身分の高い、高貴な生まれの人……って感じ?
……ってオレは一体、何を考えているんだろう。
拭き終えたタオルを持って玲央が消えてる間に、好きなように、カッコいい服装の玲央を想像してしまって、ふと、我に返った。
そのまま、ぽふ、と枕に突っ伏した。
なんだか、本当に、指先までだるい。……だるいっていうのかな。
なんか、敏感になりすぎてた感覚が、今もぼんやり残っているというのかな。
なんか、ぽわぽわと浮いてるみたいにも感じるし、どろどろに溶けてしまいそうなくらいぐったりしてるようにも感じる。
体が気持ちいいで支配されて、玲央のことしか感じなくなって、怖いくらいで、逃げたいのに、ずっと、繋がってたいとかも、思ったりして、もう、気持ちまでもがぐちゃぐちゃに支配されて――――……。
終わってからも、続いてる感じ。
多分、こんなに気持ちいいの、世の中で、オレが一番なのではないだろうかと思ってしまうくらい、玲央に抱かれるのは、気持ちいい。……気がする。
って、他の人、まったく知らないから、何とも言えないんだけど。
ふふ。
ちょっと可笑しくなってしまう。
知らないくせに、オレが一番、とか。
何言ってるんだろ、と笑ってしまいそうになるけど。
でも、そんな気がしてしまうくらい。
……玲央とするの、好き。
「優月?」
ドアが閉まる音がして、玲央が戻ってきたみたい。枕に突っ伏してた顔を上げたら、玲央に、ん?と見下ろされた。
「ありがと、タオル……拭いてくれて」
「ん、いーよ。ていうか、それオレの役目」
クスクス笑う玲央の手が、オレの頭を撫でる。
「役目……?」
「ん? んー。役目、というか。特権、というか?」
クスクス笑いながら、玲央が、オレの隣に入ってくる。
「シングルに二人だとさすがに狭いな?」
ふ、と笑いながらの玲央に、引き寄せられて、抱き締められたまま、ベッドにころん、と転がる。
「ん。玲央のベッドに比べたらめちゃくちゃ狭い……おふとん、出す?」
「いらないって」
玲央が、ぎゅ、とオレを抱き締めて、笑う。
「狭くて、密着するしかないって喜んでるのに、何で出すの」
「……寝辛いかなと思って」
「布団出しても、そっちの布団で二人で寝るけど?」
「じゃあ意味ないかも」
「だろ?」
二人で見つめ合って、クスクス笑ってしまう。
「……終わった後、ぽーーーとしてる優月を綺麗に拭くの、楽しいからさ」
「でも、面倒な時は言ってね? 自分でできる……」
言いかけた唇に、玲央が、ちゅ、とキスしてくる。
「したくてしてる」
キラキラの瞳がふわ、と緩んで、オレを見つめるので、もうなんか、嬉しい。
「……ありがと」
「ん」
ほんわか気分で見つめ合った後、玲央の背中に手を回して、ぴと、とくっつく。
「……大好き、玲央」
自然と出てくる言葉。
伝えたら、玲央が優しく笑う気配がして。オレの髪に頬をすり寄せてきてくれる。
「もーほんと……可愛い」
よしよし、と撫でられて。
……なんかオレ、玲央のペットみたいだなあ……。
お世話されて、撫でられて、可愛いって言われて。
玲央にとって、オレって、どんな感じのなんだろ、と思いながらも。
……優しすぎて、幸せすぎるこの空間に。
安心しすぎて、またすぐ眠くなる。
「ねね、玲央。アルバム、持って帰って、一緒に見ようね?」
「ん、そだな」
くす、と笑う気配。
「おやすみ、優月」
「うん……おやすみなさい」
そう返しながら、さらさらと優しく髪を撫でる玲央のしぐさに、あっという間に眠りに落ちた。
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