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第729話◇
「半目でもカッコいいは言い過ぎじゃない?」
ベッドから出て、洗面所。
先に顔を洗ってた玲央が、鏡を見ながらそう言って笑った。
「え、何で急に?」
「さっき、スルーしたけど、鏡見たらそう思った」
「んー……玲央はなんでもカッコいいと思うけど」
「まあ優月も可愛いと思うけど」
「……」
「……」
ぷぷ、と二人で笑い合いながら、視線が絡む。
「オレいまのところ半目で寝てるっていうのは言われたことないけど」
「……オレもない」
クスクス笑いながら、オレも顔を洗おうと、玲央と場所を入れ替わる。
「着替えてくる」
「うん」
玲央が離れていく。とは言っても、玲央のうちとは違って、すぐ側に玲央が居るけど。
……広すぎないのも、いいのかも。
と思ったけど、でもいつも玲央のあの広い部屋で、くっついて一緒に居るかも。……なんか、空いてる部分もったいないな……。とか良く分からないことを思いながら、顔を洗い終える。
もう玲央は着替え終えてて、今日もとってもカッコイイ。
ラフなシャツなんだけど。玲央が着てると、なんかもう、特別なものに見えるというか……とにかくカッコイイ。
「ん?」
オレの視線に気づいた玲央が、にこ、と笑ってオレと視線を合わせる。
「んー。どうしてそんなに、カッコいいんだろって思って」
「――――……」
玲央はちょっと沈黙で。それから可笑しそうに笑って、それはどうも、と言った。
「なんか、ほんと、優月と居ると」
「うん?」
「オレ、ますますイイ男になるかもな?」
「ん?? オレと居なくても、玲央はずーっと、カッコよくなってくと思うけど……」
「んー……オレが可愛いって言ってて、優月がどんどん可愛くなってるのと、同じ理屈な?」
クスクス笑う玲央に、少し黙って考える。
「オレがどんどん可愛くなってるってこと??」
「なってるよ」
「……そう??」
良く分かんないけど、玲央が可愛いと言ってくれるのは嬉しい。
可愛くなってるかどうかは、おいといて。
「ん、でも、褒めるっていいことだよね。双子たちにも可愛い可愛いイイ子~って、ずっと言ってた」
「……だから可愛いんだろうな」
玲央がクスクス笑いながら言ってくれるのが嬉しいなとすごく思う。
朝は、昨日買ってきたご飯とコーヒーで軽く済ませてから、玲央とアルバムを車まで運んだ。見るの楽しみだな、ととっても楽しそうな玲央の運転で、大学の駐車場に着いた。
また帰りにね、と玲央と別れて、一限の教室にたどり着いた時、スマホが震えたので、玲央かなーと思いながらスマホを見ると。
あれ。朝から珍しい。
春さんからのメッセージだった。
『おはよ、優月くん。メロン、食べた?』
「食べましたー! 美味しかった。ごちそうさまでした」
にこにこ絵文字をつけて送ったら、「よかった」と笑顔スタンプ。
『オレ今日も学校に行くんだけどさ、優月くん、お昼、一緒に食べれそうかな?』
――――……んん?
……夜ご飯を一緒に食べたりすることはあったけど、学校でお昼を一緒にしたことは無い。なんだろ?
「食べれますけど、どうかしましたか?」
『話したいことがあって』
……話したいこと、か。なんかほんとに珍しいかも。何だろう?
「学食でいいですか?」
『優月くんの好きなとこでいいよ』
「じゃあ、正門前で、待ち合わせますか?」
『うん。じゃあ二限が終わったらまた』
「はーい」
何だろ。
学校とかで、こんな風なお誘いは、初めてかも。
ちょっと首を傾げつつ。
まあ、聞けばわかるからいっか。なんて思った。
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