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第733話◇
んー。
なんか、食べながら考えてて、ふと気付いた。
今、分かってくれてる人達は、玲央とオレが居るのを見てくれているような気がする。
玲央を、直接、見てもらったら、分かってもらえるのかもしれない……?
春さんと玲央は、二回会ったけど、一言ずつ挨拶しただけって感じだし、あれじゃ分かってもらえるはずがない。
オレがどんなに玲央が噂とは違うって言っても、春さんは信じられないかも……。
でも、会ってもらうっていうのも、変だよね。
春さんの誤解を解くために、玲央にわざわざ話してもらうっていうのも。
玲央がそういう風に遊ばなくなったっていう噂が、自然と春さんに届いてくれればいいけど、なかなかそういう良い方の噂って、回らないのかも。変な噂って、面白がって、わー、って回るけど……。玲央が遊ばなくなった、とかいうのって、なかなか……。うーん。
「……なんか、ごめんね」
「え?」
突然謝られて、春さんを見つめると、春さんは、苦笑いを浮かべた。
「優月くんが恋人って言ってるんだし、そうなんだ、で納得すればいいとこなんだろうけど……なんか噂がすごかったから、心配になっちゃって」
「……」
何も言えず、小さく頷く。
うーん。そうだよね。
オレだって、前の噂の玲央と、オレの仲良しの誰かが、三週間で付き合って一緒に暮らすって言いだしたら、心配するかも……ていうか、心配する。
「春さんが、心配、してくれるの、嬉しいです」
「余計なお世話かもしれないけどね」
「そんなことないです」
にっこり笑って見せると、春さんも微笑んでくれる。
……玲央と話してもらうのが、一番なのかもだけど、でも、これ、玲央が自分で、「前とは変わりました」って言っても、微妙な気がするし……。
「春さん、あの……」
「ん」
「オレと会う前の玲央の噂はあってるところもあると思うんですけど……あの……オレ今、だまされてる訳じゃなくて……そもそも、もともとは、オレが玲央を好きになって……一緒に居たいって、言って……」
「――――……」
「……それで、一緒に居るうちに、玲央も、オレと居たいって言ってくれて」
「――――……うん」
「……それで、一緒に居るんです。噂聞いちゃって、春さんは心配かもしれないんですけど」
落ち着いて話してみると、春さんは一応頷いてはくれているのだけど、やっぱり、安心させることは、出来てない気がする。
どうしたらいいか玲央に聞いてみようかな。
でも、玲央が来てくれても、やっぱり、信じてくれないかもしれないし。
うーん……でも……。電話してみようかどうしようか悩んでいた時。
ふ、と、不意に、いいことを思いついた、気がする。
「春さん、あの……」
スマホを取りだして、玲央とのメッセージの画面を開く。
普通なら、見せない。
でもなんか。なんとなく。いつもオレ達がしてるやりとりが、いいんじゃないかなと思って。
「春さん、あの……」
「ん?」
「玲央とオレの、トーク画面、なんですけど」
「……見ていいの?」
「ちょっと恥ずかしいけど。いつも、こんな感じで……」
ちょっとっていうか、かなり恥ずかしいけど。
内心かなり退きつつ、それでも、もしかして伝わるかも、と思って、スマホを渡した。
「……見ちゃうよ?」
「感想、言わないでください。恥ずかしいので」
「うん。ていうか、何それ感想って」
と、春さんが苦笑いをしながら、スマホに視線を移す。ざーっとスクロールしていくのが分かって。うーー。やっぱりすごく恥ずかしいかも。と、思わず口元を隠したまま固まっていると。
少しして、春さんから、スマホが戻ってきた。
「――――……」
春さんは、んー、と少し、難しい顔をしていたのだけれど。
不意に、ははっと笑い出して。それから笑いをこらえてるみたい。だけど、結局は、クスクス笑ってる。
「春さん???」
スマホを受け取って、そんな笑うようなことあったっけ、と思っていると。
「オレも、優月くんはハムスターとかに似てると思う」
なんて言われて、え、それ? と、ちーん、と固まっていると。
「なんか、あの子が、噂とは違う感じなのは、分かったかも」
ふ、と春さんが笑う。
「……そういえば、オレが優月くんと話してる時も、わざわざ出てきたり、すごく可愛がってるんだと思えば、そうとしか思えない感じな気がしてきた」
「――――……」
あ、なんか。
……嬉しい、かも。
「最後の方のメッセージは、遊び慣れてる奴が言いそうだけど」
「え?」
何だっけ?
慌ててスマホを見ると。玲央のメッセージ。「急にそんなの入ってくると、すっげー照れるんだけど。……会ったら、キスしてい?」 ……これかな。「人、居ないとこでしてください」と返したオレと、更に、「どうだろ? 我慢できたらな?」という玲央のメッセージ。
ぼぼぼっと、顔に熱が。
……めちゃくちゃ恥ずかしいのが最後にあったんだった……。
「でも、ちょっと安心したかも……」
めちゃくちゃ顔は熱すぎるけれど。
笑顔の春さんの言葉に、ほっとした。
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