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第734話◇

「余計な心配だったかもね」  笑う春さんに、オレは首を横に振った。 「オレが春さんの立場で、その噂聞いたら同じように心配すると思うので」 「……まあ。だよね」  春さんは、頷いて、クスクス笑い出した。 「もうさ、ほんと、昨日聞いた時は、どうしようかなーと思った」 「元は知らなかったですか?」 「うーん、なんか、モテるらしいとか、まあ当然遊んでそうっていうイメージはあったし、聞いたことあったような気もしたんだけどさ」  言いながら、アイスコーヒーを飲んで、苦笑い。 「あんまり興味もないし、関係も無いから、ちゃんと聞いてなくてさ」 「ぁ、分かります。オレもあんまり噂話知らないので」 「男の噂話なんか、ほんと関係ないからさ。イケメンナンバーワンとか、それは学祭で見たし目立つから顔は見かけて知ってたんだけどね」  うんうん、と頷くと、春さんは苦笑い。 「優月くんが一緒に暮らすとか言うから、大分タイプ違うけど大丈夫かなとか思って、聞いちゃったんだよ。そしたら皆が結構色々知ってて、総合すると結構すごい噂でさ。もう、ほんと大丈夫かなってなっちゃってさ」  そこまで話して、春さんはもう一口コーヒーを口にして、少しだけ沈黙。 「ごめんね、急に呼び出して」 「全然。呼んでくれてよかったです。ずっと心配かけちゃってたら嫌なので」 「んー……そうだね。もう、心配でしょうがなくて、一緒に暮らす前に止めないと、って思ってた」  クスクス笑われて、オレも笑ってしまう。 「でもさ、優月くん」 「はい」 「悪い子じゃなさそうだし、優月くんを騙してるって感じはなくなったんだけどね」 「はい」 「まだ少しは心配なんだよね。……優月くんは、本当に良いの?」 「――――……えーと、男同士とか、ですか?」  考えて、そう聞いたら、春さんは少し首を傾げながら頷いた。 「んー。そう、だね。まずそこかな。……今まではさ、考えることもなく、将来は女の子とって思ってたんだよね?」 「……ん、そう、ですね。それが普通だと思ってたのかも」 「そこを覆して、大丈夫?」 「――――……」  覆して大丈夫、かぁ。……大丈夫っていう言葉よりは、むしろ。  ……オレが、玲央を好きなことを、伝えた方がいいような気がしてきた。  そう思って、オレは少し考えてから、春さんを見つめた。   「春さん、あの」 「うん」 「オレ、今まで、可愛いなとか好きだなって、確かに女の子に向けてきたんですけど……今思うと、玲央を好きなのとは、全然違う、ぼんやり好きだったなーて感じで……」 「うん」 「今オレ、本当に、自分でもびっくりするくらい、玲央のことが好きなんです」  そう言うと、春さんは、ふ、と自然と笑んだ。  その笑みを見ながら、オレは考えながら、続ける。 「女の子だからとか、男同士だからとか、オレにはあんまり関係なかったのかなって思ってて」 「――ん」 「もしこれから何があっても……最悪、別れることになっちゃっても、今好きなことは絶対後悔しないと思えてるので」 「――――……」 「もちろんずっと一緒に居られたらって思ってますけど」  オレの言ってるのを、春さんが面白そうに見つめてくる。 「だからね、春さん。心配しないで見守っててもらえたら嬉しいなって……感じです」  そう言って、春さんの返事を待ってると。  春さんは、ふ、と笑って、何度か小さく頷いた。 「いつもフワフワしてるけど。それこそハムスターとか、似てるし」 「……似てますか?」 「うん」  クスクス笑って、頷く春さん。  一度息をついてから、オレをまっすぐに見つめた。 「でも、覚悟決めてる優月くんは、強いね」 「――――……」 「まあ、なんとなく、そういう子なのは知ってたけど」  可笑しそうに笑って、春さんは「ん」と一度大きく頷いた。 「分かった。心配はやめとく」 「え。……あ、はい」  嬉しくなって笑顔で頷くと、春さんもなんだか嬉しそうに、クスクス笑った。 (2023/9/18) ◇ ◇ ◇ ◇ この春さんエピソードの裏話を読みたい方だけどうぞ……。 といつも書くけど、後書きまで読んでくださる方って、僅かなのかもと思いながら書きます……(笑)↓ 進み方完全ノープランで春さんと話し始めちゃったので、私も優月と一緒にどうしよ~と思ってました(笑) 途中、玲央に来させようかなーとか、春さんを玲央達のところに連れて行って勇紀たちともはなさせようかなーとか、それかもう飲み会開いちゃう? いやでも春さん一人を囲うのもなーとか、色んな案が浮かんでは消えていき(´∀`)アハハ。 結局、優月の話すまんまに任せてたらこんな感じに。 私の小説の書き方って、キャラが勝手に喋ってっちゃう感じなのですが。この子だとこう言いそう、ていうのを書いていくことが多いんです。というか、この場面、このセリフしか言わないぞ!みたいなキャラが結構いる。……だから、本当は、こういうこと言わせて、こう進めたかったのに、進んでくれないーあっち行っちゃうよー!てことが、結構あるのです……。素人で、好きに書いてるから許されるのかなと……(^^; 特に恋なんかじゃないはいつもそんな感じ。日常を書いてるから余計ですね。 これでいいのかな( ゚д゚)?と思う時も多いんですけど、一番読んで頂けてるお話でもある……なぜだろう、ほんとに不思議。でもいつもありがとうございます。 ……と、春さんが落ち着いてくれたので、作者もほっとした、というのが書きたかった後書きでした(笑) 後書き長いですよね。私文章書くの長いのは自覚してます。これでも、後書きも読み直して要らないとこは減らしてからお見せしてるんですよ~( ´∀` ) デモナガイ……(笑)

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