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第741話◇
なんだかとても可愛く思いながら、優月と買い物をした。
こだわった食材が多く入ってるスーパー。
店内に入るとすぐある野菜売り場から、優月がいちいち足を止める。
あまり普段行く店で見かけないものが多いのか、楽しそうにしてる優月と、色々買い込んで車に戻った。
「なんか色んなもの、珍しかったね。どうやって食べるかわかんない野菜とかあったー」
「そうだな」
クスクス笑ってしまう。
「またゆっくり昼間に来よ。食べてみたら美味しいかもだし」
「うん」
ふふ、と笑う優月がシートベルトをするのを見てから、車を発進させた。
「優月、買い物してるだけで楽しそうだよな」
「ん?」
「夕飯の買い物、だけでも、楽しそう」
微笑んでしまいながらそう言うと、優月は、違うよーと、笑う。
「違うって?」
「買い物だけ、じゃなくてさ」
「ん」
「玲央と、買い物、だから余計楽しいんだよ? ひとりであの店行っても、しゃべれないし、変な野菜見ても何も言えないし、つまんないよ」
「あぁ……オレとだから、なのか」
「うん、そうだよ」
楽しそうに言って、優月も微笑む。
――――確かにオレも、優月とだから、こんなに楽しいのかも。
なんかそんなことを思っていると。
オレが優月を好きで。
オレの好きな人である優月が、好きなのも、オレで。
一緒に居るからこそ、普通のことでも、すごく楽しい、とか。
こうなってくると、好き同士で居られることも、すごく奇跡である気がする、ような……。
「玲央?」
「……ん?」
「どうかした?」
「……何か、曲になりそうなこと、考えてた」
「えっ、そうなの? どんなの?」
途端にものすごく楽しそうに笑って、オレを見つめてくる。
「すぐには言えないんだけど」
「そっか。でも楽しみ」
「――――……ん」
まあ今の曲にしたら、あいつらのツッコミが半端ない気がするが。
……まぁいっか。
「……あ」
優月が隣でそんな声を出して、固まってる。
「どした?」
ちら見してからそう聞くと、優月は、うん、と相槌を打って、また黙って、少ししてから話し始めた。
「ん……なんか、思ったんだけど……玲央が作る歌詞も曲もね。まだいくつか聞いただけだけど」
「ん」
「玲央の噂とはかけ離れてるなーと思って……」
ちょうど信号が赤になったので、こっちを見ている優月と視線をあわせる。
「いつもオレが一緒に居る玲央は、歌の方の玲央だと思う」
ふ、と笑って、優月が目元を緩める。
「そっちが、大好きだし。……そっちを信じてるし」
「――――……」
「春さんとか、心配する人には、今度から歌聞いてもらおうかなぁ。やり取り見せるんじゃなくて、そっちのほうが――――……」
嬉しそうに話す優月を見ていたら。
よく分からない。けれど。
キスしたくなって。
優月に触れて、オレの方に引き寄せて。
唇を重ねて、視線を合わせた。
「……れお??」
すぐに離れて、前を向く。信号もすぐ変わったので、車を走らせてから。
「……オレは別に、噂とかどうでもいい」
姿勢をもとに戻してから、ん、と優月がオレを見上げている。
「優月がオレを信じてくれてるなら、ほんとどうでもいい」
「――――……」
「とは思うけど……まあでも優月が困りそうだから、新たな変な噂が出ないようにだけは、気を付ける」
そう言って笑うと、優月は、うん、と嬉しそうな声で頷いてから。
「オレもほんとはどうでもいいんだけど。人の噂なんて、ほんとのとこは知らないで言ってるし。でも、誤解は消えてったらいいなとは思う」
「まあ。……今後のオレに期待してて」
「うん。期待してる」
あは、と笑った優月が、オレがギアに触れてた手に、触れてくる。
ぽんぽん、と触れてから。
「大好き、玲央」
ほんと。もう、ほんとに大好きだよー、みたいに続けてる優月に、笑ってしまう。
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