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第742話◇
優月のマンションから持って帰ってきたアルバムと買い物の袋を手分けして持って、オレの部屋に入った。
アルバムはあとで見ようと、ソファの上に置く。見たいけど、長くなりそうだから我慢……。
「優月、シャワー浴びてきてもいいけど」
そう言うと、ううん、と笑顔。
「お腹空いたから、一緒に用意して早く食べよ?」
「ん」
まず炊飯器を早炊きでセットして、それから大き目の皿を出すと、優月が刺身を並べようと、パックを持ったまま固まった。
「ん? どした?」
聞くと、オレを見上げて苦笑い。
「お刺身ってどうやって並べていいかわからないんだよね……なんか、綺麗にならないの」
「シソと大根と人参のツマ、買っただろ?」
「うん。買ってたね。これ?」
「そう。それをさ、こうやって立てて……」
「うんうん」
奥に大根のツマを置いてシソの葉をのせる。
「そこに、刺身立てるみたいに置いて?」
「立てる……?」
箸でそーっと立ててみて、おお、と嬉しそう。
「イイ感じかもしれない。次は??」
「シソ、置いて――――真ん中も高さ出して。形違うのも置いて、一番前は寝かせるとか」
「うんうん」
「サーモンとかは巻いたり」
「うん」
めちゃくちゃ楽しそうにキラキラ笑顔。
少しずつ刺身を並べていく。
ミニトマトとか、ニンジンのツマとか飾って、出来上がると、優月は何やら感動している。
「お刺身、初めて綺麗に並べられた」
なんかお店みたい、とめちゃくちゃ喜んでいる。
「コツがあるよな」
「うんうん。ほんと。全然違う。すごいー」
手放しで褒めまくってくる優月に、ふ、と微笑んでしまう。
「今度実家帰ったら、オレが並べようっと」
「ああ」
クスクス笑って頷くと、優月はオレを見上げて、玲央すごい、とニコニコ。
「一通り料理習った後、盛り付け方も習ったから」
「違う気がする」
「ん? 違う?」
「センスだと思う」
そう言って、オレが答える前から、玲央はすごいなぁ、なんて言いながら嬉しそう。
「あっ、写真撮っていい? 一樹と樹里に送ろう~」
「いいよ。つか、だめとは言わないし」
「ありがとう」
わーい、とばかりにスマホを取りに行く。
たまに、すごく幼くなる感じも、可愛いなと思いながら、写真を撮ってる優月を眺めていると、ふと、オレを見て、止まった。
「えーと……はしゃぎすぎ、ですか??」
照れ笑いの優月に、笑いを抑えながら「可愛いからいいですよ」と答えると。ふふ、と笑う。
たまに敬語の優月が可愛くて、最近真似して応えてるけど。
大体そういう時、優月は、楽しそうに、嬉しそうに笑う。
可愛い。……って、一日に何度思うのか不思議。
その内、見慣れたら、思わなくなるのか? どうなんだろ。こんなに可愛いと思うのが初めてだから、経験からは分かんねーな。と思っていると。
「玲央、見て、すごいおいしそうに撮れた」
すぐ隣に来て、スマホを見せて、これとかこれとか言いながら、オレを見上げてくる。それを見つめて返事を返していたら。
「――――……」
いつの間にか、キスしてて。
ん? と優月がオレを見つめてる。
……あれ。キスしてたな。
いつの間にか。
優月は、ふふ、と笑って、お返し、みたいな感じでオレの頬に口づけた。
「双子に送っちゃう」
「ん。ああ」
優月は少しの間スマホを操作して、すぐに戻ってきた。
「ごめんね、続きしよ」
「ああ」
頷いて一緒に準備を続けながら。
……なんか無意識にキスするとか……。
やっぱ、優月のことは、ずっと可愛いって思ってそう、オレ。
つか、これ外でやんないように気をつけねーと、と思わず苦笑いが浮かんだ。
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