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第747話「念願の」*玲央
「あ、おかえりー」
コーヒーの良い香りと、優月のニコニコの笑顔。
風呂上り、今までなら一人だったし、それが快適だったんだけど。
そんな風に思いながら、カウンターの前で立ってる優月に近づいて、抱き寄せた。
「ただいま」
「うん。おかえり」
ふわりと笑って、優月がオレを見上げる。
「……」
この可愛いって思う感覚って、何なんだろうか。
無邪気だからか?
……なんでこんなに可愛いんだろ。
「コーヒー、入ったよ。飲も?」
「ん。髪、ちゃんと乾かした?」
「うん、大体」
そう言う優月の髪をふわふわと撫でる。
ふわふわした髪に触るだけで、可愛いとか。今すげー思ってるもんな、オレ。
「あっちのテーブルに置く?」
ソファの方を見ながら言うので頷くと、コーヒーを二つ持って、嬉しそうに移動していく。楽しそうに歩いてく、その感じすら可愛いとか。
「――――……」
……オレの頭ン中って、優月に言ってる以上に、ずっと可愛いって思ってるのを、優月が知ったらなんて言うかな。さすがに少し気持ち悪がられるかもしれないとも、思ってしまうレベルだ。
コーヒーをローテーブルに置くと、優月はソファに座って、アルバムを一冊手にした。
そして、嬉しそうにオレを見上げた。
「ではでは、玲央さん! 座ってください」
楽しそうに言うので、言われるまま、優月の隣に座ると。
「見たいですか? ちなみにこれは、一番最初の生まれたての優月くんがいるアルバムです」
ふふ、と楽しそうに笑いながら、オレにアルバムを向けて、そんな風に言う。
抱えたアルバムで口元は隠れているのだけれど、目元がめちゃくちゃ楽しそうに細められるのを、見ていたら。
なんだかもう、可愛くてたまらなくなって。抱き寄せて触れたい気持ちもあるのだけれど。
アルバムを見せたそうで楽しそうなので、我慢。
まあオレも、可愛くてたまらないだろう赤ちゃん優月のいる、念願のアルバム、だしな。
「あれ? 見たくない?」
オレが一瞬返事が遅れると、少し眉がハの字に寄った優月。
「見たいので見せてください」
と言うと、ふふ、と笑って、よいしょ、とオレのすぐ隣に来て、アルバムを渡してきた。
「笑わないでね……あ、笑ってもいいけど」
もう見たもんね、と苦笑いしつつ、優月が、一枚目を開いた。
現れたのは、まぁるい優月。ほんと生まれたて。
……髪。というか、産毛。ほんとかわい。
ふ、と口元が綻ぶと。オレの顔を見ていた優月も、ふふ、と微笑んだ。
「髪の毛、ほんとないよね。しかも丸い……」
「すっげー可愛いな」
クスクス笑ってしまう。
「やっぱり拝みたくなる」
「また言ってる」
クスクス笑いながら次のページ。
優月の泣き顔や、眠ってる顔。
「時たま優月の顔してるよな……」
「……そうかな?」
「寝顔とかさ。やっぱ今と通じるっつーか……なんか、すげー和む」
「和んでもらえてよかったけど」
可笑しそうに優月は笑って、オレを見つめる。
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