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第753話◇希生さんちへ

【side*優月】  昨日はお風呂の後は、玲央が言ったとおり、早く寝た。  ぐっすり眠って、なんだかぱっと目が覚めると、そっと起き上がった。  今日は希生さんちだ。なんかワクワクしてきた。 「……おはよ」  玲央がクスクス笑ってオレの右頬に触れた。   「おはよ、玲央」  ちゅとオレの左の頬にキスして、玲央も起き上がった。 「やっぱり、早めに行きたい?」 「うん。わくわくして起きちゃったし」 「了解。じゃご飯食べて準備しよ」 「うん」  二人でベッドから出て、着替えと朝食を済ませた。 「何持ってけばいい?」 「パジャマみたいなのはあると思うから。下着だけでいいよ」 「分かった。そしたらほぼ手ぶらだね」  なんだかとっても、気持ちが逸る。  その時、振動音。 「優月、電話」  玲央に、ほい、とスマホを手渡される。 「あ、もしもし、蒼くん?」 『優月? あのさ、希生さんちに何か手土産持ってくか?』 「あ、うん。なんか玲央が、希生さんが好きな和菓子とか買ってくって」 『ああ、和菓子ね。じゃあこっちはうまい酒でも買ってこうかな』 「うん」 『お前らにも、ノンアルのジュース買ってってやるよ』 「ん、ありがと。久先生の好きそうなのも買ってくね。蒼くん、何かスイーツとか食べたい?」 『オレはいいや』 「分かった。じゃあとでね」  通話を切ると、玲央がクスクス笑う。 「蒼さん、食べるって?」 「ううん。いらないって。蒼くんはおいしいお酒とノンアルのジュース買ってきてくれるって」 「そっか。じゃあとりあえず買い物行くか」 「うん」  荷物を持って、靴を履いて出ようとしたところで、「優月」と呼ばれた。振り返ると、ぎゅと抱き締められる。すっぽり埋まった腕の中で、玲央を見上げると、玲央は、ふ、と苦笑い。 「しばらくこうできなそうだから、最後」  よしよし撫でられて、そうだね、と頷く。  むぎゅ、と抱き締め返すと、ふ、と玲央が笑いながら、ちゅ、とキスしてくる。 「……あんま触ってるとツッコまれそうだもんな」 「うん」 「しょーがねーか」  すり、と頬を撫でられて、そのまま玲央を見上げる。  いつも二人でいると、頭とか頬にすぐ玲央触るもんね。  あれはちょっと、無理だよね。ちょっと寂しいけど、仕方ない……。すりすり触れてる玲央を見上げていると、玲央はクスッと笑った。 「まあ、でも、夜寝る時は二人だろうし。それくらいなら我慢するか」 「どんな感じで寝るの? オレの家とかに友達泊りにくると、結構リビングに布団敷き詰めて寝たりしてたけど」 「空いてる部屋が結構あるし、ベッドルームもあると思う。じいちゃん、人呼ぶの好きだから、泊める用に」 「なるほど……」  ん? あれ?  玲央たちのお家の敷地内に、別で離れとか言ってなかったけ。  むむ。なんか、離れってわりと小さ目な、感じを思ってたんだけど。ああなんか、すごそうな気がしてきたような。  あ、そうだ、離れっていったら、蒼くんちのお絵描き教室も元はただの離れで、使ってなかったからとかなんとか。  あの教室の敷地、普通の一軒家とかよりめちゃくちゃ広いし。  えっと……ちょっと覚悟していこうかな。びっくり、しないように。  そうだったー。今日あつまる中で、一般のお家の人はオレだけなような。カルチャーショックの日かな、もしかして。なんか、そんな風に考えていたら、なんだかすごく楽しみ。 「――――行くか」 「うん」  最後にちゅ、と頬にキスされて、ぽふぽふと頭を撫でられる。  部屋を出て、下の駐車場。玲央の車に乗って出発。  楽しい土曜日になるといいなあ、なんて、ほんとワクワクしてきた。  

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