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第754話◇

 デパートの駐車場で車を降りて、店内に続くエレベーターを待つ。 「地下直行で良いか? どこか寄りたいとこ、ある?」  玲央がオレにそう聞いて、ふと笑む。 「ううん。無いよ。お土産買いに行こ」 「ん」  なんとなく黙って、エレベーターの階数表示を見つめていると、後から来た女の子二人組が、ふと玲央に気づいた。気づいたっていうか、別に玲央を知ってる感じじゃなくて、うわーイケメンが居る、みたいな。一人が気づいて、一人にちょんちょん、と囁いた感じ。  オレも女の子たちと同じように、上の階数を見つめてる玲央をちょっと見上げる。  ふむ。……てか、すっごくすごくカッコいいよね。  見ちゃうの分かる……。  綺麗だし。カッコイイし。  なんか、一回見たら、目が離せないというか。 「ん?」  ふと気付いた玲央が、オレを見つめ返して、クスッと笑う。  ……わー。なんか。外だと、服装もすごくカッコいいし、アクセサリーとかもつけてて、もうなんかモデルさんみたいなんだよね。めちゃくちゃカッコいい玲央が、オレをまっすぐに見つめて、そんな優しい顔で笑われてしまうと。  斜め後ろの方に居る女の子たちもきっとそれを見たのだと思う。ものすごく静かに、でも、すっごく盛り上がっているのが分かる。  でも、玲央は、全然そっちは見ない。全然気にしてないのか。気付いてるけど、いつものことだから無視してるのか。どっちなんだろ? 「優月は何が食べたい?」 「……ん? 何って?」 「和菓子は買うって決めたけど。優月は?」 「えー何だろ……考えてなかった。玲央は?」 「オレも別に……あ。プリンは買っていこうか」 「プリン?」 「こないだ実家に帰った時、食べなかっただろ」 「あ、そだね」  双子たちに置いてきた時のプリンかぁ。  ……なんかそういうの、覚えててくれるのが、嬉しい。  頷きながら、開いたエレベーターに乗り込む。  中に居た人と、乗り込む人とで、少し奥に詰め込まれる。  なんとなくオレの腰のあたりに、玲央が触れてる。ちょっと支えるみたいに。  さっきの女の子たちは隣に立ってるけど、隣過ぎてさすがに玲央のことは見上げられないみたい。 「希生さんたち、プリン好きなの? 食べる?」 「ん、食べると思うよ。買ってこ」  クスッと笑って、玲央が頷く。  うーん。さっきも思ったけど。玲央って、家にいると、すぐ頬に触れてきて、キスしてきて、撫でたり、抱き締めてくれたり。テーブルとかも隣に座るし、すごくすごく、近い。声も。囁くみたいな声で、なんか甘い。  なんかこう。周りに他人が居るところで、離れて見る玲央は、すごく新鮮で。  少し余所行きの声、な気がする。ほんと、かっこい……。  世の中にこんなにカッコイイひと、他に居るかなあ?  ほとんどの階に止まるものだから、地下の階まで結構長くて、なんとなく黙ったままそんなことを考えていた。やっとついて、エレベーターを降りた。 「ねね、玲央」 「ん?」 「さっき途中まで乗ってた女の子たちが玲央を見てたの、知ってる?」 「いや?」 「……なるほど」  知らないんだ。ていうかもう自然とスルーなのかな。そういうば前もそうだったかも。  気づいて対応してたら大変そうだもんね。 「皆が玲央を見て、キラキラするの、すごい分かる」 「キラキラする?」 「うん、キラキラする。カッコイイ人見ると、潤うのかな?」  ふふ、と笑いながら、通路を歩き出す。 「何それ、初めて言われたな」 「潤うって??」 「ん」 「でも、ほんとにオレも潤ってる気がする。つやつやしてない? オレ」 「――――……ん、まあ、してる」  玲央のおかげだね、なんて言って笑ってると、玲央が「面白いな、優月」とクスクス笑いながら隣に並ぶ。 「優月」 「ん?」  内緒話みたいに寄ってくるから、耳を傾けると。 「性的に満たされてると、艶々するって」 「――――……!!」  瞬間的に真っ赤になって、玲央を見つめてしまう。  キラキラの瞳が、ふ、と細められて。 「……みたされてるかどうかは、また今度聞かせてもらお」  クスクス笑われて、もう、なんか、オレは真っ赤。玲央は可笑しそうにクスクス笑っている。  もーもーもー。  ぷんぷんと膨らみながら、玲央の後をついて、和菓子屋さんに入った。

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