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第755話◇
和菓子とプリンを買う間も、玲央はただひたすら目立つ。
土曜のデパート、人がたくさんだから余計かな。
こんなに目立つとやっぱりスルーしないと疲れちゃうなあなんて思った。
しかも、何だか玲央と居ると、こんな人と居るのはどんな人?みたいな視線が、こっちにも飛んでくる。
綺麗な彼女さんとかだったら、納得するんだろうけど、まあ多分。なんだ、彼女じゃなくて友達か、みたいな視線に変わった後、なんかそれにしても、あわないな、と思われてそうな感じで、じー、見つめられる気が。
オレって、人の視線とか、あんまり気づかないというか。
そういう、周りの人に対して鈍いかなあと思っている。噂とかもそうだけど、直接絡まないことにそんなに興味がないというか。その自覚はあったのだけど。
なんか。
……今珍しく気付いているこれは、多分、オレ、あっている気がする。
別にね、玲央とオレじゃ、部類ていうか系統というか。なんかそういうのが違うから、何で一緒にいるんだろ?と思われるのも分かるからいいんだけど。
でもなんか、玲央がオレに話しかけて、なんかめちゃくちゃ優しく笑うと。なんかすごく静かに盛り上がる外野の人達。
んんー。
大学だと、結構皆がもう玲央を知ってるし。視線は感じるけど、ここまでじゃないかも。近所のスーパーとかも、こんなじゃない。
なんだろ、デパートって、目立つのかな? 今、たまたま?
はー、とにかく。なんか視線に疲れちゃった。
わーなんか、すごくぐったりー。
って、別に見られてるメインはオレじゃないのに。と思うと可笑しい。
見られてる玲央はへっちゃらなんだよねぇ……と、平気で凛としてる玲央を見つめてしまう。
買ってきたものを後ろに置いて、玲央がそのドアを閉めながら。
「なんか買っておきたいものあるか?」
最後に確認してくれるけど、ううん、と首を振った。
車に乗り込んで、シートベルトを締める。二人の空間に、ほっとする。
「混んでそうだな……」
ナビを入れて確認して、玲央が苦笑い。
「空いてたら三十分くらいなんだけどな」
「土曜だもんね」
「だな。昼前にはつくし、いっか」
「ん」
二人だし。玲央の運転姿好きだから、全然、オッケイ。
そんなことを思いながら頷く。
「あ、あれ考えながら行こうぜ」
「あれ?」
車を発進させて、駐車場の坂を下りながら、玲央が、ふ、と笑った。
「夏のさ、ライブで行きたいところ」
「わーほんとに行けるの?」
「大きいところ押さえるのは大変かもだけど、別に小さいライブハウスなら全然ありだし。小さいとこでも別に行けばいいだろ?」
「うん、そっか」
「全国での知名度はまだそんなにないけど。今はSNSとか動画で知ってくれる人もいるからな。どん位来てくれるかは謎だけど。社長たちがライブハウスの大きさとかは、いまどうしようか考えてるって」
「楽しみだねー」
メジャーデビューとか、しちゃったら、全国で有名になっちゃうんだろうなぁ……。そしたら今よりもっと見られちゃうのかな。
うーん。穴空いちゃいそう……。大変。
でもそっか、玲央は視線を跳ね返すから、大丈夫かな。
あ、オレに穴あくかも。隣で。
そんな風に思ってたら、なんだかクスクス笑ってしまった。
「どした?」
突然笑ったオレに、玲央がなんだか可笑しそうに笑う。
「ううん。……玲央達ってデビューのことは、まだ決めてないって言ってたもんね?」
「ん。大学の間はやろうってのは決めてるよ」
「そうなんだ」
そっか、じゃあ少なくてもまだ三年弱は見れるんだ。とりあえずそれだけでも嬉しい。
色んな地名を挙げて、あれこれ話しながら。何だか一時間あっという間だった。
「着いたよ」
言われて、見上げた目の前の門は。
……めちゃくちゃデカくて。瞬きを繰り返してしまった。
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