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第756話◇

 オレが車が止まった目の前にある門の大きさと、奥に続いてる敷地の広さに、ほけー、と固まっていると。  車を降りて、インターホンで玲央が何かを言ってる。自動で門が開いて、また玲央が車に戻って、奥まで進む。  門から、駐車場までが長い。  ……お家っていうのかな、これ。  玲央のお家の敷地の中に、希生さんのお家が建ってて……って言ってたよね。  玲央が、車庫みたいなところに車を止めて、「下りていいよ」というまで、オレは、ただただぽけー。と。きょろきょろ。  シートベルトを外して、車を降りる。  全然詳しくないので車種はよく分からないけど高そうな車が、並んでる。 「……玲央?」 「ん?」  玲央が買い物したものを後ろから出しながら、オレをふと見つめる。 「なんかオレ……大きいんだろうなーとは思っていたんだけど……」 「ん」 「予想以上過ぎて……」 「……ん?」  ぷ、と笑いながら玲央がオレに近づいてくる。 「まあ……デカいか、敷地は。びっくりした?」  よしよし、と頭を撫でられる。 「敷地はっていうか……門までこんなに遠いって、あるの? もうびっくり」 「まあ別にオレが建てたんじゃないしな」 「そうだけど……玲央は、一人暮らしするまでここに住んでたの?」 「そうだよ。あっちの屋敷が住んでた方」  結構離れた所に見える、大きなお屋敷……。  あれ絶対、近くに立ったら、びっくりするやつだー。  お城かな?? 「んで、こっちがじいちゃんち。おいで」  背に手が置かれて、そのまま、一緒に歩き出す。  向かう先の建物も大きいんだけど……でも、二階建てなのでまだいける。  ……いけるって何?と自分で面白くなりながら、玲央を見上げる。 「なんか、玲央って、ほんとに、すごいお坊ちゃまなんだなって思った」 「……嫌?」 「嫌……? とかじゃなくて……うーん。すごい?」  言うと、玲央は、目をぱちくりして、オレを見つめる。 「なんかテレビの中とかさ、物語の中に入ったみたい。中に入るの楽しみ」 「ぁ、そっちか」  玲央はクスクス笑う。 「こんな身分違いの恋なんてーって言われるかと思った」 「あ、ちょっとは思うよ?」 「思うの?」 「玲央は、世が世なら、若様とかさ、なんかそういうのなんじゃないかなって……」 「それは良く分かんないけど」  玲央が楽しそうにクスクス笑ってオレを見つめる。 「お殿様……?」 「もっと分かんない」  クスクス笑って、玲央が、オレの頬に触れる。 「家でかくても小さくても、オレはオレだし」 「……」  うん、と頷く。 「知ってる。玲央は玲央だよね」  そう言うと、玲央はなんだかとってもとっても嬉しそうに微笑む。  なんだかとっても、愛しく思えて、ふふ、と笑みながら。  玲央が頬に触れてる手に、すり、と頬を寄せると。 「――――……あーかわいぃな。ほんと」  真面目な顔してオレを見つめて、そのまま顔を傾けてくる。  ちゅ、とキスされて、あれ、ここって、誰も来ないの?と思った瞬間。 「……言われて、迎えに来てやったんだけど、お前ら……」  見なくても分かる。  ……蒼くんの、ちょっと呆れたような。  でもなんか、笑いを含んだ声。  う。うわ。  ……これはちょっと…………最悪かも。ひえー……。  蒼くんにキスされてるとこ見られた―。  よかった、せめてオレの後頭部側が蒼くんで。  いや、全然良くないよー。

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