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第759話◇

「え。あれ?? 鯉って、そんなに長生きなんですか?」  希生さんに聞くと、希生さんは笑顔で頷く。 「野生だと十五年前後らしいけどね。飼育条件整えて水温とかエサとか水質を適切に管理すると、三十年とか生きる鯉も居るんだよ」 「ひゃー……玲央とオレより長く生きてる鯉もいるんですか?」 「居るよ。結構なサイズの鯉は、長生きしてるね」  クスクス笑う希生さん。 「え、じゃあそこのめちゃくちゃ大きいのは……?」 「金色のより前からいるね」 「わー……すごいーていうか、鯉がそんなに長生きなの初めて知りました」  ひえー、すごーい。  餌をあげ終えたので、さっきよりは少し落ち着いた鯉たちにちょっと近づいて、しゃがみ込む。 「なんかすごく、色が鮮やかですね……」 「飼育環境によって、色つやも良くなるんだよ」 「そうなんですか? じゃあここ、すごくいいんですね……」  鯉、大きいし、元気そうだし、すっごい綺麗。  すごいなぁ……。  しゃがんだまましばらく見ている隣で、希生さんが色々説明してくれる。  鯉の育て方なんて聞くのは、初めてで、すっごく楽しくて、うんうん聞いていると。  希生さんと反対側の隣に足音。  ふと見上げると、玲央で。  何だかとってもにっこり笑ってオレを見下ろしてくる。 「楽しい?」 「え。うん、楽しい。鯉の育て方とか初めて聞いたし。こんなに綺麗な鯉、初めて見たし。……玲央の鯉、貴重~」 「オレの鯉、ではないけどな?」  苦笑いで言いながら、玲央もオレの隣にしゃがみこんだ。 「なんかさ」 「うん?」 「ほっといたら、ずーっと鯉の話で終わりそうだから、とりあえずそろそろじいちゃんち行かない?」 「………」  あ。そういえば。  ……なんか今結構な時間、鯉のことで盛り上がってしまった。  逆隣りの希生さんを見上げると、なんだか可笑しそうにオレと玲央を見ている。  ふと、後ろを振り返ると、蒼くんと久先生も、なんだか笑いながら並んでる。……あ、待ってくれてた……? 「行こうか、優月くん。また、ちゃんとしたエサやりの時間に話そう?」 「あ、はい」  頷いて、オレは、隣にしゃがんでる玲央を見つめた。 「おまたせ……ごめんね、なんか、楽しくて」 「ん。全然いーよ」  玲央がクスクス笑いながら立ち上がったので、オレも一緒に立ち上がると。  希生さんが先に歩き出して、久先生たちに並んだ。「行こうか」とオレ達に言うので、返事をして、三人の後ろを、玲央と並んで歩き出す。 「……じーちゃんさ」 「うん?」 「鯉、大好きだからさ」 「うん」 「……多分今の優月の反応で、もう優月のこと大好きだと思う」  前の三人に聞こえないように少し小さく、そんな風に言いながら、玲央はもう本当に可笑しそうに笑ってる。 「……そうなの?」  そんな簡単に大好きになるかな?  首を傾げると。 「……意外にちょろいんだよ、じーちゃん」  玲央はなかなか笑いを止めず。 「ついてすぐに、とか。――――……優月って感じ。ほんと、面白ぇな……」  なんだかめちゃくちゃ優しく見つめられるので、とっても嬉しいのだけれど。でも今、鯉の話聞いただけだからなぁ……ちょろい……?? と、とっても疑問に思いつつ。  広い庭を突っ切って、希生さんのお家に、向かった。  

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