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第771話◇
「優月くんには玲央が、そう見えるんだね」
希生さんが言うのを聞いて、頷きながら、少し考える。
玲央の居ない時に、オレが、玲央について希生さんに話すのって、良くないのかな? とふと、思ったりする。
隠さなくてもいいかなと思ったんだけど、優しすぎるとかそんな、のろけてるみたいなこと、玲央のおじいちゃんに言っていいのかな、そんな風に色々言っちゃうとまずいのかな?と。
希生さんは、オレと玲央のことを、反対はしていないみたいに見える。
玲央と、なんだかんだと言い合っていても、玲央のことを信じてるし、認めてるから、玲央のすることを否定したりはしないんだろうなって、感じがする。
玲央のことを置いて、オレと二人で来たのには何か意味があるのかなと。
じっと、希生さんを見つめていると。
「玲央は、誤解されやすいというかね」
「……?」
「優しい子ではあるんだけど、人に思い切り優しくしたりは、出来ない子な気がしてたんだよ」
「――――……」
「態度も偉そうなとこもあるし、私に似てるんだが、どうも、この顔は冷たくも見える時もあるってのも知ってるしね」
クスクス笑って、希生さんがオレを見つめる。
「優月くんの頭を撫でた時、正直、驚いた」
「……そう、なんですか」
「そうだよ。自然とそんなことをするような感じでは今までは無かったから」
「――――……」
なんとなく、頷いて、オレは希生さんを見つめ返す。
「少し君と二人で話したくて。急に二人きりとか、嫌だよね。ごめんね」
希生さんが苦笑しながらそんな風に言った。
「嫌じゃないです。全然」
即否定すると、希生さんは、くすくす笑った。
「君はほんと、素直だね」
「……そう、ですか?」
よく言われる言葉な気はするけど、まだ会って少しの希生さんに言われると、不思議。あと、大体言われるときは、笑いながら言われることも多いので、今は特にその言葉の意味が、ちょっと気になってしまうけど。
「考えるのと同時に、言葉や顔に出てくるみたいに見える」
「――――……」
確かにそう言われてきたし、自分でもそう思うけど……わー、もうバレてる。苦笑すると、希生さんは、ふ、と笑った。
「普通は、恋人の祖父の屋敷なんかにいきなり連れてこられたら、よく見せようとか色々で、すごく緊張したりしそうだけど」
クスクス笑う希生さん。
「希生さん、一応、オレ、緊張はしてますよ?」
「してるの? 本当に?」
「んと……ちょっとは」
希生さんの聞き方に、ちょっと笑ってしまいながら答えると。
「あ、ちょっと、ね?」
希生さんは可笑しそうに笑って、目の前の絵を見上げた。
「少し前までは、玲央が遊び歩いてたのは、知ってるんだよね?」
「……はい」
頷くと、ふ、とオレをまっすぐに見つめて。
「嫌じゃなかった?」
少し微笑んで、そう聞かれる。
「……えっと……あの」
「ん?」
「……正直に、言っていいですか……?」
そう聞くと、希生さんは、もちろん、と微笑む。
「……会ってすぐの頃から、遊び相手の一人でもいいから、玲央と居たいって、思っちゃってました……」
「――――……」
そう言ったら、希生さんはきょとんとして、オレをまじまじと見つめてくる。
……あれ? 言っちゃダメだったかな???
と、ちょっぴり焦った時。
「あ、そっち?」
「……え?」
「そっちの、正直?」
「そっちって……??」
言われてることの意味が良く分からなくて、オウム返しに聞き返していると、希生さんがクッと笑い出した。
「正直にとか言うから、ほんとはすごく嫌なんですとか、そっちかと思ったんだよ。まあ、そうだろうなと思ったんだけど」
「……あ、そういう……」
なるほど……。
一人納得していると、希生さんが笑いを収めて、オレを見た。
「会ってすぐからって、そんなに、玲央の何が気に入ってくれたのかな」
「――――……ええと……」
何が……何が?
何だろう。何がって、今好きなところは、いくらでもあげられるけど、会ってすぐの時はもう……。
「……なんか全部……? 雰囲気とか……笑った感じとか……」
あんなキスが嫌じゃなかったのも、玲央だったからとしか、言えない。
……いいのかなこの答えで、曖昧過ぎ?? と思いながら、ちょっと首を傾げてしまいながら、そう言ったら、希生さんは、またオレをめちゃくちゃ見つめてくる。
なんかオレさっきから変なことばっかり言ってるかな。
わーん玲央―……。
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