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第772話◇

 ここに居ない玲央に助けを求めても無駄なので、とりあえず、もうちょっと詳しく、話してみることにした。   「希生さん、あの……」 「うん?」 「……オレ、今まで、誰とも付き合ったこと、無くて。玲央に会うまでは、いつか女の子と付き合うのかなあ、って思ってたんですけど」 「うん」 「……玲央に会った時から、玲央のことが好きで。最初は、雰囲気とか……笑った顔、とか。そういうのだけだったかもしれないんですけど」 「ん」  クス、と微笑む希生さんに、とりあえず最後まで言うことにする。 「一緒に居れば居るほど、全部好きなので……」 「ん。……そっか」  可笑しそうに笑いながら、希生さんはオレを見て、頷いた。 「優月くん」 「はい」 「ここね、私にとって大事な部屋なんだ。気に入った作品ばかりでね」 「はい」  そうなんだろうなぁ、と思って、にっこり頷くと。 「連れてきた時点で、もう、君と仲良くしたいなと思ってはいたんだけど」 「――――……」  嬉しい言葉に、ふふ、と笑むと、希生さんは可笑しそうに笑った。 「玲央が、君に落ち着いたのが分かる気がする」 「……そうですか?」 「うん。……眩しいんだろうね」 「……眩しい? ですか?」  その言葉に、んー……と少し考えた後。 「眩しいって言ったら、玲央だと思います。いっつもキラキラしてるので」  そう言ったら、希生さんは、ははっと笑って、「キラキラ?」と聞いてくる。 「キラキラに見えませんか?」 「どうだろうね? 優月くんにはそう見うるの?」 「……はい。いつでもキラキラしてると思います」  ちょっと考えたけど、そうとしか思えない。  なんなら朝一からキラキラしてるもんね。ふふ。すごいよね。 「玲央って、ほんとになんでもできちゃうのかなっていつも思うんですけど……そういうのも全部、色々頑張ってきてるからだって思うんです。バンドも、料理とか、勉強とか……オシャレなのも、ちゃんと気を使ってるからだし。周りを見てるし、優しいし」 「べた褒めだね」  ふ、と笑う希生さん。 「玲央に正月に会った時なんだけどね」 「はい」 「朝は起きてるのかって聞いたんだよ。そしたら、あー起きてるよ? っていう軽い感じで。嘘をついてるというより、起きてないってバレてるけどそれでいいやって返事。こっちも嘘だって分かってるけど、もうそれ以上は何も言わずに終わってね」  笑いながら希生さんが話すのを、頷きながら聞いていると。 「さっきは、全然違ったよね。ああ、ほんとに起きてるのか、と思って、ほんと驚いた」 「……朝のことは、玲央の友達も、驚いてて」  クスクス笑ってしまう。 「玲央を一限で見たから、二度見しちゃったとか、最初言ってました」 「なるほどね」  クッと笑う希生さん。  ふ、と顔をあげて、オレを見つめる。 「そろそろ、別の部屋、行く?」 「あ、はい! ……あとでまた、ここに来てもいいですか?」  もっとゆっくり見たい。  そう思って、聞いたら、希生さんはオレを見て、ふ、と笑って、もちろん、と頷く。  ……こういう感じ。  希生さんを見て玲央が育ったから、似るんだろうか。  それとも、血なのかな?   年も違うし、顔がうりふたつ、という程じゃないのだけど。  それより、笑う感じ、人を見つめる感じ。そういう雰囲気が、一番似てるのかも。  あーでも……希生さんの若い頃も、見てみたいなぁ。  もしかして、ほんとにそっくりだったりして。    やっぱり、お父さんも会ってみたいな。  お父さんには、初めて会うから。  ……もっと緊張だけど。 「玲央が朝起きないのは、中学位から夜更かしするようになってからだからもう結構長かったしね。朝起きて、ちゃんとご飯を作って食べてるとか。それだけでも、ものすごい変化だよ」  そんな風に言ってから、クックッと笑う。 「でもほんと、良い変化だから。優月くんに感謝しないとね」  そんな風に言われて、「でもオレは逆に、ネボスケの玲央は見たことないんですけど」と答えると、「ほんと可笑しい」と笑われる。  

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