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第777話◇

 それから玲央と一緒に、端から見回ることにした。玲央が開けてくれた部屋をちょっとずつ見ながら進んでいく。 「奥からここまでの部屋は全部泊まる人用」と言われて見た部屋は、シャワーやトイレとかがそれぞれついてて、まるでホテルみたいで、これまたびっくり。「色んな友達がいるんだけどさ、あの代って割と時間が空いてる人が多いらしくて、昔からよく人が来てた」と玲央。  色んな友達。  うんうん、なんか分かるー。ほんとに色んな友達、居そう。  それにしても、家の中の、それぞれの部屋にお家があるみたいな……。  世の中には想像もつかない場所があるんだなぁとただただ、びっくり。 「オレ、昔じいちゃんちに泊る時は、じいちゃんと一緒にここのどっかに泊まることが多かった。ベッドが二個あるからさ」 「そうなんだ」  子供の頃の玲央がここのどこかに泊ってたってことかぁ。……楽しそう。  希生さん、絶対玲央のこと、可愛がってたんだろうなあ。学校にまで顔見せてるんだから、もう絶対だよね。  ……あれ、そう考えると、蒼くんも。うちの母さん、蒼くんに学校の行事で遭遇すると、また来てくれたのって、すっごい笑ってたっけ。  そういえば蒼くんのこと、なんてカッコいい子なのーて言ってたな……。  そんなことを考えながら、玲央の後をついていくと、カラオケルームやビリヤードとかダーツができる部屋なんかもあって、なんかもうお店みたいな……。 「あれだね、なんか、このお屋敷がすごく豪華な旅館みたいな感じがする。わくわくするねー」 「今日オレら、今の部屋のどっかに泊まるから。好きなとこでいいよ」 「楽しみ……」 「遊びたいとこあれば、あとで行こ」 「……ビリヤードなんて、やったこと無いよ?」 「じゃあやってみる?」 「んんんー? 玲央は? やったことある?」 「あると思う?」  逆に聞かれて、ん、と考えて。 「分かんないけど、とっても似合うなーとは思う」 「似合う?」 「……すごくカッコよくできちゃいそうな感じ」  そう言うと、玲央はオレを見つめて、クスクス笑う。 「なんかあれだよなーさっき、じいちゃんにも言ってたけど……」 「ん?」 「優月の中のオレって、ほんとなんでもできることになってる?」 「んー。今のとこ、玲央はなんでもできるように見えてるかも……」 「できないことがあったら?」 「?」  どういう意味の質問? と玲央を見つめると。 「幻滅するとかある?」  そんな言葉に、あは、と笑ってしまった。 「するわけないじゃん」  即答したオレを、玲央は楽しそうに笑って、見つめてくる。 「あ、出来なくてもいいのか?」 「そんなの、もちろん」  ふふ、と笑って、玲央を見上げる。 「玲央ができないことがあって、それ、オレができるなら嬉しいなぁ」 「たとえば?」 「え、たとえば…………えーと……」 「ん」  そんな楽しそうにみられても、えーと、例えば……。 「たとえば蜘蛛とか嫌いで」 「ん??」 「……虫嫌いとかで倒せないとかなら、オレが倒してあげたり?」 「……ぷ。何だそれ。優月倒せるの?」 「ううん、倒せないけど。例えばの話が思いつかなかっただけ」 「倒せないのか」 「……うん、つぶすのとか、無理……」 「ああ……」  無理そう、とか笑われて、その後、何の話だっけ、と玲央が笑う。 「玲央ができないことで、オレができること……あったら嬉しいなーって話」  そう言うと、玲央はクスクス笑いながら、オレをすぽ、と抱き締めた。 「……ほんとにさぁ……」 「……?? 玲央?」  すり、と頬に髪を撫でられて。 「……和む」 「え。そうなの?」  笑いながら言われた言葉に、オレもクスクス笑っていると。 「オレをこんなに和ませるの、優月にしかできないよ」 「…………それって、すごい?」 「ん。すごい」  頷きながら、額にキスしてる玲央に、そっか、と頷きながら、嬉しくて微笑む。 (2023/12/3) あっふじょさん、777ページだ♡ 読者さまたちも↓こんな顔で和んでくれたらいいなあ…と思いつつ。 ( ´∀` ) 

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