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第799話◇
「あ、でも」
「ん?」
「玲央はそんなしょっぱなで殺される役なんて似合わない」
「ん。そう?」
「絶対そう。玲央は出るなら主役だから、最後まで居ると思うよ」
ふふ、と笑ってそう言うと、同意なのかな、皆とくに何も言わずにただ笑ってる。
「……ていうか、なんの話してたんだっけ?」
あれ? と分からなくなって玲央を見ると、玲央も、さあ? と笑ってから。
「あぁ、優月が、遺言発表しそうとか言ったからだ」
「あ、そっか。なんかそういうシーンで見るお家って感じで」
クスクス笑い合ってると、希生さんもコーヒーの準備を続けながら笑う。
「出される飲み物に毒とか入ってないとダメかな」
「あ、そうですねっ」
乗ってくれるの楽しい、なんて思いながら、ふふ、と笑って、希生さんの側に近づく。
「でも、希生さんしか淹れてないと、すぐ犯人てバレちゃいますね」
「じゃあ優月くん手伝う? 運ぶのは玲央が運ぶか。そしたら犯人候補が増えるね」
「そうですね」
うんうん頷いてると、玲央がクスクス笑って、オレの隣に並んだ。
「じーちゃん、ミステリーマニアだから、永遠にこの話続くよ」
「あ、そうなんですか?」
希生さんにそう聞くと、玲央が、「あとでまた書斎の本棚、見てみな、すごいから」と笑う。
「オレも好きです。結構読みますよ」
オレがそう言うと、希生さんがふ、と微笑んでオレを見つめた。
「好みあうかな? あとで一緒に見にいく?」
「はい。ぜひぜひ」
わーい、楽しみ。なんか色々楽しみで楽しい。
「玲央が、ビリヤードやってるとこも見たいんです。楽しみなこといっぱいで」
そう言うと、玲央が隣で「あ、やっぱり見たいの?」と笑う。
「うん、見たい」
「やりたい、はない?」
「……できるかなぁ??」
「まあ、なんとなくはできると思うよ」
玲央がクスクス笑いながら、じゃあ後でそっちも行こうなと言ってくれる。ふと、玲央が蒼くんに視線を向けた。
「蒼さん、なんか、得意そうな気がしますけど」
「ん? ああ、ビリヤード?」
そーだなーと少し考えてから、蒼くんはちょっと首を傾げた。
「一時期はまってたけど、しばらくやってないからどうだろうな」
「はまってたなら、蒼くん出来そう……」
大体この人は、なんでも軽くできちゃうのだ……。
得意じゃない、とか言って、得意な人よりさらりと。蒼くんはそんなイメージ。なんでも軽くできちゃうから、こんなにのらりくらりな感じの人なのかなあとも思うけど。絵や写真をやってる時の蒼くんは、すごく真剣で、あれはカッコいいと思うけど。
「あとで蒼さんも行きます?」
玲央が聞くと、蒼くんも、いいよ、と答えた。
「勝負する?」
「どうだろ。勝てるかなー蒼さん。強そうですよね」
「でももう何年もやってないからなーとりあえず練習するか」
「オレもそうですね。練習しましょう」
「じゃあオレも練習だけしたい」
そう言ったら、二人が、ん? と見てくる。
「優月も勝負だろ」
「そーだよ、逃げんな」
玲央と蒼くんに言われて、ええ、と引き気味になってしまう。
一番勝負したくない人達な気がするのですが……。言えずに、引いてると、久先生が「頑張れ、優月」と言ってクスクス笑う。
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