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第807話◇

「痛くないか?」 「ううん。伸ばされて気持ちいい」 「ん」  玲央は穏やかに笑って、オレの手を優しく伸ばす。 「お前らはほんと隙あればいちゃつく」  可笑しそうに笑いながらそう言う蒼くん。 「今はほんとに伸ばしてるだけですよ」  玲央が苦笑しながら言うと、「それでもな?」と蒼くんが笑う。 「まあ、仲良さそうだからいいけど」  言いながら、台でボールを並べてる蒼くんに、ふ、と笑う玲央。そのまま、ぐりぐり手をもまれる。  オレの手を見てるから、少し伏し目がち。目の前の、綺麗な目元に見惚れていると、不意に視線が上を向いて、ばっちり目が遭った。 「はい。終わり」  クスクス笑いながら、ストレッチされた手が離される。 「ありがと、玲央」  見惚れていたの、バレたかなと、ちょっと照れながら。  なんとなく自分でも手をもみもみしていると、玲央にビリヤードの棒を渡された。 「キューの持ち方は……」 「うん」 「右利きだから、右利きで端を握って……で、手の平で支える」 「うん」  玲央のやってるのを真似しながら。それから、キューの前の方を支えて、指で安定させる……って難しい。  これでボールを打つのかー。手の感覚が……。 「どう?」 「ん……ストレッチしてもらって良かった!」  そう言ったら玲央は、クッと笑って、そうだろ、と言う。後ろで蒼くんも笑ってる。 「緊張してたり、変な姿勢で打つと、指つるかも」 「ん!」  そのまましばらく打ち方を教えてもらうのだけれど、ポケットというらしい穴になかなか入らない。これで、狙ったボールを入れてくの? 頑張ってみるけど、厳しいのでは……? と、うーんと悩んでいると。 「玲央、ちょっとオレと勝負する?」  蒼くんが玲央に言った。答える前に玲央がオレを見る。  オレは、こくこく頷いた。 「いいよ、オレこっちの台で練習してる。あと、二人の打ち方も見てるから」 「ん。分かった」  ふ、と笑んで、お願いします、と玲央が蒼くんに言う。  お願いします、とか言ってるけど、ちょっと、勝負を仕掛けるみたいに薄く笑った玲央が。……なんかカッコいい。  最初は、言った通り、一人でボールを打つ練習をしていたのだけれど。なんか、途中から見入ってしまって、少し離れた壁際の椅子に腰かけた。  なんか、二人、すごく真剣。  ――――オレのうつボールと、なんか、そもそも音が違う。  キューがボールに当たる音とか、ボールとボールがぶつかる音。  かこん! ……ていうか?  なんかすごく、音がしっかりしてる。  オレが打っても、あんな音はしないなぁ。  ルールが良く分かんないけど、とにかく、ボールを打って、当てて、あの穴に落とす。……て感じなんだろうなと。  ……にしても。  すっごくすっごく、カッコいいぞ、二人とも。  プロの人みたい。  なんだろう、この二人はきっと、何をやっても様になるんだろうなぁ。    ボールが穴に落ちる音すら、なんかカッコいい。ってなんだろう。オレ、何年修行したら、あんな感じになれるかな?? と、まじめに考えてしまう。  しばらく見ていたんだけど、ふたりほんとに真剣勝負になっちゃってて、オレに気づかない。というか、気付いてるけど、まあオレもまじめに見てるし、それでいいと思ってるのかな。  ちょっと希生さんたちの所に行ってみようかな。  二人はお酒中かな。  そーーっと、キューを置いて、そーっとドアを開けた。  最後閉める前に、二人がこっちを見たら、一声かけようと思ったけど、全然見ない。あ、あれはもう、勝負に真剣すぎちゃってて、オレに気づいてないな。  ふふ、なんかあの二人、似てるー。  結構飄々としてるとこあるのに、負けず嫌いなとこ、ある感じ。  ドアを閉めて、静かな広い廊下を一人歩く。  さっきまで居たお手伝いさんたちは、帰ったのかな。静か。  玲央が隣に居てくれるから、ずっと、楽しいなと思ってたけど。  やっぱりちょっと、広すぎて、豪華すぎて、少しは引いてしまうところもある。  いくら玲央が、オレでいいよって言ってくれてても。  こんな大きなお家……しかもここ、希生さんだけのお家でしょ。玲央が住んでたお家はどんだけ大きいのかなとか。  そこに住んでる、お父さんとお母さん。  こんな庶民……庶民だよね、オレ。庶民って言葉でいいのかな。初めて自分に対して使ったかも。  ごくごく普通のオレと。許してもらえるかなあ。  しかもオレが女の子ならまだしも、男だしなー。  玲央の子供とか産んであげられないし。  ……玲央、一人っ子だから、お家の後継ぎとか。いいのかなあ?とか。  いくら玲央が、良いって言ってくれてても。  まあ、これだけ広いお家を見ちゃうと、やっぱり、少しは思う。  ――――……。  希生さんたちが居る部屋の前で、立ち止まる。  んー、と少し考えてから。  ……でもやっぱり。  一度きりの人生で。  こんなに好きになれた人が。  せっかく好きになってくれて。  居られる限り、一緒に居れたらいいなと。  それを優先したい。  反対する人は居るかも。  まあ男女だってね、反対する人はいるだろうし。  お金持ちかそうでないかとか。育った環境が違うとか。  ……色々違うとこはあるけど。  今、側に居る玲央が好きで、玲央もそう言ってくれるなら。  ――――……側にいられるよう。最大限の努力をしよ。  玲央と会ってから、まだそんなに時間は経ってない。でも。逆に言うと。  他の人は、何年も何年も居ても、こういう意味で、  こんな風に、好きになれてなかった。  って思うと。  やっぱりすごいことなんだ、と。思う。  ん。   がんばろ。  ふ、と自分が自然と微笑むのが分かった。  ドアにそっと手をかけて開くと、テーブルに向かい合ってる、希生さんと久先生がこっちを見て、微笑んだ。 「二人は?」 「もう、真剣勝負中です」  言うと、二人は、クスクス笑って、こっちに座る?と言ってくれた。 (2024/3/4) ちょっぴり…気持ちを。 あとで消します。……と思ったんですが、コメントや色々下さったので、残しちゃいます…( ノД`)感謝…♡3/7 ◇ ◇ ◇ ◇ なんだかBLの子たちが書けなくて悶えてたので、やっと書けてほっ……。 さっそくよんでくださってありがとうございます。 こんなページまで読んで、お付き合いくださってる皆さま方にだけ。ちょっとお願い。 なんか色々お疲れ気味(´・ω・`) いいねや感想や…スタンプとかもうなんでも、何かしらリアクション頂けたら嬉しいし、頑張るもとになるので♡ よく、好きです、とかの一言でも嬉しいと書きますがほんとです♡ 別に今日のこの話について、すぐ、とかじゃなくて、この先書けて更新できた子たちとか、どの子でもいいし、ふと、時間があったら、とかでもいいので。 その話の好きなとことか、聞かせて頂けたら、元気でます…(*´ェ`*)♡ 匿名メッセのマシュマロとかでも。 私はリアクションが嬉しいから投稿を続けて居られてます。自己完結するならPCの中だけで投稿なんてしてないと思うので…。 もちろん気が向いたらで…とりあえずがんばります(・ω・)ノ゙デハデハ♪

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