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第809◇

「何から判断するとか、言える?」  希生さんが興味深そうに聞いてくる。んーそうですね、と盤上の駒を追う。 「おじいちゃんに習ったのは……王が安全かとか、攻撃できる駒がどこにどれだけあるか、とか……飛車とか角の位置とか、次に取られそうな駒が何か、とか色々言われてたんですけど……」  しばらく眺めて、つい、クスクス笑ってしまった。 「いい勝負ってことしか、分かんないです。オレ、そんなに何手も先まで読める訳じゃないので」  そう言うと、希生さんと久先生は、何だかとっても楽しそう。 「これが終わったら、優月、やる?」と久先生に言われる。 「私もやってみたいなぁ」と希生さん。 「えっと……」  うーん、と考えてから。 「おじいちゃんみたいに手加減してもらえたら」  クスクス笑いながらそう言ってみると、二人とも、いいよーと笑う。  ……なんかほんとにおじいちゃんみたいだな。  勝負を再開した二人。動いていく駒を見ながら、そんなことを思う。  懐かしいなあ、ほんとに。将棋を打つ音も。  ――ふと、オレ、何しにきてたんだっけ。  と思ってしまうほどだけど。  ……なんとなく。  お互いが、どんな人なのかは、知り合えたような気がするから。  これで、いいのかなと、思う。  玲央とのことをちゃんと許してもらうとかより、それが一番先だよね……。  見守ってくれそうな雰囲気は、すごく感じるし。  なんか、蒼くんと玲央も仲良しになりそうだし。  あ、それは結構前からかぁ。蒼くんは、玲央に優しかったな、最初から。  年違うけど、なんかいい友達……になりそうな……? 友達ではないかな? 「あ。たんま」 「たんまはなし」  希生さんの言葉に、久先生がクスクス笑う。 「あー失敗だな、今の」 「だろうね」  二人のやりとりにクスクス笑っていると、希生さんがオレを見つめた。 「優月くん、ちょっとこっちおいで」 「?? はい」  立ち上がって、希生さんの隣に座って、はい、と希生さんを見ると。  「一緒に考えよ」とオレに言った希生さんに、久先生が、ぷ、と笑い出した。 「希生……」 「ここから立て直すの大変だから。ちょっと相談してみたいし」  呆れて笑ってる久先生は、もう好きにしな、とすぐ口にした。  よしよし、と笑って、希生さんがオレを見る。 「優月くんならどこに置く?」 「えーと……」 「あ、久に聞こえないようにね」  そんな希生さんの言葉に久先生はますます可笑しそう。  それからわいわい言いながら、結局三人で相談しあうという変な将棋をしながら、楽しい時を過ごしていると、不意にドアが開いた。 「あ、居た」  部屋を覗いた玲央が笑いながら、蒼くんと一緒に入ってくる。 「気づいたら居ないし」  蒼くんの言葉に、オレは苦笑い。 「一応、気付いたら声かけようと思ったんだけど、ドア開けても二人とも気づかなかったよ?」 「悪い。マジで全然気づかなかった」  テーブルの近くに来た玲央が、困ったように苦笑い。 「そう、こいつ、突然、あれ、優月は?って、探し出すの」  蒼くんはクッと笑い出す。 「いや、出て行ったんだろ、て答えたんだけど……マジでキョロキョロ探してるからおかしくて」  ケタケタ笑ってる蒼くんに、玲央はとっても嫌そうな顔をしている。 「とか言って、蒼くんだって、全然気づかなかったし」  オレが言うと、希生さんが「負けず嫌いだからなーどっちも。夢中になりすぎだろ」と笑う。すると、久先生が、「希生もだろ」と苦笑して、「優月を仲間に引き込んだりしてなー?」とおかしそう。  とかいう久先生も、優月こっちもおいでーとか言ってたし。  ここにいる全員、負けず嫌いなのでは。  と、一人思って、ふ、と楽しい。       (2024/3/8) 3周年。の後書き♡ 3年前の3/8にこのお話をエブリスタで書き始めました。 書きだした当初はもうちょっと玲央が、想いを認めるまで時間がかかる予定だったんですけど(笑) あれあれどんどん甘々に…。 丸3年も続けることになるなんて、思いませんでした。 エブリスタに投稿したのは、Fairytaleとかが先だったかなと思うんですけど……全然毎日とかじゃなくて、数か月に何回か、みたいな……。 恋なんかじゃないを投稿してから、 毎日毎日、書くようになりました(´∀`*) 書けば書くほど、他の話も書きたくなって、並行して書くように。 ちょっと今広げすぎかなと思ってますが💦少しずつ完結させていきますので。 まあ、3年間。いろんなことがありました。 それまでに経験したことのない類の、いやだなーて事もたまにはあったし。 でも。 それまでに体験したことない類の、嬉しいなってことが、 たくさんたくさんたくさん、ありました(*´ω`*) 恋なんかじゃないは、今エブリ・アルファ・フジョ・ムーン(最近再開)にアップしてますが。全部で17000ブクマ位かな。そんなにたくさんブクマしてもらえるとは思わなかったし。今も不思議ですが。 玲央と優月とゆかい?な仲間たちを可愛がってくださってありがとうございます。 4年めも ぼちぼち続けていくので。 よかったら引き続きお付き合いくださいませ。ではでは♡

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