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第811話◇
玲央と廊下に出て、二人になると、玲央がクスクス笑う。
「優月にちゃんとお風呂の場所教えてないだろ。一人で行くとか」
「そうだけどー」
「だけど?」
玲央が楽しそうに笑って、オレを見つめる。
「玲央と蒼くんが恥ずかしいんだもん」
むむ、と眉を寄せて見上げると。
「何で?」
と聞かれる。
「お風呂でのぼせるようなことするみたいな……」
「何でそれが恥ずかしいの?」
「え」
「ん?」
じー、と見つめられて、玲央が真顔なので、ふ、と首を傾げてしまう。
「普通にのぼせないようにって言っただけだろ?」
「……ん。まあ……??」
「何? 優月は何考えたんだ?」
「――――……何も考えて、なぃ……」
だんだん小さくなるオレの声。
……あれ?? 変な意味なのかなと思ったんだけど、違った??
てことはオレってば、普通のセリフに勝手に恥ずかしくなったとか?
「……えっと……」
……わーん、すっごい恥ずかしい……。
オレは玲央から視線を外して、俯いてテクテクひたすら歩いてると。
横で、玲央がふっと笑う気配。
「……?」
おそるおそる玲央を見ると。玲央ときたら、向こうを向いて、何だか震えてる。ピン。と来て。
「……もー!」
「ごめんごめん」
あは、と笑って、玲央がオレを見つめる。
「あってる。蒼さんもそういう意味で言ってたんだろうし、オレもそういう意味で答えたから」
クスクス笑いながら、玲央はオレの頭をよしよしする。
「もう、玲央……」
ものすごく、恥ずかしかったせいで、何だか文句すら咄嗟に出てこないし。
「真っ赤だし。……可愛い」
肩掴まれて、くい、と引かれて、ちゅ、と頬にキスされる。
「ごめん。可愛すぎて」
クスクス笑いながら、玲央がオレの手を引く。
「お風呂こっち」
玲央に連れられて、あるドアを入ると。
……個人宅のお風呂というよりやっぱり、旅館みたいな。
中のバスルームへの扉を開けると、めちゃくちゃ湯船おっきい……。
「これ、玲央一緒に入れるよ?」
「入れるけど……絶対触るから、やめとく」
「――――……」
またしても咄嗟には返せない。
「あれ。優月、下着とかは?」
そう言われて、何も持たずにここに来たことに気づく。
「あ。忘れた。ていうか、お風呂グッズ何も持ってきてない。何しにきたんだろ……」
部屋から逃げてきたからなあ、と苦笑いしながら。
「取りに戻らないと」
「いいよ。取ってきてやる……と思ったけど……」
玲央が、脱衣所に置いてあったかごを見て、「これ着ていいみたいだな。下着も新しそう」と言う。
「まあ、一応聞いてくる」
「うん。ありがと」
「行ってくる――――……あ。忘れてた」
「ん?」
離れかけた玲央が、戻ってきたと思ったら。
ぐい、と手を引かれて、ちゅ、と唇が重なる。
「……ん、ん……っ」
舌が口の中に入ってきて、絡んでくる。
「ん……ふ」
玲央の腕の中にとらわれるみたいな感じでしばらくキスされて、ゆっくりと離れる。は、と息をつきながら、玲央を見上げると。
「二人になったらキスしないと」
「……」
くす、と優しく笑う玲央に、きゅ、と、胸が弾む。
「入ってな」
「うん」
よしよし、と撫でると、玲央はドアを開けて出て行った。
撫でられた頭に何となく触れてしまう。
「……はー。もう……」
ほんと、強烈、だなぁ……。
なんか。熱い、口。
息も、熱い。
なんかさ……もっとしてほしく、なっちゃうんだよう……。
玲央はキスして、けろっとしてオレから離れるけど。
……なんか、今日何回か、キスされて。
はー。
……オレの方が、そういうこと、して欲しくなっちゃってるみたいで。
なんか、困ってしまう。
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