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第822話◇
「こうして話してて」
「ん?」
「三年後も絶対続いてると思ってる玲央が、不思議だ」
「……ん??」
「未来のことなんか分からないって、平気で言いそうだったのにな、お前」
「――――……」
「三年後、既成事実が出来てると思って、話してるよな」
「……まあ。そう、だね。そう思って、話してた」
「それ自体、すごい変化だろ。考え方も、大分変ったよな」
そう言いながら、ニヤ、と笑うじいちゃんを見て、なるほど、なんて、納得してしまった。
確かに、優月と会う前のオレは。三年も先の未来なんて、不確か過ぎて、友人関係ならまだしも、誰かとのそういう関係が続くなんて。
……思ったこと無かったかも。
「……別れる未来とか、考えてなかったかも」
ぼそ、と呟くと。じいちゃんは、ものすごいニヤニヤしてから。
「優月くんもそうだといいな?」
「……そうだと思う」
「自意識過剰じゃないといいけどな」
「ない。少なくとも今は、絶対ないし。……別れたいとか思わせないように頑張るし」
「……あれだな、玲央」
「?」
「今日何度も思ったんだけど」
「何を?」
「中身、誰かと入れ替わったか?」
「――――……」
つか、稔とかとおんなじこと言ってるぞ、じーちゃん。
いいのか、それで。
言いたかったけれど、飲み込んだ。
倍くらい、色々返ってきそうだから。
「なんかあれだな……」
「ん?」
「……正直、じいちゃんが、言うようなことじゃないと思うけど、一応言って良いか」
「珍しい。言って良いかとか聞くなんて。何?」
少し怖いけど。と思いながら言葉を待っていると。
「……優月くん、泣かせるなよ」
「――――……」
「ああいう子、泣かせるようなことは、するなよ」
「――――……」
「……後悔するのは、お前だと思うから、言っといた」
そう言ってから、じいちゃんは、ぷは、と吹き出した。
「何言ってんだ、オレ」
クックッと笑ってるじいちゃんに、オレは、大げさに、ふー、と息をついた。
「もうそれ、何人に言われてんだかって感じが。言われてなくても、全員思ってんじゃねーかなって、気がしてきた」
ふ、と笑みが浮かんでしまう。
「まさかじーちゃんにまで言われるとは。ていうか、じいちゃん、優月のじいちゃんでもないじゃん」
「……まあそうだな、玲央が絶対後悔するだろうから、やめとけよっていう……まあ、あれだな、アドバイスというか、忠告だな」
「なんだよそれ」
笑いながら言うじいちゃんに、オレも、つられて笑いながら。
「泣かせたくないの、オレが一番だっつの……」
「――――……まあ、そうか」
「喜んでもよく泣くからな、優月。それはいいけど……悲しくて泣かせるようなこと、オレ、デキないと思う。したら、ほんとに、後悔すると思うから。大丈夫。……言われなくても分かってるし。……つか、じーちゃんにまで言われるとか。もうマジで、笑う……」
オレとじいちゃんが笑ってると、それに気づいた優月が振り返って、先生と顔を見合わせてから、二人でこっちに向かって歩いてくる。
「何か楽しいことあったの?」
ワクワクした感じでオレを見上げる優月に、まあな、と頷いて、ぽんぽん、と頭をなでる。
「優月が一番好きな絵、教えて」
「え。一番?」
急に変えた話題に、でも嬉しそうに笑ってオレを見つめてくる。
「さっきこれかなって思ってたけど他のも良く見えてきて、えーと一番……トップスリーでいい?? 三位まで」
嬉しそうに言う優月に、いいよ、と笑う。
「それ見たら帰るから」
オレがそう言うと、じいちゃんと先生は二人笑って頷いて、部屋を出て行った。
(2024/4/13)
次、蒼くんの予定です💖
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